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文献概要
特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい 【実際編+誌上メンタリング】
—シーン❻“緩和ケア”で遭遇する患者/家族の不安—「私、まだ麻薬を使うには早いと思うの。あれは、最後に使う薬なんでしょ?」「おまえら、いったいどういう治療をしているんだ!」
著者: 新城拓也1
所属機関: 1しんじょう医院
ページ範囲:P.1221 - P.1224
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ホスピスに入院した女性患者とその家族
患者:Oさん。60代後半、女性。1人暮らし。
家族:兄1人のみ。
現病歴:進行した大腸がんのため、ホスピスに入院中。癌性疼痛あり。
Oさんは、聡明な患者だ。1人暮らしで、自宅では過ごせなくなり、私が勤めるホスピスに入院して暮らしていた。初めての診察から、2カ月が経とうとしていた。毎日のように30分近く話し込む診察は、Oさんの人柄もあって、私には1日の楽しみになっていた。毎朝、挨拶と状態確認のために診察し、1日の終わり、夕方にもう一度じっくり話をするために病室へ足を運んでいた。
最近は腹痛があり、医療用麻薬の服用を勧めていたが、Oさんは「これはいつものことなのよ、大丈夫。しばらくすれば自然と消えていくのよ。先生、少しだけ待って……」と治療を拒んでいた。「私、まだ麻薬を使うには早いと思うの。あれは最後に使う薬なんでしょ。今使ってしまっては、将来本当に苦しくなった時に困るじゃないの。それが不安なの」と。
ホスピスに入院した女性患者とその家族
患者:Oさん。60代後半、女性。1人暮らし。
家族:兄1人のみ。
現病歴:進行した大腸がんのため、ホスピスに入院中。癌性疼痛あり。
Oさんは、聡明な患者だ。1人暮らしで、自宅では過ごせなくなり、私が勤めるホスピスに入院して暮らしていた。初めての診察から、2カ月が経とうとしていた。毎日のように30分近く話し込む診察は、Oさんの人柄もあって、私には1日の楽しみになっていた。毎朝、挨拶と状態確認のために診察し、1日の終わり、夕方にもう一度じっくり話をするために病室へ足を運んでいた。
最近は腹痛があり、医療用麻薬の服用を勧めていたが、Oさんは「これはいつものことなのよ、大丈夫。しばらくすれば自然と消えていくのよ。先生、少しだけ待って……」と治療を拒んでいた。「私、まだ麻薬を使うには早いと思うの。あれは最後に使う薬なんでしょ。今使ってしまっては、将来本当に苦しくなった時に困るじゃないの。それが不安なの」と。
参考文献
1)Reid CM, et al : Opioid analgesics for cancer pain ; symptom control for the living or comfort for the dying? A qualitative study to investigate the factors influencing the decision to accept morphine for pain caused by cancer. Ann Oncol 19(1): 44-48, 2008. PMID 18073222 〈オピオイドの投与を拒否する患者の質的研究〉
2)正岡子規:病牀苦語.ホトトギス 第5巻第7号 1902(明治35). 〈脊椎カリエスに罹病し痛みに耐えながら、寝たきりとなってからの作品〉
3)Molloy DW, et al : Decision making in the incompetent elderly ; “The Daughter from California syndrome”. J Am Geriatr Soc 39(4): 396-399, 1991. PMID 2010590 〈意思決定に関する患者と家族の間の葛藤をテーマとするケースレポート〉
4)Dionne-Odom JN, et al : Benefits of Early Versus Delayed Palliative Care to Informal Family Caregivers of Patients With Advanced Cancer ; Outcomes From the ENABLE III Randomized Controlled Trial. J Clin Oncol 33(13): 1446-1452, 2015. PMID 25800762 〈緩和ケアを提供すると、家族(caregiver)のうつスコアが軽減されるというランダム化比較試験〉
5)Back AL, et al : Dealing with conflict in caring for the seriously ill ; “it was just out of the question”. JAMA 293(11): 1374-1381, 2005. PMID 15769971 〈終末期の患者・家族・医療者に起こる葛藤についてのレビュー〉
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