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文献詳細

雑誌文献

総合診療28巻6号

2018年06月発行

文献概要

特集 聴診・触診×エコーで診断推論!—Point-of-Care超音波(POCUS)の底力 【各論】

頸部触診とエコー—頸部の病変を素早く、かつ、正確に判断しよう!

著者: 古川まどか1

所属機関: 1神奈川県立がんセンター頭頸部外科

ページ範囲:P.773 - P.777

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Case1
患者:75歳、女性。
主訴:右顎下部腫脹。
既往歴・家族歴:特記すべきことなし。
喫煙歴・飲酒歴:なし。
現病歴:3カ月ほど前に右顎下部の腫脹に気づいた。その後増大傾向があり、当院を受診した。
身体所見:口腔内・咽頭喉頭・鼻腔を、視診およびファイバースコープで観察したが、異常所見は認めなかった。
触診所見:触診にて右顎下部に腫脹を認めたが、圧痛や自発痛はなかった。顎下部の腫脹が顎下腺実質の変化か、顎下腺内の腫瘍か、顎下腺周囲のリンパ節かを触診で判断することはできなかった。さらに口腔底の双指診を施行したが、舌下小丘、顎下腺管(ワルトン管)付近に硬結や結石などは触知されなかった。
Point-of-Care超音波(POCUS):右顎下部腫脹の原因を調べるために、まずPoint-of-Care超音波検査を施行した。超音波像では、右側の顎下腺がびまん性に腫大し、正常顎下腺に低エコー部分が混在する不均質な内部エコーとなっていた(図1Ⓐ)。唾液腺腫瘍を疑う結節性病変や、顎下腺周囲のリンパ節腫脹は認めなかった。カラードプラでは、右顎下腺内の低エコー部分で血流シグナルがやや目立っていた(図1Ⓑ)。また反対側である左側の顎下腺にも、ごく軽度ではあるが右側と同様の変化を認めた。以上の所見より、IgG4関連疾患を疑い精査を進めたところ、血清IgG 1,810mg/dL(正常870〜1,700)、血清IgG4 212mg/dL(正常4.8〜105)と高値で、組織生検の結果と合わせて「IgG4関連疾患」1)と診断された。

参考文献

1)古川政樹:唾液腺(耳下腺・顎下腺)非腫瘍性病変 IgG4関連疾患.尾本きよか(編):体表臓器超音波診断ガイドブック.pp68-69,南江堂,2016. <顎下腺IgG4関連疾患か,顎下腺腫瘍かの鑑別に,超音波診断の有用性がまとめられている>
2)McQueen AS, et al : Head and neck ultrasound ; technical advances, novel applications and the role of elastography. Clin Radiol 73(1) : 81-93, 2018. PMID 28985885 <頭頸部領域のさまざまな臓器の診断に超音波診断を活用したところ,有用であったという論文>
3)古川まどか,他:頸部の画像検査.山岨達也,他(編):耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート 改訂第2版.pp199-204,診断と治療社,2016. <超音波検査は,軟部組織分解能が高く,手軽に施行できる有用な検査であることがまとめられている>
4)古川まどか,他:顎下腺腫瘍性疾患.古川まどか,他(編):頭頸部エコーアトラス.pp47-55,診断と治療社,2016.
5)古川まどか:喉頭疾患の超音波診断.喉頭29(2):75-79, 2017. <超音波診断は喉頭がんの広がり診断に有用で,リアルタイムの喉頭運動観察からは,さまざまな情報が得られることがわかる論文>
6)Xia CX, et al : Usefulness of ultrasonography in assessment of laryngeal carcinoma. Br J Radiol 86(1030) : 20130343, 2013. PMID 24004487 <超音波診断は喉頭がんの診断に有用であるという論文>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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