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文献詳細

雑誌文献

総合診療29巻2号

2019年02月発行

文献概要

特集 意外な中毒、思わぬ依存、知っておきたい副作用—一般外来で!OTCも処方薬も! 【OTC薬剤による中毒症・依存症】

ブロン依存症

著者: 高岸勝繁1

所属機関: 1京都岡本記念病院総合診療科

ページ範囲:P.140 - P.142

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Case
患者:50代、男性。悪寒と発熱で受診。
現病歴:もともとアルコール依存症であったが、6年前に禁酒し、以後禁酒継続できていた。また、1〜2年前よりうつ病と診断され精神科を受診していたが、自己中断している。
 来院1カ月前に抑うつ症状が増悪。活動性が低下していた。3週間前より疲労感・倦怠感があり、徐々に食欲低下も進行。2日前に尿失禁し、やや興奮気味となり、来院の前日より悪寒を伴う発熱を認め、救急要請された。
既往歴:うつ病、アルコール依存症。
内服:現在はなし。
身体所見:意識清明だが、軽度興奮・多弁。体温40.2℃、血圧156/89mmHg、心拍数140回/分(整)、呼吸数26回/分、SpO2 99%(室内気)。
 眼球運動正常、瞳孔は4/4mm、対光反射は軽度鈍い。流涙や唾液分泌の亢進なし。顔面・皮膚紅潮なし。発汗あり。腹部腸管蠕動音はやや亢進。
 胸部・腹部・四肢の診察にて、明らかな感染を示唆する所見は認められず。
検査所見:WBC 16,940/μL(好中球88%)、Hb 16.1g/dL、Plt 23.5×104/μL、AST 263IU/L、ALT 66IU/L、LDH 1,125IU/L、ALP 241IU/L、γ-GTP 58IU/L、CPK 12,661IU/L、BUN 21.6mg/dL、Cr 1.4mg/dL、Na 132mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 94mEq/L、CRP 3.4mg/dL。
 胸部X線、胸腹部CTでは、明らかな発熱のフォーカスとなる異常は認められない。
 血液培養検査は陰性。
初診時のアセスメントとその後の経過:フォーカス不明の発熱、興奮症状、頻脈、高熱、CPK上昇などより、何かしらの薬物、離脱症状の可能性を考慮した。アルコール摂取歴を再度確認するも、使用した形跡は認められなかった。家人に自宅内で薬物を探すように指示したところ、患者の上着ポケットからパブロンゴールドA®が複数発見された。
 ベンゾジアゼピンを使用し経過をフォローしたところ、徐々に症状、検査所見は改善を認め、第5病日には症状の消失が得られた。
 改善後にパブロンゴールドA®を見せつつ、薬物歴を本人から詳細に聴取した結果、以下の経過が判明した。
●〜6年前:アルコール依存で入院。以後禁酒継続。
●3年前:アルコールの代わりにパブロンゴールドA®やその類似薬を常用し始めた。連日1〜2袋、咳止め液として2本程度使用していた。
●1〜2年前より無気力感や抑うつ症状が出現し、精神科にてうつ病と診断。投薬も受けたが、すぐに自己中断した。
●1カ月前よりさらに無気力感が強くなり、咳止め液を1日に4本使用し始めた。さすがに使用に対して不安感があり、来院の3日前からは使用しなかった。
 以上の経過より、最終的に「ブロン依存症、ブロン離脱症」と診断した。

参考文献

1)Murao S, et al : Intoxication with over-the-counter antitussive medication containing dihydrocodeine and chlorpheniramine causes generalized convulsion and mixed acidosis. Intern Med 47(11) : 1013-1015, 2008. PMID 18520112
2)村上優:薬物依存の現状—とくに常用量依存について.医療 54(5) : 201-205, 2000.
3)Ishigooka J, et al : Abuse of “BRON” ; a Japanese OTC cough suppressant solution containing methylephedrine, codeine, caffeine and chlorpheniramine. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 15(4) : 513-521, 1991. PMID 1749828
4)吉田芳子,他:市販液状鎮咳剤(通称ブロン)乱用者の社会的,精神医学的特徴;シンナー及び覚醒剤乱用との比較.北里医学18(6) : 677-689, 1988.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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