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オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・26
「稀な疾患を見つけたっ!」と飛びつくよりも、やるべきこと—オッカム vs ヒッカム
著者: 能美康彦1 友利隆一郎2 仲間直崇3 徳田安春4
所属機関: 1中部徳洲会病院 2中部徳洲会病院救急総合診療部 3中部徳洲会病院消化器内科 4臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄センター
ページ範囲:P.231 - P.235
文献購入ページに移動患者:54歳、女性。飲食店勤務。
主訴:頸を動かしたり、つばを飲み込むと、頸部が痛い。
現病歴:咽後膿瘍の既往がある。来院前日の仕事中に頸部の運動時痛を自覚、夕方にかけて徐々に増悪し、帰宅する頃には激痛となり、頸部の運動困難となった。特に回旋時の疼痛が高度で、車の運転が困難な程だった。来院当日の朝も症状の改善なく、朝食時に右側頸部から後頸部に放散する強い疼痛が持続したため、近医整形外科を受診した。頸部単純X線側面像で骨軟部組織肥厚を認め、咽後膿瘍の再発も疑われたため、精査目的で当院ERに紹介受診となった。
既往歴:
#咽後膿瘍;詳細不明だが、30代で1カ月近く入院し、耳鼻科にて抗菌薬加療歴あり。
#子宮外妊娠;30代に卵管摘出術施行。
#右耳下腺炎:来院2カ月前。
健診受診は5年以上なし、アレルギー歴なし。
内服:ダイエットのサプリメントのみ。
家族歴:心疾患・リウマチ膠原病・免疫不全・若年死を含め、特記事項なし。
生活歴:機会飲酒。20歳から1pack/日の現役喫煙者。夫・子どもと3人暮らしで、家族が経営する沖縄料理店を手伝っている。
review of systems:
+:倦怠感;仕事は休み、自宅でも寝込んでいる。過多月経;来院約6カ月前に大量の正期出血があり、近医婦人科を受診。悪性腫瘍は否定的で、閉経間際の前兆と思われるので経過観察を行うよう伝えられていた。
-:寒気・悪寒戦慄、上気道症状、咳・痰、胸痛・動悸、腹痛・便秘/下痢、頻尿・排尿困難、四肢関節痛、発疹、性病罹患歴/罹患リスク行動・sick contact、沖縄離島を含む国内外旅行歴・直近の歯科受診歴、動物・山・川・森・土いじり・結核曝露歴。
身体所見:
●外観;身長157cm、体重69kg、BMI 28。
●来院時バイタルサイン:体温36.8℃、血圧142/60mmHg、脈拍数68回/分、呼吸数18回/分。
●全身状態;呼吸状態も含め安楽であり、疎通性も良好だが、やや不安そう。
●頭頸部;頸部硬直なし、口腔内衛生良好。Sniffing position・口蓋垂偏位・開口障害・流埏・舌骨圧痛・頸部軟部組織発赤なし。回旋時有意の頸部運動時痛あり、可動域制限もあり。
●呼吸音:左右差なく清。
●心音:過剰心音・心雑音なし。
●腹部:平坦でやわらかく、腸蠕動音亢進や減弱なし、圧痛なし。
●背部:CVA・脊椎殴打痛、恥骨上圧痛なし。
●四肢:大関節熱感・疼痛なし。
●皮膚:明らかな発疹を認めない。
検査所見:
●採血・尿検査所見:表1。
●心電図:洞調律。
●胸部X線:特記事項なし。
●頭頸部造影CT:頸椎前方に石灰化を認める(図1、2)。
●頸椎MRI:頸椎椎体前方に液体貯留を認める(図3)。
Problem List:
#頸部軟部組織肥厚
#頸部運動時(回旋有意)・嚥下時痛
#咽後膿瘍の既往
#鉄欠乏性貧血
参考文献
掲載誌情報