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雑誌目次

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総合診療30巻3号

2020年03月発行

雑誌目次

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

フリーアクセス

著者: 笠井正志 ,   児玉和彦 ,   鉄原健一

ページ範囲:P.272 - P.273

総合診療医と小児科医は、同じ患者を違うレンズで診ている——。
本特集では、小児科医からの視点を、特に“ピットフォール”になりうる部分に的を絞ってお届けします。
「小児は成人と、どこまで同じでどこから違うのか?」「コモンディジーズを、より高いレベルで診るにはどうすれば?」「ほとんどはコモンだが、そのなかに潜むmust rule outにどう気づく?」「どこから小児科医に相談する?」など、違うレンズから見える景色もぜひ見ていただき、少しでも総合診療の先生方のお役に立てれば幸いです。
「総合診療医」と「小児科医」が違う視点から互いに学び合うことで、こどもとその家族の“HAPPY”にコミットすることを目指します。

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題

ページ範囲:P.338 - P.339

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【座談会】

❶小児は特殊か!?—総合診療医がこどもを診る時の“アカン”と“強み”

著者: 茂木恒俊 ,   笠井正志 ,   児玉和彦 ,   鉄原健一

ページ範囲:P.274 - P.283

 「小児は特殊だ…」「だから苦手だ…」「ハードルが高い…」と思っていませんか?あるいは、「こどもはだいたい風邪だし…」と思っていないでしょうか?“おとな”は一定以上に診られるのに、“こども”だとそうはいかないのは、なぜなのでしょう?
 もちろん、成人と小児は違います。でも、「内科学」という“OS”は同じです。では、総合診療医として鍛え上げたOSを駆使し、小児科医と連携しつつ、こどもを自信をもって診られるようになるためには? 総合診療医としてもつべき「判断」の軸とその学び方、総合診療医ならではの強みも示されました。総合診療医としてこどもを診るなら、これは読まなきゃアカンで!? 読めば、明日から小児診療を学びたくなる、こどもを診たくなるかもしれません。(編集室)

【各論】

—❷Common is commonでしょ!—こどもの「風邪」を診断するには?

著者: 伊原崇晃

ページ範囲:P.284 - P.289

Case
これは風邪でしょうか?
患者:1歳2カ月、女児
家族歴・既往歴:特記事項なし
現病歴:3日前から、鼻汁と咳嗽、37.8℃の発熱を認めていた。解熱傾向であるが、鼻汁・咳嗽が悪化してきたため、肺炎などを合併していないかと心配して来院。消化器症状なし。バイタルサインは、体温37.2℃、脈拍数170回/分、呼吸数30回/分。全身状態は良く、呼吸努力・循環不全の生理学的徴候なし。
 バイタルサイン測定時に啼泣があったとのこと。診察室の環境に慣れた状態で再度評価したところ、脈拍数120回/分であった。全身の身体診察では、咽頭と鼻粘膜に軽度の充血を認めるのみ。「風邪」として帰宅、自宅での経過観察を指示。再受診の目安(p.289)を説明した。

—❸風邪に“風邪薬”はアカンで!!—こどもの感冒への「薬」の処方

著者: 笠井正志

ページ範囲:P.290 - P.294

Case
患者:10カ月、男児
主訴:鼻汁、咳
病歴:2日前からの鼻汁と軽度の咳嗽を主訴に近医を受診。「感冒」と診断され、下記を処方されたが、「これだけたくさんの薬剤を飲んでも大丈夫か」と不安になり、休日夜間急患センターを受診した。
処方:シプロヘプタジン(ペリアクチン®)、デキストロメトルファン(メジコン®)、L-カルボシステイン(ムコダイン®)、アンブロキソール(ムコソルバン®)、クラリスロマイシン(クラリス®)、耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR®)、ツロブテロール(ホクナリン®テープ)、アセトアミノフェン坐剤(発熱時)

—❹commonにみえるuncommon—治療に優先する「鑑別診断」

著者: 加藤正吾

ページ範囲:P.295 - P.298

Case
「発熱のみ」を主訴に受診した急性腎盂腎炎の一例
患者:0歳4カ月、男児
主訴:3時間前からの発熱
現病歴:顔色は良好、肺音・心音・腹部所見に特記事項なし。既往歴はなく、初めての発熱とのこと。3歳の兄が数日前から咳をしているが、熱はない。予防接種も、月齢どおりに接種できていた。
 受診時の血液検査ではWBC 12,000/μL(Nt 85%)・CRP 0.7mg/dL。尿検査は行われず、全身状態が良好であったため、解熱薬を処方して帰宅させた。
 翌日の再診でWBC 21,000/μL(Nt 70%)・CRP 5.8mg/dL、尿検査で白血球の貪食を伴うGram陰性桿菌を認め、「急性腎盂腎炎」の診断となり、小児科に入院となった。その後、左の「膀胱尿管逆流」が発覚し、現在は小児腎臓専門医によって経過観察されている。

—❺Vital is vital !—「バイタルサイン」をあきらめないで

著者: 上村克徳

ページ範囲:P.299 - P.303

Case
ウイルス性胃腸炎により「体液量減少(脱水症)」を呈した一例
患者:8カ月、男児。病前体重不詳。
既往歴・家族歴:特記事項なし
現病歴:3日前から黄白色水様下痢が出現し、徐々に増悪した。受診前日に、オムツからはみ出るような水様便が1日6回みられた。ぐったり感が強く顔色が蒼白となり、経口摂取困難となったため、救急外来を受診した。
 不機嫌であやしても泣きやまず、流涙は欠如。体温37.2℃、呼吸数60回/分、脈拍数188回/分、血圧72/50mmHg、SpO2 99%(室内気)。末梢の冷感が強く、毛細血管再充満時間(CRT)3秒。口唇・口腔粘膜は乾燥している。「重度脱水症」と判断し、細胞外液製剤による経静脈輸液を実施する方針とした。

—❻昼か夜/休日かで大違い!?—「けいれん」への救急対応の心得

著者: 染谷真紀

ページ範囲:P.304 - P.309

Case
「けいれんが止まらない」「意識障害がよくならない」時は
患者:1歳2カ月、女児
既往歴:特になし
家族歴:3歳の兄に熱性けいれんあり
現病歴:5日前から咳・鼻汁、2日前から発熱を認めたため、近医を受診し「上気道感染症」と診断され対症療法となっていた。その後も熱は続き、徐々に活気が乏しくなり、食欲も低下していたが、水分は摂取していた。自宅で寝ている際に、全身性強直間代けいれんが突然出現し、救急搬送された。
 来院時、けいれんが持続していたためミダゾラムを静注するもけいれんは持続し、再度ミダゾラムを投与したが止痙は得られなかった。迅速血糖検査で30mg/dLと低値であったため、ブドウ糖の投与を行ったところ止痙を得た。

—❼頭を打った!—「頭部外傷」はフローチャートに従うだけでいいの!?

著者: 鉄原健一

ページ範囲:P.310 - P.314

Case
フローチャートに従ったのに見逃し!?
患者:1歳2カ月、男児
現病歴:ある日の昼、ファミリーレストランで椅子(高さ約70cm)の上に立ち上がり、うしろから転落し、受傷1時間後に外来を受診した。受傷直後に啼泣したが、10分くらい泣いたあとは、家族から見ていつもと変わりはなく、嘔吐もなかった。診察したところ、頭頂部に発赤はあったが、皮下血腫はなかった。PECARNルールで低リスクのため、「頭部CTは要りません!」と帰宅させた。
 翌日、頭頂部の発赤の部分が皮下血腫になり、別の救急外来を受診した。頭部CTを撮影され、「頭頂骨骨折」が見つかり入院となった。「これって見逃しじゃないんですか!?」と、家族からお怒りの電話をいただいた。

—❽脱!「様子をみましょう」—こどもの「健診」、基本の㋖

著者: 中村裕子

ページ範囲:P.315 - P.319

Case1
患者:4カ月20日、男児
現病歴:生後1カ月時、啼泣時の顔色不良あり。医療機関を受診したが、特に異常の指摘はなかった。生後3カ月までは体重増加は良好だった、3〜4カ月児健診で体重増加不良の指摘があり、「様子をみましょう」と言われた(図1)。
 受診の1週間前から、哺乳時の不機嫌と苦悶様の表情がみられるようになった。活気不良のため、近医小児科を受診。受診時に心肺停止となり、同日に死亡。病理解剖にて「左冠動脈肺動脈起始症」による心不全と診断された。

—❾“困った家族”に困ってないで!—プライマリ・ケア医だからできる「発達障害」の支援

著者: 中川元

ページ範囲:P.320 - P.323

Case
患者:5歳、男児
現病歴:こども園入園後より、1人遊びが多く、図鑑を暗記して過ごし孤立していた。かんしゃくがひどく、友人トラブルが絶えない状態である。眠りが浅く夜泣きがあり、母も寝不足で疲弊している。
 父は医師、母は看護師。父方の祖父母が近くに住んでいるが、発達障害への理解が乏しく支援に拒否的である。母は、こどもの発達障害に気づきながらも、父の反対がありどこにも相談できず悩んでいる。

—❿こんな時は診たらアカンで!?—小児科への「紹介基準」

著者: 児玉和彦

ページ範囲:P.324 - P.329

Case
紹介する?しない?
❶「臀部をアイロンでやけどした」と乳児が受診した。
❷「ボタン電池を飲み込んだ」と乳児が受診したが、自施設ではX線撮影ができない。
❸普段は小児診療をしていないが、「ついでにこどもの発熱も診てください」とお願いされた。
❹幼児の高熱が4日続き、結膜炎があり、リンパ節が腫れている気がする。アデノウイルス迅速検査は陰性だったが、偽陰性ではないかと思っている。
❺風邪で受診した1歳半のこどもが歩行できないことを、親から相談された。
❻嘔吐を主訴に受診した幼児の親が「なんか変だと思うので、小児科に紹介してください」と言っている。
❼こどもの脱水症で点滴治療が必要である。土曜日診療で、現在正午である。

—⓫“こども”を学び続けよう!—「生涯学習」のススメ

著者: 茂木恒俊

ページ範囲:P.330 - P.333

 わが国の小児医療、特に小児一次救急医療は、小児科医だけではなく、救急医や内科医、外科医、家庭医など、いわゆる“非小児科医”(以下、総合診療医)によって相当な部分が支えられているという現状がある。「小児医療は小児科医が担うべき」という原則論がある一方で、小児科医が少ない地域では、小児科医だけでは小児医療のすべてを担えないというのも現実だ。小児科医と総合診療医が共に協働して、「地域のこどもの健康を守る」という共通の目標のもと連携することが求められている。

【付録】

—これだけは読まなアカンで!?—こども診療の本棚

著者: 児玉和彦

ページ範囲:P.334 - P.336

小児診療には不断の学習が必要です。
プライマリ・ケア医がこどもを診る時の助けになってくれる参考図書・資料を集めました。

Editorial

こどもたちの未来のために フリーアクセス

著者: 笠井正志 ,   児玉和彦 ,   鉄原健一

ページ範囲:P.265 - P.265

 「日本小児科学会は、小児科学に関する研究と小児医療との進歩、発展をはかる」(日本小児科学会ホームページより)。小児の「科学」を探求することが、こどもたちのために重要であることは言うまでもない。しかし、小児医療を進歩・発展させるのは、(動物)実験や高度な検査機器、RCTなどの統計学の世界だけではなく、「現場」にもある。
 詳細な病歴聴取、再現可能な身体診察から得た仮説・推論を行い、常に誤りを探求する。このような現場目線で「小児科」を「学」ぶことも、小児科の魅力であるのではないかとずっと考えてきた(そうしたら“HAPPY”〔p.275〕に出会った)。患者・保護者から聴くこと、手で触れること、患者と交流すること、そこを目指す最高の臨床医(小児科医だけではなく家庭医・総合診療医も)、彼らを目指す若手医師などの共通の目的をもつ人たちの組織(≒学会)もあってもよいかもしれない。それが、本特集の著者たちであり、想定読者である。「新日本小児科学会」の幕開けとなるエポックを画する1冊となった(かもです)。(笠井)

ゲストライブ〜Improvisation〜・12

慢性疾患をもつ小児患者の、成人移行支援の現状と未来のビジョン

著者: 植田育也 ,   窪田満 ,   藤沼康樹 ,   徳田安春

ページ範囲:P.341 - P.350

 医療の進歩により、これまで助けられなかったこどもの命を救えるようになった一方で、慢性疾患をもって成人年齢に達する小児患者数は確実に増えてきた。
 本座談会では、小児患者が慢性疾患をもって成年になった時にその受け皿がないという、実はあまり知られていない苦しい現状について、小児医療サイドからリアルに示していただくと共に、小児医療サイドと総合診療サイド、それぞれの立場でどう協力すれば成人移行をうまく支援できるのか、その解決策も含めた具体的な未来のビジョンを共に語り合っていただいた。(編集室)

What's your diagnosis?[207]

三重奏を自動演奏したらタイミングがズレやすい

著者: 北村亮 ,   上田剛士

ページ範囲:P.268 - P.271

病歴
患者:83歳、女性
主訴:背部痛
現病歴:来院当日、夫と花見へ出掛けた。自宅に帰って来て玄関のドアを開けようとした時に突然、背部から両肩にかけての痛みを自覚し、立ち上がることができず、救急要請した。痛みは持続性であり、体位による痛みの変化はない。
ROS(-):嘔気、嘔吐、冷汗
既往歴:狭心症にて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後、高血圧症、脂質異常症、胆囊結石
常用薬:ニフェジピン40mg/日、アトルバスタチン5mg/日、トリクロルメチアジド2mg/日、テルミサルタン40mg/日、アムロジピンベシル5mg/日、プロブコール500mg/日、ニザチジンカプセル300mg/日、クロピドグレル75mg/日、スボレキサント15mg/日、テルミサルタン40mg/日、リルマザホン塩酸塩2mg(不眠時)
嗜好歴:喫煙歴・飲酒なし
アレルギー:薬物・食物なし
家族歴:特記事項なし

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|胸腹痛をきたす“壁”を克服しよう・12【最終回】

胸壁症候群を疑った時に〜最後の教訓〜

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.352 - P.355

Case 1
患者:63歳、男性。心肺停止。
 朝起きてこないことを心配した家人により、ベッド上で心肺停止しているところを発見された。救急隊が胸骨圧迫しながら病院まで搬送したところ、22分の心肺蘇生後に、自己心拍が再開した。
Ⓠ心肺蘇生により、どのような合併症が生じている可能性があるでしょうか?

指導医はスマホ!?|誰でも使えるIT-based Medicine講座・15【最終回】

IT→AI時代の「総合診療」—世界の中心でAIを叫んだけもの

著者: 森川暢

ページ範囲:P.357 - P.359

 時は20XX年、IGSコーポレーションでは、研修医ロボットを開発した! その名も、成長するAI搭載型ロボット「森川くん2号」。
 森川くん2号と一緒に、ITを活用して自分をヴァージョンアップしよう!!

素人漢方のススメ|感染症編・3

—第2章 古代疫病と現代感染症❷—現代感染症を漢方的に理解する!

著者: 鍋島茂樹

ページ範囲:P.361 - P.363

はじめに
 先月号では古代疫病の分類である三陰三陽について解説しました。今月は少し回り道して、改めて現代感染症の漢方的理解について考えてみましょう。

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・39

徐脈+ショックの鑑別

著者: 城間磨裕実 ,   横田尚子 ,   知花なおみ ,   徳田安春

ページ範囲:P.374 - P.378

CASE
患者:81歳、男性。
主訴:意識レベル低下。
既往歴:慢性腎臓病、慢性心不全、中等症大動脈弁狭窄症、2型糖尿病、高血圧症、甲状腺機能低下症、高尿酸血症、関節リウマチ、前立腺肥大症、出血性直腸潰瘍、Alzheimer型認知症。
内服歴:アスピリン0.1g/日、アロチノロール塩酸塩10mg/日、スピロノラクトン20mg/日、フロセミド40mg/日、プレドニゾロン2.5mg/日、インスリンアスパルト(朝4単位、昼4単位、夕6単位)、インスリングラルギン(夕3単位)、リナグリプチン5mg/日、レボチロキシンナトリウム水和物25μg/日、フェブキソスタット10mg/日、ランソプラゾール15mg/日、ナフトピジル50mg/日、スボレキサント15mg/日、センノシド、酸化マグネシウム、アスコルビン酸。
嗜好歴:飲酒・喫煙歴なし。
生活歴:ADL(日常生活動作)全介助、普段の意識レベルは簡単な質問には返答できる。
現病歴:5カ月前に出血性直腸潰瘍の診断で他院に入院し、1カ月前に慢性期病院である前医に転院した。転院後しばらくは問題なく経過していたが、転院約1カ月後の朝8時、明らかな誘因なく収縮期血圧が50mmHg台に低下した。刺激に反応は悪く、意識レベルが低下し、食物残渣を嘔吐した。補液を行い、血圧や意識レベルは速やかに改善した。しかし12時前に再び意識レベルが低下、血圧が測定不能、脈拍数が20bpmまで低下した。アトロピン硫酸塩水和物を2A(1mg)静注され、当院搬送となった。

55歳からの家庭医療 Season 2|明日から地域で働く技術とエビデンス・31

—新たな外来診療教育モデル—MFGIPS in Family Medicine

著者: 藤沼康樹

ページ範囲:P.379 - P.381

一般外来研修必修化
 2020年度より医師臨床研修制度の内容が一部変更になり、新たに「一般外来研修」が必修になりました。救急外来研修ではなく一般外来研修ということで、実は「プライマリ・ケア」における外来での教育に再びスポットが当たっている状況と言えます。

総合診療専門医セルフトレーニング問題・25

食思不振を訴える在宅緩和ケア方針の91歳女性

著者: 家研也

ページ範囲:P.382 - P.385

セッティング
都市部にあるグループ診療所。常勤医師複数名体制で、外来および在宅看取りを含む訪問診療を実施している。車で10分の距離に400床の総合病院があり、在宅患者の入院などには対応してもらうことができる。

“JOY”of the World!|ロールモデル百花繚乱・3

風に吹かれて、笹舟での旅

著者: 赤津晴子

ページ範囲:P.386 - P.390

 女性医師のキャリアやワークライフバランスの多様なあり方を提示するという、本リレー連載への執筆をお声がけいただいた当初、お引き受けすることをためらった。私の突飛なキャリア(表1)は、日本人読者にはあまり参考にならないと思ったからである。お断りすることを考えつつ返事を先延ばしにするうち、担当編集者からお電話をいただいてしまった。そして、本連載の「多様性」を提示するという部分に、これまでの私の特異なキャリアも貢献できるかもしれないと思い直し、長年に及んだ「米国医療界」でのワークライフバランスの拙い軌跡を、こうして綴らせていただくことした。

Update'20

オーストラリアのがんサバイバーシップケアモデル—GPとのshared careへの取り組み

著者: 土屋雅子

ページ範囲:P.371 - P.373

 2019年11月中旬から4週間、国立がん研究センター海外機関派遣制度により、オーストラリアのアデレード・メルボルン・シドニーの3都市を訪問し、「がんサバイバーシップケア」を学んだ。本稿では、メルボルンでの研修先「Peter MacCallum Cancer Centre(以下Peter Mac)」「Australian Cancer Survivorship Centre(ACSC)」と、そこで取り組まれているGP(General Practitioner)とのshared careについて報告する。

#総合診療

#医学書院の新刊 フリーアクセス

ページ範囲:P.368 - P.368

#書評:小児感染症の診かた・考えかた フリーアクセス

著者: 笠井正志

ページ範囲:P.369 - P.369

 本書の著者である上山先生と私は、本邦の臨床小児感染症が始まっていない時期から、共に手探りで「小児感染症」の勉強を始めた仲間です。修練の質や勉強のやり方が違うのか、上山先生の方が同じ感染症医としてはるかに先に行かれていますが…。さて、「小児感染症の良書はない」と言われて久しい本邦の小児医療現場でしたが(私も書いたり監修したりしているが、そうかもしれない笑)、本書のおかげでその汚名をそそぐことができた「スゴイ」本だと思います。本書を通読して感じた「スゴさ」を述べます。

#書評:—帰してはいけない小児外来患者2—子どもの症状別 診断へのアプローチ フリーアクセス

著者: 崎山弘

ページ範囲:P.370 - P.370

 小児科外来を訪れる患者の多くは「自然治癒」します。おおむね間違いではない診断をつけて投薬をしながら経過を診れば、医療によって症状が多少早く落ち着くかもしれませんが、多くの場合で治癒に至る道筋をつけたというほどの貢献はしていません。しかし、本書に出てくる疾患は、直ちに確定診断することは難しくても、診断が曖昧なままに診療を終わらせてはいけない(帰してはいけない)ものばかりです。病気の診断、特に重篤な疾病の診断を、一瞬にして成し遂げられる人はそうはいません。「何かおかしい」「どこか説明がつかない」など紆余曲折しながら診断に至ることが大部分です。
 前作『帰してはいけない小児外来患者』(2015)では、主訴と所見をどのように結びつけるか、単なるひらめきに終わらせることなく、診断に至る思考の組み立て方を中心に、症例の診断経過が記載されていました。第2弾となる本書では、この症状では具体的にどのような点に注意するべきか、が丁寧に解説されています。「診断の筋はよかったけれど、最後の決め手に欠けた…」という苦い経験に至ることを防ぐ判断力が養われます。

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.266 - P.267

『総合診療』編集方針 フリーアクセス

ページ範囲:P.351 - P.351

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。
2018年1月  『総合診療』編集委員会

読者アンケート

ページ範囲:P.391 - P.391

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.395 - P.396

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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31巻9号(2021年9月発行)

特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?

31巻8号(2021年8月発行)

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。

31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

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27巻7号(2017年7月発行)

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27巻1号(2017年1月発行)

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