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特集 “ナゾ”の痛み診療ストラテジー|OPQRSTで読み解く 【診断と治療のストラテジー「頭の先から足の先まで」痛みのcase file 14】
急にお腹が痛くなり、慢性腹痛に
著者: 近藤喜太1
所属機関: 1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学
ページ範囲:P.404 - P.407
文献購入ページに移動患者:16歳、女性。
既往歴:生来健康で、特記すべき既往なし。
現病歴:半年前に、学校で左下腹部の強い痛みを自覚。学校を早退し、近医内科を受診した。腹部超音波では消化管、婦人科臓器に異常を認めず、翌日、自宅近くの外科・婦人科を紹介となった。CT・MRIでは異常指摘されず、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、漢方薬を処方されるも、疼痛の改善はなかった。5カ月前、総合病院内科を紹介受診。超音波検査異常なし、アセトアミノフェンを処方されるも、腹痛はすべての内服薬に抵抗性であった。3カ月前、当院総合診療内科を紹介された。下部内視鏡検査、CT・MRIを再検査するも、すべて異常を認めなかった。プレガバリン処方も疼痛改善を認めず、2カ月前、当院入院となった。入院での精査中、「ACNES(anterior cutaneous nerve entrapment syndrome)」と診断された。しかし、内服の効果は認めず、神経ブロックも一時的な効果はあったものの翌日には疼痛が再燃し、学校生活に戻れる兆しはなかった。5日前、当院外科に院内紹介となった。
現症:左下腹部Th10のレベル、腹直筋外縁に再現性のある圧痛点を認めた。NRS(numerical rating scale)8。Carnett兆候陽性。圧痛点に対する1%リドカイン10mLを皮下注の後、10〜15分で疼痛は改善したが、2時間後には疼痛が再燃した。
治療:局所麻酔下に前皮枝神経切離を施行した。翌日のNRSは0-1に改善し、術後2日目に退院となった。鎮痛薬はすべて術後中止としたが、術後半年、疼痛の再燃を認めていない。
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