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文献概要
特集 リウマチ・膠原病ミミック症例帖—“膠原病っぽくみえてしまう疾患たち”にだまされない! 【各論 膠原病っぽくみえてしまう疾患たち】
❺—見た目がすべて!—「顔が赤い」「皮疹がある」からその先へ
著者: 善家由香理1
所属機関: 1聖路加国際病院 皮膚科
ページ範囲:P.798 - P.802
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発熱+皮疹の「成人Still病」ミミック症例
患者:25歳、女性
主訴:発熱、肝機能障害、全身の皮疹
既往歴:うつ病
現病歴:うつ症状増悪のため、1カ月前からミルナシプラン、フルニトラゼパム、ベゲタミン®(クロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタール配合剤。2016年に販売中止)、スルピリド、ロラゼパムを内服開始。来院前日から、40℃台の発熱と顔面を含む全身に紅斑が出現し、「成人Still病」疑いで当科を紹介受診した。
身体所見:体温39.0℃。眼瞼結膜充血なし、口腔粘膜所見なし。頸部リンパ節腫脹あり。
皮膚所見:顔面全体はわずかに腫脹し、眼瞼周囲を避けるような暗赤色調の紅斑を認め(図1)、体幹・四肢には淡紅色の癒合する紅斑が多発している。
検査所見:血液;WBC11,000/μL(好酸球数4,510/μL)、CRP0.84mg/dL、BUN11.3mg/dL、Cre0.66mg/dL、LDH705IU/L、AST154IU/L、ALT139IU/L、γ-GTP270IU/L、フェリチン637ng/mL、HHV-6IgG160倍、HHV-6IgM10倍。腹部超音波;肝腫大、腹水あり。
治療:当初は成人Still病以外にも、感染に伴う中毒疹、薬疹などが疑われたが、特徴的な顔面の皮膚所見と薬剤歴、好酸球数高値、重篤な肝機能障害より「薬剤性過敏症症候群(DIHS)」を第一に考え、内服を中止し、水溶性プレドニゾロン40mg/日(1mg/kg/日)投与と全身にステロイド軟膏の外用を開始した。その後も発熱と紅斑の拡大を認めたが、入院10日後をピークに解熱し、好酸球数も正常化、肝機能障害も改善したため、プレドニゾロンを漸減し終了とした。
その後、サイトメガロウイルスIgG/IgMは陰性、EBウイルスは既感染パターンであったが、入院4週間後のHHV-6抗体価は2,560倍と入院時の4倍以上高値を示し、ヘルペスウイルスの再活性化と考えた。原因薬剤のパッチテストにてベゲタミン®のみ陽性であり、同薬剤を被疑薬とした「DIHS」と診断した。薬剤誘発性リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test:DLST)は希望されず施行できなかった。
発熱+皮疹の「成人Still病」ミミック症例
患者:25歳、女性
主訴:発熱、肝機能障害、全身の皮疹
既往歴:うつ病
現病歴:うつ症状増悪のため、1カ月前からミルナシプラン、フルニトラゼパム、ベゲタミン®(クロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタール配合剤。2016年に販売中止)、スルピリド、ロラゼパムを内服開始。来院前日から、40℃台の発熱と顔面を含む全身に紅斑が出現し、「成人Still病」疑いで当科を紹介受診した。
身体所見:体温39.0℃。眼瞼結膜充血なし、口腔粘膜所見なし。頸部リンパ節腫脹あり。
皮膚所見:顔面全体はわずかに腫脹し、眼瞼周囲を避けるような暗赤色調の紅斑を認め(図1)、体幹・四肢には淡紅色の癒合する紅斑が多発している。
検査所見:血液;WBC11,000/μL(好酸球数4,510/μL)、CRP0.84mg/dL、BUN11.3mg/dL、Cre0.66mg/dL、LDH705IU/L、AST154IU/L、ALT139IU/L、γ-GTP270IU/L、フェリチン637ng/mL、HHV-6IgG160倍、HHV-6IgM10倍。腹部超音波;肝腫大、腹水あり。
治療:当初は成人Still病以外にも、感染に伴う中毒疹、薬疹などが疑われたが、特徴的な顔面の皮膚所見と薬剤歴、好酸球数高値、重篤な肝機能障害より「薬剤性過敏症症候群(DIHS)」を第一に考え、内服を中止し、水溶性プレドニゾロン40mg/日(1mg/kg/日)投与と全身にステロイド軟膏の外用を開始した。その後も発熱と紅斑の拡大を認めたが、入院10日後をピークに解熱し、好酸球数も正常化、肝機能障害も改善したため、プレドニゾロンを漸減し終了とした。
その後、サイトメガロウイルスIgG/IgMは陰性、EBウイルスは既感染パターンであったが、入院4週間後のHHV-6抗体価は2,560倍と入院時の4倍以上高値を示し、ヘルペスウイルスの再活性化と考えた。原因薬剤のパッチテストにてベゲタミン®のみ陽性であり、同薬剤を被疑薬とした「DIHS」と診断した。薬剤誘発性リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test:DLST)は希望されず施行できなかった。
参考文献
1)Zander N, et al : Epidemiology and Dermatological Comorbidity of Seborrhoeic Dermatitis-Population-based Study in 161,000 Employees. Br J Dermatol doi: 10.1111/bjd.17826, 2019. PMID 30802934 〈脂漏性皮膚炎の最新の疫学調査〉
2)清島真理子:成人伝染性紅斑の症状と鑑別診断.日本医事新報4621 : 67-70, 2012. 〈成人伝染性紅斑の特徴〉
3)Kimura H, et al : The Association Between Documentation of Koplik Spots and Laboratory Diagnosis of Measles and Other Rash Diseases in a National Measles Surveillance Program in Japan. Front Microbiol 10 : 269, 2019. PMID 30833942 〈Koplik斑は麻疹以外でも出現するという日本の統計結果〉
4)浅井俊弥,他:Forchheimer's spots.皮膚病診療 36(suppl):25, 2014. 〈Forchheimer斑の所見の説明〉
5)Hiransuthikul A, et al : Drug-induced hypersensitivity syndrome/drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms (DIHS/DRESS) ; 11 years retrospective study in Thailand. Allergol Int 65(4) : 432-438, 2016. PMID 27134114 〈DIHSの疫学的特徴〉
6)藤山幹子,他:薬剤性過敏症症候群とHHV-6の再活性化について.ウイルス59(1) : 23-30, 2009. 〈DIHSとHHV-6との関連〉
7)岡崎秀規,他:薬剤性過敏症症候群(DIHS)の特徴的な顔面の所見とHHV-6再活性化との時間的関係.日本皮膚科学会雑誌 119(11) : 2187-2193, 2009.
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