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文献詳細

雑誌文献

総合診療28巻3号

2018年03月発行

文献概要

特集 糖尿病のリアル—現場の「困った!」にとことん答えます。 複雑困難事例の「こんな時どうする!?」

CASE3 マルチモビディティ状態の高齢者—(肝硬変・腎不全合併)

著者: 三澤美和1

所属機関: 1大阪医科大学附属病院 総合診療科

ページ範囲:P.360 - P.365

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Case
患者:88歳、男性。「アルコール性肝硬変(Child-Pugh分類A)」「慢性腎臓病(G4A2)」「慢性心不全」を合併する2型糖尿病。
 独居で、徒歩10分のところにキーパーソンである長女が3歳の孫と住む。同居していた妻は昨年、脳出血のために亡くなり、それからは元気が出ない。服薬アドヒアランスは、長女の手助けで守られているようである。要介護1。
現病歴:車で20分ほどの総合病院の循環器内科・消化器内科・腎臓内科で診療を受けており、糖尿病管理は消化器内科でされていたようである。通院が困難となり、自宅に近い当院に紹介された。
 アルコールは1年前にやめたが、そのぶん食事量が増え、糖尿病のコントロールおよび塩分過多による心不全・腎不全の増悪・寛解を繰り返している。アルコール性末梢神経障害による足底から下腿のしびれと疼痛が強く、歩行には杖が必要でゆっくりしか歩けない。日常生活で転倒しそうになることが多いようだ。他のADL(activities of daily living:日常生活動作)はおおむね自立、IADL(instrumental activities of daily living:手段的日常生活動作)は軽度の聴力低下以外は問題ない。
 身長167cm、体重72kg、BMI 25.8。
血液検査:Alb 3.2mg/dL、AST 19U/L、ALT 11U/L、ALP 273U/L、γ-GTP 147U/L、BUN 35mg/dL、Cr 2.23mg/dL、eGFR 24mL/分/1.73m2、Crr 23mL/分、Hb 12.1g/dL、Plt 9×104/μL。HbA1c 9.3%、随時血糖284mg/dL、尿蛋白(1+)。
内服薬:シルニジピン10mg 1錠朝、ビソプロロール 2.5mg 1錠朝、アゾセミド 30mg 1錠朝、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(アーガメイト®)20%ゼリー25g 2個分2朝夕、グリメピリド2mg 1錠朝(SU薬)、シタグリプチン50mg 1錠朝(DPP-4阻害薬)、ラクツロースシロップ40mL分2朝夕、肝不全用成分栄養剤(アミノレバン®EN配合散)50g 2包分2朝夕、フェブキソスタット20mg 1錠朝。
 担当医師はつぶやいた。「腎機能がかなり悪い。超高齢。これで糖尿病の管理って、どうすればいいのかな……」。

参考文献

1)日本糖尿病学会:高齢者の糖尿病.糖尿病治療ガイド2016-2017.pp95-97,文光堂,2016.
2)American Diabetes Association : 11. Older Adults. Diabetes Care 40(Suppl 1) : S99-S104, 2017. PMID 27979898
3)高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会:高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について.日本糖尿病学会,2016. http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=66
4)The National Institute for Health and Care Excellence(NICE) : Individualised care. 2017. https://www.nice.org.uk/guidance/ng28/chapter/ 1-Recommendations#individualised-care

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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