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総合診療30巻11号

2020年11月発行

雑誌目次

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1312 - P.1313

 「エポニム(eponym)」とは、人名に因んで命名された言葉のことです。医学には多数のエポニムがありますが、それらは、現代医学をつくり上げてきた偉大な先達の存在を、私たちに物語っています。今に名を残すメディカル・エポニムは、その発見・開発者が、さまざまな臨床経験をもとに、思考錯誤を重ねたうえで発表し、それが轍となって、歴史の風化を受けずに、または受けながらも継承されてきたものです。
 本特集では、エポニムを「フィジカル(身体所見)」に絞って取り上げました。その身体所見あるいは身体診察の技術は、いかに発見・開発され、いかなる臨床的意義をもつものなのか? それを改めてひもとくことは、病変に的確に迫り、身体の内部やメカニズムを“想像しながら”身体所見をとるという、診察技術上達の核心に迫る助けとなるはずです。フィジカル・エポニムの歴史を通して、その医師の人生や情熱に触れることは、現代の私たちが実際に用いている診察技術に深みと愛情をも与えることでしょう。
 先達の知恵と情熱を受け継ぎ、検査に押されがちな身体診察の技術を保護する。本特集が、その一助となれば幸いです。次の世代への伝承(教育)にも、ぜひお役立てください。

—Austin Flint雑音—一例一例を丁寧に診察し、患者から学ぶ重要性を教えてくれる—心電図もX線写真もない時代に発見された心雑音

著者: 山崎直仁

ページ範囲:P.1314 - P.1317

 Austin Flint雑音は、「大動脈弁逆流症(aortic regurgitation : AR)」が存在する時に心尖部で聴取される、僧帽弁狭窄症(mitral stenosis : MS)様の拡張期の低調な雑音を指す(図11,2)・表1)。その名前は、米国の内科医Austin Flint(1812〜1886)に由来する。しかしFlint自身は、人名をつけて身体所見を表記することには、混乱をもたらすだけだと批判的であった。自身の名がAustin Flint雑音として後世の人々に記憶されていることを知ったら、Flintはどう感じただろうか?

—Babinski徴候—観察の奥にあるもの—たった28行の記念碑的論文

著者: 井口正寛

ページ範囲:P.1318 - P.1324

 Babinski徴候は、足底のやや外側を後ろから前にこすると、母趾が背屈する(原著では足趾が伸展する)徴候である(図11))。「錐体路障害」の存在を示唆する、最も名の知られた神経徴候と言っても過言ではない。フランスの神経学者Joseph Babinski(1857〜1932)が、後述する1896年のたった28行の論文2)で報告したことに端を発する。
 この徴候は、医学書のみならず、芸術作品にも多く登場する。「シュール」の語源でもあるシュルレアリスムの創始者André Breton(1896〜1966)は、若き日にBabinskiのもとで医学の勉強をしていた時期があり3)、代表的な著作『シュルレアリスム宣言』(1924)4)には、「私はかつて、足の裏の皮膚の反射作用の発見者が仕事をしているところを見た」という形でBabinski徴候が登場する。また、谷崎潤一郎(1886〜1965)の小説『鍵』(1956)5)にも、Babinski徴候の描写が複数回みられる。新生児では正常でもBabinski徴候が陽性となるが、Babinski徴候が報告される400年以上前の中世の絵画にはすでに、足底の刺激やBabinski徴候の変法のような刺激で母趾が背屈していることが数多く描かれている6,7)。新生児が描かれた絵画にこの徴候を探すことは、筆者の美術館巡りでの楽しみの1つである。

—Blumberg徴候—腹部フィジカル最大のコントロバーシー—同時代の“エポニム医師たち”も含めた考察

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1325 - P.1329

 Blumberg徴候は腹部の「反跳痛(rebound tenderness)」であり1)、「腹膜炎」が存在するケースの多くでみられる所見である(図12))。ユダヤ系ドイツ人医師Jacob Moritz Blumberg(1873〜1955)が1907年に考案した3)
 1908年にロシアのDmitri Sergeevich Shchetkin(1851〜1923)が、ほぼ同じ徴候について学会で発表した際に、10年前からこの手技を使っていたと述べていたという逸話1)があるが、その真偽は不明である。しかし、正式な論文発表として行われていなかったので、このエポニムのクレジットはBlumbergにあると考えられている。

—Frank徴候—寡黙にして雄弁な身体所見—No bedside, no research!

著者: 成田雅

ページ範囲:P.1330 - P.1334

 耳朶の皺(earlobe crease)は、耳珠(tragus)から耳朶の最下部を結ぶ対角線上に生じ(図11))、「diagonal earlobe crease(DELC)」とも称される。米国の呼吸器内科医Sanders T. Frank(1938〜1997)(表12,3))が1973年に、本所見と「心血管系疾患」のリスク因子との関連を示唆する報告3)を行ったことから、Frank徴候とも呼ばれる。

—Gowers徴候—奇妙な動きにも意味がある—「建築学」にも通じる奥の深い身体所見

著者: 田中太平

ページ範囲:P.1335 - P.1339

 William Richard Gowers(1845〜1915)は、英国の神経内科医である(表11〜4))。臨床神経学の祖とも言える人物で、神経学のバイブルとされる『A Manual of Diseases of the Nervous System』(2巻)2,4)を記した。仮性肥大型筋麻痺(Duchenne型筋ジストロフィー:DMD)についてロンドンのUniversity Collegeで行った講義が、1879年にLancetに4回に渡って連載され5)、その後、症例を追加して『Pseudo-Hypertrophic Muscular Paralysis;A Clinical Lecture』3)も刊行された。このなかではさまざまな重症度のDMDについて詳述されているが、DMDの児が立ち上がるまでの奇異な運動を疾患特異的として強調したため、「Gowers徴候」と呼ばれるようになった。

—Heberden結節—関節炎の分類の礎となった身体所見—英国の至極が“情熱あふれる臨床経験の積み重ね”のなかで気づいた

著者: 陶山恭博 ,   岸本暢将

ページ範囲:P.1340 - P.1346

 Heberden結節は、遠位指節間(distal interphalangeal:DIP)関節における「変形性手関節症」のサインだ(図11))。その名は、英国人の内科医William Heberden(1710〜1801)に由来する。彼はHeberden結節の発見や変形性関節症と痛風とを区別した功績などから“リウマチ学の父”と呼ばれ、英国リウマチ学会(The British Society for Rheumatology)は1936年発足の「The Heberden Society」に起源がある2)
 その活躍は「リウマチ学」に留まらない。日々丁寧に観察した実臨床の経験を、古代ギリシア時代から受け継がれた叡智とあわせ体系化することで、「内科学」の礎をも築いた。かのWilliam Osler(1849〜1919)をして“英国の至極(English Celsus)”と言わしめた人物である3)。もしかすると読者のなかには、「狭心症(angina pectoris)」を最初に命名したことによるエポニム「Heberden's asthma」をご存知の方もいるかもしれない(表14〜20))。

—Hill徴候—よく見て触って聴いて、疑って血圧を測定すること、それが一番大事

著者: 猪飼浩樹

ページ範囲:P.1347 - P.1352

 Hill徴候は、「大動脈弁閉鎖不全症/大動脈弁逆流症(aortic regurgitation:AR)」の身体所見の1つである(図11-4))。人名がつく身体所見(エポニム)をもつ疾患は数多く存在するが、なかでもARに関連するエポニムは数多く、よく知られている(表1)5)
 Hill徴候の名前の由来であるLeonard Hill(1866〜1952)は英国の生理学者であり、非常に多数の分野において研究を行った科学者である6)。研究の日々を彼と過ごした人物には著名な科学者が多く、John Macleod(1876〜1935)はインスリンの発見を業績にのちにノーベル生理学・医学賞を受賞した。

—Janeway病変—内科の基本に立ち返らせる—病理医がベッドサイドで見つけた「末梢」の身体所見

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1353 - P.1357

 Janeway病変は、Osler結節と並んで知られる「感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)」のサインである(図11-4)・表1)。その名の由来は、米国の内科医・病理医のEdward Gamaliel Janeway(1841〜1911)だ。Janewayは、William Osler(1849〜1911)らと「Association of American Physicians(AAP)」(米国医師協会)を創立した人でもある。Johns Hopkins大学の初代病理学教授で、Janewayの弟子だったWilliam Welch(1850〜1934)は、「彼の名は、この国における医学の歴史で最も記憶されるべきである」と回顧する5)

—Kehr徴候—由来が謎だった身体所見——先人の知恵の伝承を追った軌跡—philology(文献学)が問題を解決する

著者: 清田雅智

ページ範囲:P.1358 - P.1364

 Kehr徴候は、「脾破裂」の際に左横隔膜部を刺激する結果、左肩に放散痛(あるいは知覚過敏)が起こるというメディカル・エポニムである。ドイツの胆道外科医Hans Kehr(1862〜1916)に由来するが、日本ではほぼ知られていない臨床徴候であろう。その起源を探った独語文献1)を英訳して読むと、実はKehr自身は脾破裂の症例報告をしておらず、彼がメディカル・エポニムになっているのは“mystery of medical history”とされている1)。しかし今回、Kehr徴候の起源と思われる文献を発見したため、この場を借りて併せて報告したい。

—Murphy徴候—世紀の天才外科医が伝えた至高のフィジカル—胆囊を臥位で診察するなかれ

著者: 丸山尊 ,   上田剛士

ページ範囲:P.1365 - P.1369

 Murphy徴候は、「胆石症」「胆囊炎」の身体所見である(図11,2)・表13))。その名は、米国生まれの外科医John Benjamin Murphy(1857〜1916)に由来している。彼の外科医としての活躍は幅広く、連続して診療した300症例の内訳は一般外科55%、整形外科22%、婦人科10%、泌尿器科7%、脳神経外科5%、その他1%であった4)。Murphyは、米・Mayo clinic創設者の1人であるWilliam James Mayo(1861〜1939)をして、「彼らの世代の天才外科医」と評されていた4)。と同時に彼は、優れた「臨床教育者」でもあった。

—Trousseau徴候—指導者を盲目的に信じてはならない—自身も悩んだTrousseau徴候と悪性腫瘍

著者: 平島修

ページ範囲:P.1370 - P.1374

Case
高度貧血患者の呼吸困難の原因が高拍出性心不全ではなく肺塞栓症であった一例
患者:通院歴のない63歳・女性
現病歴:受診1カ月前頃から、階段昇降で動悸・息切れを感じていた。2週間前から、息切れの悪化と食欲不振があり、当院を受診した。安静時心拍数102回/分、SpO2 95%(室内気)、頸静脈圧の上昇、胸部右背面に水泡音、両下腿浮腫を認めた。血液検査でHb 7.7g/dL、MCV 51fLの鉄欠乏性貧血、胸部X線で心拡大を伴う両下肺のすりガラス陰影を認め、貧血に伴う「高拍出性心不全」を疑い、貧血精査および輸血を含めた心不全治療を開始した。
 翌日、上部消化管内視鏡で、胃角部に2型(潰瘍限局型)進行胃癌を認めた。入院5日後(輸血5日後)になっても呼吸困難の改善は乏しく、患者は左大腿から下腿裏面にかけて発赤に沿った圧痛を伴う疼痛を訴えた(図11,2))。下肢静脈エコーを行ったところ、大腿静脈全体に血栓を認め、追加精査で呼吸困難の原因は「肺塞栓症」であることが判明した。
 Trousseau徴候には2つある3)。Trousseau徴候というと低カルシウム血症に関連した潜在性テタニー徴候を思い起こす方も多いかもしれないが、本稿では「悪性腫瘍」に伴う血栓症による表在性静脈炎「Trousseau's sign of malignancy」について述べる(その理由は最後に明らかにする)。
 その名に冠されるフランスの内科医Armand Trousseau(1801〜1867)は、この2つのTrousseau徴候以外にも、多岐にわたる分野で医学の発展に貢献した(表1)4)。解明されていない多くの病気を診て、その原因から治療法までを患者とともに発見した、現代医学をつくった先駆者である(表2)4)

—Valsalva手技—検査では見えないものを診る—現在も研究され続ける驚異の身体所見

著者: 原田侑典

ページ範囲:P.1375 - P.1379

 Valsalva手技は、口と鼻を閉じて強制呼気を行う、いわゆる「息こらえ」を指し、その際に認められる血圧および心拍数の変化から、「自律神経障害」を検出できる(図11,2)・表1)。
 その名の由来は、イタリアの解剖学者で外科医のAntonio Maria Valsalva(1666〜1723)である。Valsalvaは、ローマ教皇から侍医になるよう依頼されるほど臨床医として優れていただけでなく3)、解剖学者として優れた業績を残している。なかでも最大の業績は、耳を外耳・中耳・内耳の3つに分類するなど、耳の解剖・生理・病理についての知識を大幅に進展させた『De Aure Humana Tractatus』4)の出版であり、Valsalva手技も本書に記述されている。Valsalvaの弟子であったGiovanni Battista Morgagni(1682〜1771)は、「当時、彼を超える者はおらず、匹敵する者すらほとんどいなかった」と回顧する5)

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題

ページ範囲:P.1380 - P.1380

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

Editorial

エポニムの臨床的・教育的・特典的効果

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1301 - P.1301

 エポニム(eponym)は、ギリシャ語の「epi(後)+onoma(名前)」に由来しており、主に人(発見者など)の名前に因んで二次的に命名された言葉とされる。医学分野のエポニムをmedical eponymsというが、この場合、身体所見や症状(徴候)または疾患に、それを発見した医師の名がつくことが多い。
 現代の医師がエポニムに出会うのは、教科書だったり、目前の診療を通した文献検索の過程だったりする。そうして実践においてその技や名称に慣れていくなかで、エポニムを現場の「コミュニケーション」を円滑にする“記号”として用いるとともに、技術や知識習得の「メルクマール」とすることもできる。そして、エポニムに付随する“特典的”効果として、副次的に現代医学をつくり上げてきたレジェンドたちに出会い、その技や思考の奥深さに触れ、医学の面白さや情熱を感じることができる。

What's your diagnosis?[215]

冷凍豆腐

著者: 小泉直史 ,   風間亮 ,   妻鹿旭 ,   小川吉彦 ,   浅川麻里 ,   北村大 ,   浜田禅

ページ範囲:P.1305 - P.1309

患者:51歳、女性、主婦
主訴:しびれ
現病歴:1型糖尿病で当院糖尿病内科通院中の患者。入院47日前、入浴時に左大腿部前面に掌大の範囲のピリピリとしたしびれを自覚し、それが徐々に上向し鼠径部や腹囲にも自覚するようになった。入院37日前より、左手先にもしびれが出現してコップを落とすようになった。また右腹部から背部にかけて同様のしびれが出現し、右下肢へ拡大した。さらに胸郭が締めつけられる感覚も出現した。入院14日前から歩行困難を自覚し増悪したため、当科入院となった
ROS陽性所見:しびれ、歩行困難、全身倦怠感、食欲不振
ROS陰性所見:発熱、盗汗、体重減少、呼吸困難、咳嗽、喀痰、咽頭痛、嚥下困難、下痢、便秘、嘔気、嘔吐、視力低下、筋肉痛、頭痛、ドライアイ、ドライマウス、排尿時痛、残尿感、関節痛、日光過敏
既往症:19歳時 頭蓋骨骨折、30歳時 全身蕁麻疹様皮疹、50歳時 糖尿病性ケトアシドーシスで入院
併存症:1型糖尿病、脂質異常症
常用薬:ロスバスタチン2.5mg、インスリンアスパルト、インスリンデグルデク
喫煙・飲酒歴:なし
家族歴:妹がSLE(全身性エリテマトーデス)、ITP(免疫性血小板減少症)、甲状線機能亢進症、大腿骨頭壊死、ステロイド糖尿病

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・47

3度目の正直—検査2回陰性後も発熱が続く濃厚接触者

著者: 佐東征記 ,   松平綾 ,   川妻由和 ,   徳田安春

ページ範囲:P.1383 - P.1387

CASE
患者:63歳、男性。
主訴:発熱。
現病歴:当科受診14日前に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)確定患者と接触。5日前より38.2℃の発熱が出現した。4日前に保健所に相談、濃厚接触者として指定医療機関で鼻咽頭スワブによる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)遺伝子検査(PCR)が実施され、結果は陰性であった。3日前より乾性咳嗽、軽度頭痛、筋肉痛、下痢などの症状が出現した。下痢は1日で消失したがその他の症状が持続していたため、受診前日に2度目のPCR検査が実施され、結果は陰性であった。本日も症状が持続しているため当院救急外来を受診した。
既往歴:特記すべき既往歴なし。
内服薬:なし。
生活歴:喫煙歴:なし。飲酒:缶ビール1本/日。
アレルギー歴:食物なし。薬剤なし。

素人漢方のススメ|感染症編・11

—第5章│漢方による感染防御—漢方の感染症を予防する力

著者: 鍋島茂樹

ページ範囲:P.1389 - P.1391

 はっきりしたエビデンスは少ないのですが、漢方には生体防御力を増強し、感染症を予防する力があります。本章では、自験例と過去の報告を紹介しながら漢方の感染防御力について概説したいと思います。

“JOY”of the World!|ロールモデル百花繚乱・11

我れbacteriumとならん

著者: 矢野晴美

ページ範囲:P.1392 - P.1395

 感染症の診療と教育が大好きだ。微生物がどんな症状を引き起こすのか、そのメカニズムや病態生理は非常に興味深い。患者の症状から、体系的な鑑別診断を行う時、感染症を考える場合、必ず微生物を想定する。各微生物が、どのような症状を、どのようなメカニズムで起こすのか。どのようなリスクがある患者に、どのくらいの頻度で、どのような症状が起こりうるのか。そのような知識を駆使し、臨床推論する過程に、最も学術的な魅力を感じている。
 私は、2005年に帰国するまで、主に米国で学んできた(表1)。帰国後は、自分自身も第一線で臨床業務に取り組みつつ、若手に伴走しながら、感染症科専門医の育成に情熱をかけている。“あらゆる臓器のあらゆる微生物による感染症”に一定以上のレベルで対応できる医師を養成していきたい。

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・8

アフリカの病室を歩きながら

著者: 中山久仁子

ページ範囲:P.1397 - P.1397

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

“コミュ力”増強!「医療文書」書きカタログ・6

—検査の価値を共創する!—画像検査オーダー時の“愛され依頼コメント”の書き方

著者: 天野雅之

ページ範囲:P.1406 - P.1410

今月の文書
検査オーダー時のコメント欄
セッティング:病院外来主治医→院内検査部への依頼。
患者:大腸癌の55歳・男性。消化器外科を紹介受診する前に、胸部造影CTと腹部超音波をオーダーすることになった。
【登場人物】
桜井:臨床研修医2年目。外来研修中。
飛鳥:総合診療医。桜井の指導医。
江高:超音波担当の検査技師。
蓮斗:読影担当の放射線科医。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・8

若白髪はなぜ起こるの?

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.1411 - P.1415

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはないですが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

総合診療専門医セルフトレーニング問題・29【最終回】

学校を休むようになった女子小学生

著者: 喜瀬守人

ページ範囲:P.1416 - P.1419

セッティング
郊外のファミリークリニック(無床)。外来と訪問診療を行っており、乳幼児から高齢者まで幅広く診療している。車で20分ほどの市街中心地に400床規模の総合病院があり、救急や各専門科の対応が必要と判断した場合は紹介している。

【臨床小説】後悔しない医者|あの日できなかった決断・第8話

裏がある医者

著者: 國松淳和

ページ範囲:P.1424 - P.1429

前回までのあらすじ 今月のナゾ
 精神科医・仁科渉が、医学生時代の後輩・筧のつてを頼って、黒野のもとへ難しい患者の相談に訪れた。37歳女性、主訴は慢性骨盤痛をはじめとする「全身痛」で、不眠や動悸、胸の締めつけ感、微熱といった多岐にわたる「自律神経症状」も抱えていた。しかし、器質的な疾患は見つからない。黒野の意見もまた同様だった。しかし黒野は、その「症例」そのものとは別の“何か”に、急に心配が募り始める…!黒野が感じた、その“何か”とは? 黒野には、いったい何がみえたのか…。
 全身痛や不定愁訴の形をとりうる「身体疾患」の鑑別の重要性を、前回の臨床解説では述べた。では、それらが除外されれば、不定愁訴として経過観察・対症療法に努めればよいのだろうか? 患者は、自身の症状・苦痛をすべて言葉にできるとは限らない…。

投稿 GM Report

佐賀大学医学部附属病院総合診療部での定期的な専門研修の振り返り

著者: 多胡雅毅 ,   藤原元嗣 ,   相原秀俊 ,   徳島圭宜 ,   香月尚子 ,   山下秀一 ,   大串昭彦 ,   杉岡隆

ページ範囲:P.1420 - P.1423

 佐賀大学医学部附属病院総合診療部(当科)の専攻医は大学病院と市中関連病院(2つの公立病院と1つの急性期2次病院)を数年ごとに異動し、さまざまな病院で実践を積む。我々の総合診療医教育の理念は、派遣先の指導医と大学に所属する総合診療医が協力して総合診療医教育を行うことである。派遣された専攻医は、その理念と総合診療専門医プログラム整備基準1)のWorkplace-based assessment、Case-based discussion、メンタリングシステムの構築に関する記載に基づき、当科から派遣された常勤指導医と、当科と地域医療支援学講座の助教以上の教員より教育を受ける。教員の訪問は週1〜2回行い、診療指導に加え研究・論文執筆・学会発表などの学術指導、メンタリングなどの質の高い指導を提供する。専攻医に対する調査では、後期研修・指導医・訪問指導への満足度は高く、一定の効果が見られた2)
 さて、当科ではこれらの基本的な取り組みに加えて、大学に定期的に専攻医および指導医を召集し、個々の専攻医の研修内容を発表させる形での振り返り(専攻医振り返り)を開催している。

#総合診療

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.1399 - P.1403

#医学書院の新刊

ページ範囲:P.1404 - P.1404

#書評:—すぐ・よく・わかる—急性腹症のトリセツ

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1405 - P.1405

 Copeをはじめ、あまたある腹痛の書籍における本書の位置づけは何か? 「すぐ・よく・わかる」「急性腹症」のタイトルにあるように、腹痛の名著Cope『Early Diagnosis of Acute Abdomen』を今時に“超訳”(本書「はじめに」より)された本と言えば、本書の伝えたいメッセージは明確ではないだろうか。Copeの名著は病歴聴取・身体診察の腹痛の標準テキストとして長らく有名であり、評者も学生時代愛読したが、その輝きは10数年たった今でも衰えず、「腹痛の本で何を読むべきか」という質問に対する推薦3冊のうちに必ず入る本である。研修医教育などのリファレンスは、結局Cope先生の本に戻ることが多い。
 その一方、Copeが比較的難解であるという欠点(?)は、本書でも指摘されるとおりである。本書は、その欠点を補いつつ、さらに日本の現場感覚を反映した、まさに日本の読者のための“和製Cope”と言えるつくりの本である。

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目次

ページ範囲:P.1302 - P.1303

『総合診療』編集方針

ページ範囲:P.1311 - P.1311

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。
2018年1月  『総合診療』編集委員会

読者アンケート

ページ範囲:P.1431 - P.1431

『総合診療』バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1432 - P.1433

お得な年間購読のご案内

ページ範囲:P.1433 - P.1434

次号予告

ページ範囲:P.1435 - P.1436

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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バックナンバー

33巻12号(2023年12月発行)

特集 海の外へ渡る航行者を診る—アウトバウンドにまつわるetc.

33巻11号(2023年11月発行)

特集 —続・総合診療外来に“実装”したい—最新エビデンスMy Best 3

33巻10号(2023年10月発行)

特集 ○×クイズ110問!日常診療アップグレード—Choosing WiselyとHigh Value Careを学ぼう

33巻9号(2023年9月発行)

特集 ジェネラリストのための「発達障害(神経発達症)」入門

33巻8号(2023年8月発行)

特集 都市のプライマリ・ケア—「見えにくい」を「見えやすく」

33巻7号(2023年7月発行)

特集 “消去法”で考え直す「抗菌薬選択」のセオリー—広域に考え、狭域に始める

33巻6号(2023年6月発行)

特集 知っておくべき!モノクロな薬たち(注:モノクローナル抗体の話ですよ〜)

33巻5号(2023年5月発行)

特集 —疾患別“イルネススクリプト”で学ぶ—「腹痛診療」を磨き上げる22症例

33巻4号(2023年4月発行)

特集 救急対応ドリル—外来から在宅までの60問!

33巻3号(2023年3月発行)

特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで

33巻2号(2023年2月発行)

特集 しびれQ&A—ビビッとシビれるクリニカルパール付き!

33巻1号(2023年1月発行)

特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え

32巻12号(2022年12月発行)

特集 レクチャーの達人—とっておきの生ライブ付き!

32巻11号(2022年11月発行)

特集 不定愁訴にしない“MUS”診療—病態からマネジメントまで

32巻10号(2022年10月発行)

特集 日常診療に潜む「処方カスケード」—その症状、薬のせいではないですか?

32巻9号(2022年9月発行)

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32巻8号(2022年8月発行)

特集 こんなところも!“ちょいあて”エコー—POCUSお役立ちTips!

32巻7号(2022年7月発行)

特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座

32巻6号(2022年6月発行)

特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス—My Best 3

32巻5号(2022年5月発行)

特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況

32巻4号(2022年4月発行)

特集 えっ、これも!? 知っておきたい! 意外なアレルギー疾患

32巻3号(2022年3月発行)

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32巻2号(2022年2月発行)

特集 —withコロナ—かぜ診療の心得アップデート

32巻1号(2022年1月発行)

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31巻12号(2021年12月発行)

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31巻11号(2021年11月発行)

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31巻2号(2021年2月発行)

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30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

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30巻9号(2020年9月発行)

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30巻4号(2020年4月発行)

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