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特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい 【医師の不安への処方箋】
自分の“内なる声”を聴く—不安を受け止め、味わい、そして手放すために
著者: 宮崎仁1
所属機関: 1宮崎医院
ページ範囲:P.1226 - P.1229
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ありふれた「かぜ診療」でも不安と恐れから逃れられない医師
ここは街場の診療所である。5日前に咳と発熱のために受診した患者が、本日再診となった。患者は「すぐによくなる薬を出してくれと頼んだのに、ぜんぜん効かない。会社は絶対に休めないので、早く治してほしい」と、院長である医師(55歳・男性、卒後30年目の内科医)に訴えた。医師の頭の中では、「患者を怒らせてしまった」「温厚そうに見えたが、怒るとヤクザみたいな感じで迫ってきて怖いな」「本当はかぜではなく、重大な病気が隠れているのを見逃しているのかも」「かぜには抗菌薬は不要だけど、心配だから強力なキノロンを処方しておくか」「でも不要な抗菌薬のために、ひどい副作用が発生したら訴訟で負けるぞ」「解熱薬や鎮咳薬をてんこ盛りにして、症状を消してしまえば、文句はないだろう」といった、さまざまな思いが去来している。
ありふれた「かぜ診療」でも不安と恐れから逃れられない医師
ここは街場の診療所である。5日前に咳と発熱のために受診した患者が、本日再診となった。患者は「すぐによくなる薬を出してくれと頼んだのに、ぜんぜん効かない。会社は絶対に休めないので、早く治してほしい」と、院長である医師(55歳・男性、卒後30年目の内科医)に訴えた。医師の頭の中では、「患者を怒らせてしまった」「温厚そうに見えたが、怒るとヤクザみたいな感じで迫ってきて怖いな」「本当はかぜではなく、重大な病気が隠れているのを見逃しているのかも」「かぜには抗菌薬は不要だけど、心配だから強力なキノロンを処方しておくか」「でも不要な抗菌薬のために、ひどい副作用が発生したら訴訟で負けるぞ」「解熱薬や鎮咳薬をてんこ盛りにして、症状を消してしまえば、文句はないだろう」といった、さまざまな思いが去来している。
参考文献
1)伊藤絵美:ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法BOOK1〜2. 医学書院,2016. 〈認知行動療法の基本からマインドフルネスとスキーマ療法まで、生きづらさに悩む看護師マミコさんとともに体験的に学べる。p.1255〉
2)伊藤絵美:自分でできるスキーマ療法Book1〜2. 星和書店,2015. 〈マインドフルネスとスキーマ療法を自習できるワークブック〉
3)池田正行:医者を辞めずに済む方法─医者やめたい病のあなたのための認知行動療法. https://square.umin.ac.jp/massie-tmd/yametaichiryo.html(2017年8月8日現在) 〈医師が抱える“認知の歪み”の諸相について真摯に省察した稀有なエッセイ〉
4)宮崎仁:感情とプロフェッショナリズム─医者がムカついてはダメですか? 宮崎仁,他(編):白衣のポケットの中─医師のプロフェッショナリズムを考える.pp164-173, 医学書院,2009. 〈「感情労働」としての医業をプロフェッショナリズムの観点から読み解く論考〉
5)水島広子:トラウマの現実に向き合う─ジャッジメントを手放すということ.岩崎学術出版社,2010. 〈否定的なジャッジメントは,患者と治療者双方に大きな影響を及ぼすことを指摘〉
6)伊藤絵美:やってみよう! マインドフルネスワーク.訪問看護と介護 22(3): 192-193, 2017.
7)水島広子:怖れを手放す─アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ.星和書店,2008. 〈安らぐための“心の姿勢”を選択するワークショップのライブ記録〉
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