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特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考
—Valsalva手技—検査では見えないものを診る—現在も研究され続ける驚異の身体所見
著者: 原田侑典1
所属機関: 1獨協医科大学病院 総合診療科
ページ範囲:P.1375 - P.1379
文献購入ページに移動 Valsalva手技は、口と鼻を閉じて強制呼気を行う、いわゆる「息こらえ」を指し、その際に認められる血圧および心拍数の変化から、「自律神経障害」を検出できる(図11,2)・表1)。
その名の由来は、イタリアの解剖学者で外科医のAntonio Maria Valsalva(1666〜1723)である。Valsalvaは、ローマ教皇から侍医になるよう依頼されるほど臨床医として優れていただけでなく3)、解剖学者として優れた業績を残している。なかでも最大の業績は、耳を外耳・中耳・内耳の3つに分類するなど、耳の解剖・生理・病理についての知識を大幅に進展させた『De Aure Humana Tractatus』4)の出版であり、Valsalva手技も本書に記述されている。Valsalvaの弟子であったGiovanni Battista Morgagni(1682〜1771)は、「当時、彼を超える者はおらず、匹敵する者すらほとんどいなかった」と回顧する5)。
その名の由来は、イタリアの解剖学者で外科医のAntonio Maria Valsalva(1666〜1723)である。Valsalvaは、ローマ教皇から侍医になるよう依頼されるほど臨床医として優れていただけでなく3)、解剖学者として優れた業績を残している。なかでも最大の業績は、耳を外耳・中耳・内耳の3つに分類するなど、耳の解剖・生理・病理についての知識を大幅に進展させた『De Aure Humana Tractatus』4)の出版であり、Valsalva手技も本書に記述されている。Valsalvaの弟子であったGiovanni Battista Morgagni(1682〜1771)は、「当時、彼を超える者はおらず、匹敵する者すらほとんどいなかった」と回顧する5)。
参考文献
1)Vogel ER, et al : Blood pressure recovery from Valsalva maneuver in patients with autonomic failure. Neurology 65(10) : 1533-1537, 2005. PMID 16301478 〈自律神経障害でのValsalva手技に伴う血圧回復時間に焦点を当てた研究〉
2)Kim HA, et al : Autonomic dysfunction in patients with orthostatic dizziness ; validation of orthostatic grading scale and comparison of Valsalva maneuver and head-up tilt testing results. J Neurol Sci 325(1-2) : 61-66, 2013. PMID 23294495 〈自律神経障害に関するValsalva手技の研究では珍しく、定性的評価についての記述がある〉
3)Jacobs N, et al : The life and work of Antonio Maria Valsalva(1666-1723)—Popping ears and tingling tongues. J Intensive Care Soc 19(2) : 161-163, 2018. PMID 29796074 https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1751143717731229 〈精神疾患に対するValsalvaの取り組みやMorgagniとの関係がよく描写されている〉
4)Valsalva AM : De Aure Humana Tractatus. Pisarius, Bologna, 1704.
5)Fransson SG, et al : Antonio Maria Valsalva. Clin Cardiol 26(2) : 102-103, 2003. PMID 12625601 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/clc.4960260211 〈Valsalvaがいかに誠実な人間だったか、どれほど科学に没頭したかが書かれている〉
6)Fughelli P, et al : Antonio Maria Valsalva(1666-1723). Circ Res 124(12) : 1704-1706, 2019. PMID 31170038 https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCRESAHA.119.315048 〈Valsalvaが遺した業績について分野ごとに詳述されている〉
7)Antonio Maria Valsalva(1666-1723), Valsalva maneuver. JAMA 211(4) : 655, 1970. PMID 4902914 〈Valsalvaが実験生理学にも関心を強くもっていたことなどについての記述がある〉
8)Rollett A:Physiologie des Blutes und der Blutbewegung. In Hermann L(ed) : Handbuch der Physiologie, Vol. 4. Part 1. pp 3-340, F. C. W. Vogel, Leipzig, 1880.
9)Derbes VJ, et al : Valsalva's maneuver and Weber's experiment. N Engl J Med 253(19) : 822-823, 1955. PMID 13266051 〈Valsalva手技の歴史に関するよくある誤解について、わかりやすく解説されている〉
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