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文献詳細

雑誌文献

総合診療28巻4号

2018年04月発行

文献概要

特集 感染症外来診療「賢医の選択」—検査・経口薬・ワクチンをどう使えばいいんですか? 【感染症関連検査のChoosing Wisely—白血球とCRPを越えて】

ノロウイルス便迅速抗原検査

著者: 椎木創一1

所属機関: 1沖縄県立中部病院感染症内科

ページ範囲:P.480 - P.482

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Pitfall Case
急性の嘔吐、下痢で発症したステロイド使用中の女性
患者:重症筋無力症に対してプレドニゾロン50mg/日を内服している、不妊治療中の30歳、女性。
現病歴:冬のある日、来院前日の夕方から全身倦怠感と食欲低下あり。来院当日の深夜0時、急に悪心が出現して胃液様の嘔吐が4回あり、その後悪寒と下痢が出現したため、救命救急センターを受診した。同居している配偶者に症状はない。来院時、血圧96/58mmHg、脈拍数110回/分、呼吸数24回/分、体温37.7℃、体重49kg(通常51kg)。呼吸が荒く、嘔吐を続けている。腹部は平坦軟だが、全体に軽度の圧痛を認めた。血液検査ではNa 138mEq/L、K 3.0mEq/L、Cr 0.80mg/dL、WBC 12,800/μL、Hb 14.7g/dL、CRP 0.19mg/dL。インフルエンザ迅速抗原検査およびHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)定性検査は陰性であった。
臨床経過:来院後に排便なく、嘔気は改善したが水分摂取量が十分でないので、「急性胃腸炎疑い」として補液しながら病棟入院となった。病棟ではインフルエンザ流行のため個室調整が難しく、大部屋に入院となった。翌朝軟便があり、検体提出したところ、ノロウイルス便迅速抗原検査陽性となった(注:来院後嘔吐はあったが排便がなかったので、ノロウイルス便迅速抗原検査は提出されていなかった)。水分摂取可能で嘔気も消失し、電解質も正常化していたので退院。患者には、自宅内でのトイレ使用方法の注意と清掃方法を説明し、同居者にも同症状が出現しうることを説明した。患者が使用した病室およびトイレの環境清掃は、次亜塩素酸で速やかに行った。また、病棟内の患者に嘔吐・下痢症状の出現がないか、1週間は注意しておくように、感染対策担当者から指示を受けた。

参考文献

1)Dolin R, et al : Norovirus and Sapoviruses(Caliciviruses). Bennett JE, et al(ed) : Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 8ed. pp2122-2127, Saunders, 2015.
2)Cardemil CV, et al : Norovirus infection in older adults ; epidemiology, risk factors, and opportunities for prevention and control. Infect Dis Clan N Am 31(4) : 839-870, 2017. PMID 28911830
3)Shane AL, et al : 2017 Infectious Disease Society of America Clinical Practice Guidelines for the diagnosis and management of infectious diarrhea. Clin Infect Dis 65(12) : e45-e80, 2017. PMID 29053792
4)Lesile S. Zun : Nausea and vomiting. Marx JA, et al(ed) : Rosen's emergency medicine ; Concepts and Clinical Practice, 8ed. pp238-247, Saunders, 2014.
5)厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル.2017.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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