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雑誌目次

雑誌文献

総合診療28巻2号

2018年02月発行

雑誌目次

特集 頭痛患者で頭が痛いんです!

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題

ページ範囲:P.239 - P.242

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【総論】

頭痛患者へのアプローチ

著者: 高岸勝繁

ページ範囲:P.180 - P.184

 頭痛診療で重要な点は、まず二次性頭痛を見落とさないようにすることです。そのためには以下の4ステップで、頭痛を評価することが有用です。新規発症の頭痛ではもちろんのこと、もともと頭痛がある患者でも、普段と異なる頭痛を認めた場合は、つねにこのアプローチで診療する習慣をつけましょう。

【二大頭痛を深めよう】

これが片頭痛だ! これも片頭痛か?

著者: 成瀬玉惠 ,   立岡良久

ページ範囲:P.185 - P.188

Case
患者:26歳、女性。
既往歴:子どもの頃に時々下痢や腹痛あり。乗り物酔あり。
家族歴:母親と妹に頭痛発作あり。
現病歴:中学生の頃より繰り返し頭痛発作を自覚するようになり、市販の頭痛薬を服用していた。ひどいと動けなくなり、会社を休んだり早退することもある。発作は月に4〜5回あり、月経時や仕事の忙しい時期に頻発。週末など朝寝坊をした時に頭痛が起こることもあった。ひどい頭痛発作時にはテレビの音なども苦痛に感じるため、静かな暗い部屋で横になっていた。
 今回、午後の会議に出席している途中より頭痛が始まり、悪心を伴ってきた。途中で退席して休んでいたが、吐いてしまい早退した。会社の産業医より紹介され、当院を受診した。
受診時の状態:頭痛の自覚はなく、意識清明で神経学的検査でも異常を認めなかった。念のため施行した頭部単純CTでも異常を認めなかった。動作で増悪する頭痛であり、悪心・嘔吐や光音過敏を伴っているので、片頭痛と診断。
臨床経過:治療として頭痛発作時にリザトリプタン錠®を頓用、予防薬の塩酸ロメリジンを朝夕1錠服用。1カ月後の再受診時までに3回の頭痛があり、それぞれリザトリプタン錠®服薬後30分程度で頭痛は改善した。患者は仕事を休むこともなかった。

片頭痛はこうやって治療しろ!

著者: 長野広之

ページ範囲:P.190 - P.194

Case
片頭痛が仕事に多大な影響を及ぼしていた女性の1例
患者:35歳、女性。
現病歴:頭痛を主訴に来院した。2年前から週に1〜2回拍動性の右側頭部の痛みを感じており、以前は「片頭痛」と診断されている。痛みは嘔気・嘔吐を伴い、半日程度続く。市販の痛み止めで対応していたが、最近はなかなか痛みが取れず、音や光過敏もあるため、仕事を休んで暗い部屋で横になっていないとならないこともある。

緊張型頭痛を解きほぐす

著者: 今井昇

ページ範囲:P.195 - P.199

Case
職場が変わってから頭痛が悪化した1例
患者:28歳、女性。
家族歴:特記すべきものなし。
既往歴:特記すべきものなし。
現病歴:22歳に仕事をはじめてから、夕方に頭が痛くなることが月数回起こるようになった。痛みは強くなく翌朝には良くなっていたので、頭痛薬を服薬することなく様子を見ていた。本年4月に職場が異動し、残業が多くなった。毎日のように夕方になると頭が痛くなり、仕事に集中できないこともあるため、6月に近医を受診したところ、ストレスからくる頭痛と言われ、鎮痛薬を処方された。薬を服用すると頭痛は一時的に改善するが、翌日になるとまた頭痛が起こるため、数回服薬した後はほとんど飲まずに我慢した。9月に、普段より頭痛を訴えていた職場の上司がくも膜下出血で倒れ、その後から起床時より頭痛が起こるようになった。同僚の勧めで近医を受診したところ、頭部CT検査が行われ、「異常なし」と言われた。しかし頭痛が改善しないため、10月に精査を希望して来院。

【知っておくべき頭痛たち】

泣いてしまう頭痛

著者: 土肥栄祐

ページ範囲:P.201 - P.206

Case
患者:38歳、男性。
現病歴:大きな仕事が終了した直後であった。日中に右眼の奥に火箸を突っ込まれるような非常に強い痛みが出現したため、近医を受診。これまでと同様の頭痛発作であり、酸素投与およびスマトリプタンの皮下注射にて改善した。群発頭痛の再発として処方を受けたが、翌日の1時間続く頭痛発作に頓挫薬の効果がなく、受診した近医が休診日であったため、当院救急外来を受診された。
既往歴:5年前に左眼の奥に火箸を突っ込まれるような頭痛発作が出現し、いても立ってもいられない状態が毎晩90分続くため、救急外来を受診。頭部CTおよび、その後の頭部MRIを含む精査も異常なし。流涙はなく、鼻閉を少し認める程度であった。2週間で頭痛は徐々に改善し、その後は頭痛を全く認めなかった。3年前に同様の発作が生じ、この際頭痛と同側に、流涙・鼻汁・眼瞼下垂を伴い、群発頭痛と診断された。内服加療にて3週間で徐々に改善した。

これでもう怖くない雷鳴頭痛

著者: 竹内俊輔 ,   林寛之

ページ範囲:P.208 - P.213

Case
片頭痛と思われたが、問診(雷鳴頭痛)より、くも膜下出血の診断に至った1例
患者:55歳、女性。
既往歴:片頭痛。
現病歴:19歳時より片頭痛があり、アセトアミノフェンとトリプタン製剤で改善していた。本日調理中に頭痛が出現し、外来受診した。過去3年間に同様の激しい頭痛が3回あり、今回が4回目だった。来院直後1度嘔吐したが、待合室では普段の片頭痛の痛みとなった。体温36.8℃、血圧150/110mmHg、脈拍数90回/分。研修医が診察し、意識は清明で神経所見の異常および項部硬直もないため、片頭痛と診断した。過去3回の頭痛では、病院受診はしなかったという。上級医が今回受診した理由を尋ねると、調理中に立ち上がった瞬間に突然頭痛が出現し、トリプタン製剤を内服しても改善せず、いつもと違い急激で激しい頭痛だったからだと。即座に頭部CTを行い、くも膜下出血の診断に至った1)

頭痛と腰椎穿刺の切っても切れない仲

著者: 立花久大

ページ範囲:P.216 - P.220

Case
髄液検査後、頭痛が増悪した1例
患者:25歳、女性。
既往歴・家族歴:特記事項なし。
現病歴:約1週間前より頭痛が出現し、37.9℃の発熱も見られた。3日前近医を受診し、頭部CTが施行されたが異常なかった。片頭痛と診断されトリプタンが処方されたが、効果は見られなかった。2日前同院を再診し、抗菌薬の投与を受けたが効果がないため、当院を紹介された。意識清明で、Kernig徴候・Brudzinski徴候は陰性であったが、項部硬直、Jolt accentuationが陽性であったため、髄膜炎を疑われて入院した。腰椎穿刺による髄液検査を行ったところ、細胞数234/μL、リンパ球96%、蛋白126mg/dL、糖66mg/dL(血糖93mg/dL)であったため、無菌性(ウイルス性)髄膜炎と診断。入院翌日より、起立すると頭痛がひどくなると訴えるようになった。腰椎穿刺後頭痛と考え、輸液と安静にて経過を見たところ、7日目で頭痛も軽快したため退院となった。

原因は頭の中とは限らない

著者: 高岸勝繁

ページ範囲:P.221 - P.225

Case
繰り返す左側の前頭部〜側頭部痛
患者:62歳、男性。
現病歴:2〜3年前より左側の前頭部〜側頭部痛を自覚していた。頭痛は週に1回程度で、2〜3時間の持続痛であった。頭痛は毎回左側。疼痛時に左眼の視野がぼやける感じがあり、光を見ると周囲にHaloが生じていた。流涙や鼻汁は認められなかった。
 すでに他院にて頭部CT・頭部MRI・血液検査が行われたが、明らかな異常は認められなかった。「片頭痛」と診断され、治療を受けたが改善せず、再度精査目的で受診された。来院時に症状は認められず。
身体所見:神経学的異常、鼻閉、副鼻腔圧痛・叩打痛、顎関節の圧痛、可動域制限は認められなかった。眼球結膜・角膜に異常所見なし。眼底を評価したところ、左側の視神経乳頭陥凹を認め(Cup/Disk比 0.7)、眼圧測定では右眼15mmHg、左眼20mmHgであった。
 これより亜急性、間欠性閉塞隅角緑内障を疑い、眼科紹介とした。

ビリッときたらこの頭痛

著者: 片多史明

ページ範囲:P.227 - P.232

Case1
顔が“ビリッ”
患者:58歳、女性。
主訴:顔の痛みが治らない。
既往歴:高血圧(未治療)。
現病歴:3カ月前、夕食中に突然、顔が痛くなった。“ビリッ”とした痛みで、持続は2〜3秒。痛む部位は右頬部〜右上口唇、右下口唇。頻度は1日に20〜50回。ビリッとした痛みがない時にも、右頬部にはジーンとした鈍い痛みが続いている。歯科に通院し、右上奥歯の抜歯をしたが、痛みは改善せず。自宅近くの内科クリニックにも数回受診し、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナクを順次内服したが、効果はない。食事をすると、右頬をキリで刺されたような痛みが出現する。洗面後、タオルを上下に動かして顔を拭くと、右頬〜下顎にかけてビリッと痛むので、タオルをそっと顔に押し当てて拭いている。

毎日痛いからなんとかして

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.234 - P.237

Case
患者:45歳、女性。
現病歴:高血圧症・脂質異常症で他院より処方を受けていたが、転居のため転医希望で受診。毎日のように頭痛があるため、片頭痛という自己診断で鎮痛薬を希望された。
 頭痛は10年以上前からあり、朝起きた時から痛いことが多い。頭痛は両側性で、頭部全体が持続的に痛むことが多い。嘔気や聴覚過敏を伴い、寝込むことが月に1回程度ある。朝軽い頭痛が起こるため、毎朝鎮痛薬を服用するのが数年来の日課となっている。

【コラム:頭痛小咄】

頭痛がないのに片頭痛!?

著者: 高岸勝繁

ページ範囲:P.189 - P.189

 片頭痛のなかには、頭痛を伴わず、前兆症状のみを呈するタイプがあります。Typical aura without headache(TAWH)と呼ばれ、典型的な片頭痛の前兆症状があるものの、頭痛との関連性がない(前兆症状の60分以内に頭痛を認めない)ことで診断されます。
 前兆症状は、視覚症状や感覚症状(しびれ・痛み)、脱力、全健忘、失語症、構音障害、めまい症状があり、しばしば一過性脳虚血発作(transient ischemic attacks:以下TIA)との鑑別が重要となります1)

入院後に頭痛が起こったら

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.200 - P.200

Case
患者:41歳、男性。糖尿病教育入院。
●入院初日の夜間より、頭部全体に非拍動性の頭痛が出現した。
●「頭痛のため、糖尿病教育用DVD鑑賞に意欲的になれない」と訴えられる。
●もともとは頭痛もちではない。
●5年前から2型糖尿病を指摘されており、HbA1cは8.6%で、ビグアナイド製剤とDPP-4阻害薬を服用中であった。
●嗜好歴は喫煙10本/日×21年、機会飲酒。
●身体所見に特記すべき所見なし。入院後血糖値は100mg/dL台後半で推移している。

泣く子も黙る? インドメタシン反応性頭痛

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.207 - P.207

 片側頭痛におけるインドメタシンの効果は、“絶対的”であるとされており、『国際頭痛分類第3版beta版』1)の診断基準にも、「治療量のインドメタシンで完全寛解する」と明記されています。
 少し込み入った話となりますが、インドメタシンの使用量には注意が必要です。『国際頭痛分類第3版beta版』1)では、「成人において経口インドメタシンは最低用量150mg/日を初期投与量として使用し、必要があれば225mg/日を上限に増量する」とされています。一方、わが国ではインドメタシン経口薬の使用量は、「最高量75mg/日まで、直腸投与(坐薬)は最高量100mg/日まで」とされています。日常臨床では、75mg/日までの投与で反応性を判断してよいと考えられますが、75mg/日のインドメタシンが無効の場合は、臨床所見を勘案しながら、総合的に判断する必要があります。

頭痛を伴うアナフィラキシーを見たら

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.214 - P.215

Case
患者:55歳、男性。
●飲食店街にて気分不良・嘔吐・頭痛のため、救急車を要請した。
●30分ほど前に、刺身と焼酎(1杯のみ)を摂取している。
●自己申告では特記すべき既往なし。
●血圧68/40mmHg、心拍数118回/分・整、呼吸数18回/分、体温36.1℃、SpO2 99%(room air)。
●顔面・体幹が紅潮している。

死角からの刺客

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.226 - P.226

Case
患者:22歳、男性。
●生来健康な22歳男性が、友人と一緒にスキーに出かけ、車中泊をした。
●翌朝に頭痛・めまい・嘔気が出現した。
●前日の夕食は鶏肉を用いた鍋料理であったが、火は十分に通っていた。
●また、ビールと日本酒を飲んだが、飲酒をしていない友人にも同様の症状がある。
●夜間は寒いため、暖房をつけて寝袋で寝た。
●血圧110/73mmHg、脈拍数81回/分、体温36.1℃、呼吸数14回/分、SpO2 99%(room air)。
●一般身体所見に特記すべき所見はない。

その頭痛は二日酔いではないかもしれない

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.233 - P.233

Case
患者:29歳、女性。
●飲酒をすると頭が痛くなることが多い。
●ビールをコップ半分でも摂取すると、飲み会の最中に頭痛が出現し、気分不良で中座することがある。

早朝の頭痛は脳腫瘍か?

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.238 - P.238

 睡眠中は二酸化炭素が貯留することで、頭蓋内圧が亢進しやすい状況となります。そのため、頭蓋内圧亢進による頭痛は、早朝覚醒時に認めやすいことが特徴です。
 頭蓋内腫瘍による頭痛患者98例を調査したところ、47%が「痛みで目覚めることがある」と返答しました。一方で、早朝の頭痛は26%のみで、40%は頭痛の起きやすい時間帯に決まりはなく、21%は「夕方に頭痛が強かった」と返答しています1)。つまり、頭痛のタイミングだけで脳腫瘍を否定することは困難です。

Editorial

“頭痛”で頭を痛めないために—“頭痛大好き人間”への第一歩を!

著者: 上田剛士 ,   高岸勝繁

ページ範囲:P.161 - P.161

頭痛の鑑別診断は膨大であり、その診療は一筋縄ではいきません。『国際頭痛分類第3版beta版』では、頭痛を大きく14項目に分けていますが、その下位に286項目、付録を含めると339項目が掲載されています。これだけ膨大な診断基準を暗記しようとすれば、それこそ頭痛がしてきます。
 そこで頭痛を専門とはしないプライマリ・ケア医や総合診療医でも効率よく頭痛を学ぶことができるように、基本に忠実でありながらも、臨床的には重要と思われる部分に深く踏み込んだ本特集を企画しました。

ゲストライブ〜Improvisation〜・8

The 勉強談義!

著者: 高岸勝繁 ,   上田剛士

ページ範囲:P.162 - P.169

 今や総合診療医のバイブル的存在となっている『ホスピタリストのための内科診療フローチャート』(シーニュ、2016)(p.267)と『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』(医学書院、2014)(p.267)。この2冊の本はそれぞれ、30代の新進気鋭の若手医師・高岸氏、上田氏による、単独著である。
 膨大な量の文献(エビデンス)をコツコツと調べあげ、そして本にまとめあげるという作業だけでも、もはや超人の域なのだが、それだけではないのである。両氏は、その得た知識をしかと日常臨床に落とし込んで活用し、診断の精度を上げるなど、日々の臨床力を積み上げているのだ。
 本特集「頭痛患者で頭が痛いんです!」のゲストエディターであり、エビデンスの、まとめの、そして臨床の“達人”であるお2人に、「いったいどんな勉強をしているのか?」「総合診療医としての臨床センスを磨くにはどういう勉強法があるのか?」について話を聞いた。

What's your diagnosis?[182]

見て! 日本のパンケーキだよ!

著者: 西澤徹 ,   谷浦武仁 ,   山田瑞穂 ,   青山幾子 ,   弓指孝博

ページ範囲:P.173 - P.176

病歴
患者:56歳、男性。
主訴:鼻汁、咽頭違和感。
病歴:来院前日の昼食(自炊のお好み焼き)摂取後から、急に水様鼻汁と咽頭違和感をきたした。来院当日朝、鼻汁と咽頭違和感は軽快していたが、「風邪薬」を希望して内科外来を受診した。病人・動物との接触歴や最近の旅行歴はなく、寒気、発熱、頭痛、眼・耳症状、嚥下痛・嚥下困難、嗄声、喘鳴、咳嗽、呼吸困難、腹痛、下痢、皮疹、瘙痒感、立ちくらみは自覚しなかった。
既往歴:特記事項なし。
薬剤歴:なし。サプリメント・漢方なし。
アレルギー歴:小児期に喘息。
家族歴:特記事項なし。
生活歴:独居(単身赴任)、数年来性交歴(-)。
喫煙:never smoker。
飲酒:焼酎水割り3杯/日。
職業:サラリーマン(営業職)。

ジェネラリスト漢方Basics|東西2つの視点でアプローチ・2

「胃もたれに六君子湯はよく効いたんだけれど…」—漢方にできること、できないこと

著者: 岡部竜吾

ページ範囲:P.244 - P.246

 漢方を使い始めると、“ビギナーズラック”なのか、漢方薬がよく効いてしまう場面に遭遇する。ともすると「漢方ってよく効くなあ」と感心して、思考が停止してしまう危険性がある。しかし、漢方がよく効いた時こそしっかり立ち止まり、診療を見直す必要がある。

診察で使える!|急性期Point-of-Care超音波ベーシックス・11

循環血液量減少を疑った時

著者: 亀田徹

ページ範囲:P.247 - P.252

はじめに
下大静脈が再び注目されています
 今回は「循環血液量」という、捉えにくいものを相手にします。
 循環血液量減少は脱水や出血、循環血液量増加は心不全や腎不全などで起こります。循環血液量の評価は、病歴と身体所見に加え、必要に応じエコーを用いて行われています。従来、下大静脈径と呼吸性変動の組み合わせで中心静脈圧(右房圧)の推定が行われてきましたが、中心静脈圧は循環血液量や輸液反応性(後述)の指標にはなりえないことが明らかにされています1)。下大静脈の観察による循環血液量減少の評価は、どの程度有用なのでしょうか?
*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2020年1月31日まで)。

オール沖縄!カンファレンス・14

TIAが疑われる症例の初期診療

著者: 玉城拓也 ,   小山豊太 ,   川妻由和 ,   徳田安春

ページ範囲:P.253 - P.258

CASE
患者:84歳、男性。
既往歴:心臓弁膜症(詳細不明)、心房細動(atrial fibrillation、以下Af)、高血圧症、虫垂炎手術。
家族歴:特記事項なし。
生活歴:喫煙歴・飲酒歴なし。
内服薬:スピロノラクトン25mg 1錠、ワーファリン1mg 2錠、アムロジピン2.5mg 0.5錠、フロセミド20mg 0.5錠、ジフェニドール塩酸塩錠25mg 3錠。
現病歴:近医にて弁膜症を指摘され、手術を勧められるも希望されず、保存的に加療中であった。以前より食後や運動後に時折めまいを自覚していたが、放置していた。2017年○月○日、朝食後にトイレに行こうと立ち上がった際に、めまい・ふらつきを感じた。朝8時頃に訪問した友人が、呂律難に気づいた(註:本人には自覚がなかった)。友人が帰宅する際に家族を呼んだところ、家族も呂律難を認めたため、13時40分に救急要請。来院時めまいの自覚症状は消失していた。

みるトレ Special・14

敗血症性ショックの正体は?

著者: 笠原敬

ページ範囲:P.261 - P.264

患者:80歳代、男性。週3回デイケアサービスを受けている。
主訴:意識障害。
現病歴:17時すぎにヘルパーが訪れたところ、ベッド上で口を開けて仰向けになっており、声をかけても返答がないため救急搬送された。7月で部屋には冷房がかかっておらず「熱中症」と考えられたが、念のため採取された血液培養2セットの4本中2本(いずれも好気ボトル)が陽性になった。
身体所見:意識JCS(Japan Coma Scale)30、血圧72/42mmHg、脈拍数135回/分、体温40.4℃、呼吸数36回/分、SpO2 84%(室内気)。そのほか身体所見上は明らかな異常を認めなかった。
血液検査:WBC 500/μL(Stab 7%、Seg 9%、Lym 59%、Mono 23%)、CRP 11.6mg/dL。
血液培養のグラム染色写真を示す(図1)。

I LOVE Urinalysis|シンプルだけどディープな尿検査の世界・11

尿糖は本当に甘い?

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.272 - P.274

Case
患者:79歳、男性。
現病歴:糖尿病コントロールが不良のため、糖尿病教育ならびにインスリン導入目的にて入院。
Glu 529mg/dL、HbA1c 9.5%。
既往歴:2型糖尿病、膀胱癌術後(回腸導管)。
 尿定性
比重 1.020
pH 7.5
蛋白 2+
糖 -
ケトン体 -
潜血 1+
ウロビリノゲン 正常
ビリルビン -
白血球 2+

国試にたずねよ・14

触れてみなくちゃ、脈ナシかどうかわからない。

著者: 山中克郎

ページ範囲:P.275 - P.277

 仲田和正先生(西伊豆健育会病院)がメーリングリストで紹介されていた、『欧米に寝たきり老人はいない』を読んでみた1)。著者の宮本顕二・礼子夫妻は、認知症医療に携わる内科医である。
 日本では、自分で食べることができなくなった終末期高齢者への点滴や経管栄養が普通に行われている。しかし欧米では、高齢者の延命治療は人権を侵し倫理的に問題があるとして行われていない。人生は楽しむためにあり、高齢者施設でも自由に酒を飲める。食事介助も行わないので、自分で食べることができなくなると、2週間くらいで安らかに亡くなるという。「1日でも長く生きていて欲しいのです」という家族の希望を受け入れ、点滴や経管栄養で不自然に寿命を延ばすことが、本当に高齢者の幸せにつながっているのだろうか、と大いに考えさせられた。

苦手克服|野獣のリアル勉強法・14

「腎臓内科」診療ポイント集—“コソ勉”ができる内科の強みを活かして

著者: 九鬼隆家

ページ範囲:P.278 - P.283

実力をつけるための“心構え”は?
 「要領・効率のいい勉強法を教えてください」と言われることが、時々ある。身も蓋もない話ではあるが、身の程を知ることも大事である。

こんなときオスラー|超訳『平静の心』・14

叡知を身につけるため、自分自身に“たゆまぬ監視の眼”を—「学究生活」の章より

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.284 - P.287

CASE 1
Aさんは、総合系医師をめざすシニアレジデントである。診断推論に興味があり、さまざまな本を買って読んだりしている。医学書を読み込むことによって、自分自身では医学的な知識が増えたという感触はあるものの、実際の診療場面での診断エラーがまだまだ多いと感じている。そのため、Aさんは日常診療で、どのように診断推論能力を高めていけばよいかについて悩んでいた。

55歳からの家庭医療|明日から地域で働く技術とエビデンス・14

—「病い」へのアプローチ1—Clinical Method in Family Medicine:FIFE

著者: 藤沼康樹

ページ範囲:P.288 - P.293

 プライマリ・ケア外来診療では、「疾患」へのアプローチ、すなわち医学的診断・治療を実施することが、患者が直面している問題に直結しないことがよくあります。しばしば、受診理由や健康問題が「患者にとってどういう意味をもっているか」にアプローチすることが必要になります。
 家庭医療学においては、前者は「疾患(disease)」へのアプローチ、後者は「病い(illness)」へのアプローチと呼ばれ、この2つのアプローチを同時並行的に実施することが、家庭医らしい臨床的方法(clinical method)とされます1)。このことを知ってから、私自身、プライマリ・ケア外来において患者さんがぜんぜん違って見えるようになったことを、今でも鮮明に覚えています。

総合診療専門医(仮)セルフトレーニング問題・11

発熱+頭痛・頸部痛で入院した85歳女性

著者: 家研也

ページ範囲:P.294 - P.297

セッティング
ここは都市部にある380床の市中病院。
あなたは病棟の内科系入院患者の主治医として、研修医とともに診療にあたっている。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

ページ範囲:P.194 - P.194

#今月の特集関連本❷

ページ範囲:P.199 - P.199

#今月の特集関連本❸

ページ範囲:P.213 - P.213

#今月の特集関連本❹

ページ範囲:P.215 - P.215

#今月の特集関連本❺

ページ範囲:P.220 - P.220

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.269 - P.269

#今月の連載関連本

ページ範囲:P.267 - P.267

#今月の連載関連本

ページ範囲:P.287 - P.287

#医学書院の新刊

ページ範囲:P.271 - P.271

#書評:『神経症状の診かた・考えかた』

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.266 - P.266

 本書の著者である福武敏夫先生は亀田総合病院神経内科部長であり、前職でお世話になった。私が長く診ていた患者の(私が見逃していた)若年性アルツハイマー病を診断していただいたことが今も忘れられない。
 本書の初版が出たのが2014年。通常、医学書の改訂には5年程度かかることが多い。本書のような診断に関する本は特に情報のターンオーバーが(治療の進歩に比べて)緩やかなので、たった3年で改訂されるというのは稀有な話と言えよう。そのことが本書のニーズの高さを物語っている。

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『総合診療』編集方針

ページ範囲:P.177 - P.177

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。
2018年1月  『総合診療』編集委員会

読者アンケート

ページ範囲:P.299 - P.299

『総合診療』バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.300 - P.301

お得な年間購読のご案内

ページ範囲:P.301 - P.302

次号予告

ページ範囲:P.303 - P.304

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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33巻12号(2023年12月発行)

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33巻11号(2023年11月発行)

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33巻10号(2023年10月発行)

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特集 “消去法”で考え直す「抗菌薬選択」のセオリー—広域に考え、狭域に始める

33巻6号(2023年6月発行)

特集 知っておくべき!モノクロな薬たち(注:モノクローナル抗体の話ですよ〜)

33巻5号(2023年5月発行)

特集 —疾患別“イルネススクリプト”で学ぶ—「腹痛診療」を磨き上げる22症例

33巻4号(2023年4月発行)

特集 救急対応ドリル—外来から在宅までの60問!

33巻3号(2023年3月発行)

特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで

33巻2号(2023年2月発行)

特集 しびれQ&A—ビビッとシビれるクリニカルパール付き!

33巻1号(2023年1月発行)

特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え

32巻12号(2022年12月発行)

特集 レクチャーの達人—とっておきの生ライブ付き!

32巻11号(2022年11月発行)

特集 不定愁訴にしない“MUS”診療—病態からマネジメントまで

32巻10号(2022年10月発行)

特集 日常診療に潜む「処方カスケード」—その症状、薬のせいではないですか?

32巻9号(2022年9月発行)

特集 総合診療・地域医療スキルアップドリル—こっそり学べる“特講ビデオ”つき!

32巻8号(2022年8月発行)

特集 こんなところも!“ちょいあて”エコー—POCUSお役立ちTips!

32巻7号(2022年7月発行)

特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座

32巻6号(2022年6月発行)

特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス—My Best 3

32巻5号(2022年5月発行)

特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況

32巻4号(2022年4月発行)

特集 えっ、これも!? 知っておきたい! 意外なアレルギー疾患

32巻3号(2022年3月発行)

特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル—君は生き延びることができるか?

32巻2号(2022年2月発行)

特集 —withコロナ—かぜ診療の心得アップデート

32巻1号(2022年1月発行)

特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学

31巻12号(2021年12月発行)

特集 “血が出た!”ときのリアル・アプローチ—そんな判断しちゃダメよ!

31巻11号(2021年11月発行)

特集 Q&Aで深める「むくみ診断」—正攻法も!一発診断も!外来も!病棟も!

31巻10号(2021年10月発行)

特集 医師の働き方改革—システムとマインドセットを変えよう!

31巻9号(2021年9月発行)

特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?

31巻8号(2021年8月発行)

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。

31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

27巻8号(2017年8月発行)

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!

27巻7号(2017年7月発行)

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編

27巻6号(2017年6月発行)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

27巻5号(2017年5月発行)

特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!

27巻4号(2017年4月発行)

特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。

27巻3号(2017年3月発行)

特集 これがホントに必要な薬40—総合診療医の外来自家薬籠

27巻2号(2017年2月発行)

特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

27巻1号(2017年1月発行)

特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

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