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文献詳細

雑誌文献

総合診療29巻12号

2019年12月発行

文献概要

特集 困っている“あなた”に届く 認知症診療 【認知症診療case by case】

Alzheimer病

著者: 福井俊哉1

所属機関: 1かわさき記念病院

ページ範囲:P.1469 - P.1473

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Case
進行性のもの忘れを主徴とした1例
患者:初診時68歳、男性、右利き。
既往歴:高血圧、心房細動、糖尿病、高尿酸血症。
現病歴:初診2年前(66歳時)に、人の名前が出てきにくいことに気がつき、その傾向はその後緩徐に悪化した。初診1年前から所持品を片付けた場所を忘れ、また、大事な約束・予定や、孫の誕生日などを思い出せないこと、また車の操作ミスが増えた。初診2カ月前には、通い慣れていたスーパーマーケットへの行き方がわからなくなった。
初診時所見:礼節は保たれ、診察には協力的であるが、本人には病感があるうえに、妻が過干渉・叱責的であるため、ややイライラしている。Montreal Cognitive Assessmentは20/30点(遅延再生0/5)、記憶障害・視空間認知障害を認める。手首固化徴候を含めて身体症状はなく、血液検査上も異常を認めない。脳CT上軽度の海馬萎縮を認め、脳外科的疾患も否定的なため、Alzheimer型認知症と診断。ドネペジルで治療開始後、改訂版長谷川式簡易知能評価スケール上29/30点得点可能となり、糖尿病に対する運動・食事療法も自己管理できている。
 一方、患者本人の能力を過小評価しがちである妻との夫婦げんかが絶えない。本人の能力を尊重するように妻へ指導を行った。

参考文献

1)Fukui T : Historical review of academic concepts of dementia in the world and Japan ; with a short history of representative diseases. Neurocase 21(3) : 369-376, 2015. PMID 24601750 〈各種認知症の歴史を概観している〉
2)福井俊哉(著),高橋裕秀(監):アルツハイマー型認知症.今日の臨床サポート,ELSEVIER, 2018. https://clinicalsup.jp/contentlist/131.html 〈ADの包括的解説〉
3)McKhann GM, et al : The diagnosis of dementia due to Alzheimer's disease ; recommendations from the National Institute on Aging-Alzheimer's Association workgroups on diagnostic guidelines for Alzheimer's disease. Alzheimers Dement 7(3) : 263-269, 2011. PMID 21514250 〈NIA-AAによる認知症とADの診断基準〉
4)American Psychiatric Association : Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, DSM-5. American Psychiatric Association Publishing, Washington, DC, 2013. [日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2013.] 〈DSM-5による大神経認知障害とAD診断基準〉
5)福井俊哉:言語.特集I. 精神科診療に必要な高次脳機能の知識.精神科 23(2) : 171-176, 2013. 〈変性性認知症に合併する失語型を解説〉
6)Fukui T, et al : Progressive agraphia can be a harbinger of degenerative dementia. Brain Lang 104(3) : 201-210, 2008. PMID 18068758 〈漢字失書が初発症状であったAD例の症例報告〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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