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文献詳細

雑誌文献

総合診療29巻7号

2019年07月発行

文献概要

特集 リウマチ・膠原病ミミック症例帖—“膠原病っぽくみえてしまう疾患たち”にだまされない! 【各論 膠原病っぽくみえてしまう疾患たち】

❹「パルボウイルス」を疑おう

著者: 押川英仁1

所属機関: 1熊本赤十字病院 リウマチ膠原病内科

ページ範囲:P.793 - P.797

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Case
リウマチ・膠原病ミミック症例
患者:47歳、女性
主訴:皮疹、関節痛
既往歴:片頭痛
現病歴:7日前から頸部や四肢に紅斑が出現し、手足のかゆみとむくみ、関節痛も出現したため、当院内科を受診。発熱や咳嗽、咽頭痛、胸膜痛、Raynaud現象、日光過敏なし。最近の海外渡航歴やワクチン歴なし。学童と接する機会はよくある。
身体所見:頸部と四肢に網目状の紅斑があり、手足の圧痕性浮腫と、両側MCP(中手指節間)関節および両手関節の圧痛・腫脹を認めた。頬部紅斑や硬口蓋アフタ、爪周囲紅斑、頸部リンパ節腫脹、胸部聴診異常などはなし。
検査所見:血球減少はなく、CRP軽度上昇以外は肝・腎機能正常で、尿蛋白陰性。急性の左右対称性多関節炎であり、「全身性エリテマトーデス(SLE)」や「関節リウマチ(RA)」の初発症状も考えられたが、特徴的な皮疹と学童との接触歴から「パルボウイルスB19感染症」が疑われ、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)頓服処方にて1週間後に皮疹は消退し、関節症状も改善、PVB19IgM抗体陽性により診断確定となり、フォロー終了となった。
 その後も手のこわばりは持続していたが、6カ月後から全身の疼痛が出現、3カ月で日常生活も困難となり当院受診。炎症反応や甲状腺機能は正常、抗核抗体(ANA)やリウマチ因子(RF)、抗CCP抗体は陰性であり、診察および関節エコー所見などから、最終的に「線維筋痛症」と診断。有酸素運動やストレッチなどのリハビリテーションとプレガバリン併用による治療により、1年かけて社会復帰した。

参考文献

1)Heegaard ED, et al : Human parvovirus B19. Clin Microbiol Rev 15(3) : 485-505, 2002. PMID 12097253
2)Young NS, et al : Parvovirus B19. N Engl J Med 350(6) : 586-597, 2004. PMID 14762186
3)Colmegna I, et al : Parvovirus B19 ; its role in chronic arthritis. Rheum Dis Clin North Am 35(1) : 95-110, 2009. PMID 19480999
4)Sève P, et al : Lupus-like presentation of parvovirus B19 infection. Semin Arthritis Rheum 34(4) : 642-648, 2004. PMID 15692957
5)Nesher G, et al : Parvovirus infection mimicking systemic lupus erythematosus. Semin Arthritis Rheum 24(5) : 297-303, 1995. PMID 7604297
6)Cooray M, et al : Parvovirus infection mimicking systemic lupus erythematosus. CMAJ 185(15) : 1342-1344, 2013. PMID 23979870

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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