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特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール 【各論】
—❸風邪に“風邪薬”はアカンで!!—こどもの感冒への「薬」の処方
著者: 笠井正志1
所属機関: 1兵庫県立こども病院 感染症内科
ページ範囲:P.290 - P.294
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患者:10カ月、男児
主訴:鼻汁、咳
病歴:2日前からの鼻汁と軽度の咳嗽を主訴に近医を受診。「感冒」と診断され、下記を処方されたが、「これだけたくさんの薬剤を飲んでも大丈夫か」と不安になり、休日夜間急患センターを受診した。
処方:シプロヘプタジン(ペリアクチン®)、デキストロメトルファン(メジコン®)、L-カルボシステイン(ムコダイン®)、アンブロキソール(ムコソルバン®)、クラリスロマイシン(クラリス®)、耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR®)、ツロブテロール(ホクナリン®テープ)、アセトアミノフェン坐剤(発熱時)
患者:10カ月、男児
主訴:鼻汁、咳
病歴:2日前からの鼻汁と軽度の咳嗽を主訴に近医を受診。「感冒」と診断され、下記を処方されたが、「これだけたくさんの薬剤を飲んでも大丈夫か」と不安になり、休日夜間急患センターを受診した。
処方:シプロヘプタジン(ペリアクチン®)、デキストロメトルファン(メジコン®)、L-カルボシステイン(ムコダイン®)、アンブロキソール(ムコソルバン®)、クラリスロマイシン(クラリス®)、耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR®)、ツロブテロール(ホクナリン®テープ)、アセトアミノフェン坐剤(発熱時)
参考文献
1)Williams JV, et al : The Common Cold. In Kliegman RM, et al(ed) : Nelson Textbook of Pediatrics. 21th ed. pp2185-2188, Elsevier, Philadelphia, 2019. 〈小児医療のバイブル的成書。疫学に関して、風邪の定義はみな引用する。小児領域での風邪の治療薬の評価の難しさについても深く言及されており、小児に関わる医師は必読。p.334〉
2)Uda K, et al : Nationwide survey of indications for oral antimicrobial prescription for pediatric patients from 2013 to 2016 in Japan. J Infect Chemother 25(10) : 758-763, 2019. PMID 31235350 〈日本発(初)の小児経口抗菌薬のビッグデータ。第三世代セフェム系とマクロライド系の多さに驚く〉
推奨のもとになった論文。OTC医薬品にエビデンスがないことが記載されている〉
受容体拮抗薬でけいれんが長引くことが観察された、乳幼児を対象とした研究〉
5)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル—小児の急性脳症,2011. http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm1104007.pdf 〈重篤副作用としての「小児の急性脳症」への対応に関する厚労省からの勧告〉
6)近藤立樹,他:ジヒドロコデイン中毒により致死的な呼吸抑制を来した新生児.日小児会誌 122(7) : 1186-1190, 2018. 〈新生児におけるジヒドロコデインによる重篤な呼吸停止症例報告〉
7)Chalumeau M : Acetylcysteine and carbocysteine for acute upper and lower respiratory tract infections in paediatric patients without chronic broncho-pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev 31 ; (5) : CD003124, 2013. PMID 23728642 〈アセチルシステインとカルボシステインの小児の気道感染症への使用に関するコクランレビュー。ここでは、これら2剤は無害だが(ほとんど)無益的な扱い〉
8)Mallet P, et al:Respiratory paradoxical adverse drug reactions associated with acetylcysteine and carbocysteine systemic use in paediatric patients ; a national survey. PloS One 6(7) : e22792, 2011. PMID 21818391 〈去痰薬(粘液溶解薬)服用2日目以降の呼吸関連副反応の小児59症例の検討。1例死亡〉
刺激薬の有効性を検討したコクランレビュー。有効性を支持するエビデンスなしと結論〉
10)van Driel ML, et al:What treatments are effective for common cold in adults and children? BMJ 363 : k3786, 2018. PMID 30305295 http://www.bmj.com/content/363/bmj.k3786 〈風邪に対する対症療法がビジュアルにまとめられている。成人か小児かで、1クリックで画面が切り換わる〉
11)具芳明,他:全国の診療所医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査.日本化学療法学会雑誌 67(3):295-307, 2019. http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/gairai_as_questionary.pdf 〈薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン後に診療所医師を対象にしたアンケート。まだまだ改善点があることがわかる〉
12)Fahey T, et al:Systematic review of the treatment of upper respiratory tract infection. Arch of Dis Child 79(3) : 225-230, 1998. PMID 9875017 〈小児上気道感染症に対する抗菌薬の20年前のシステマティックレビュー。この頃からすでに、小児上気道感染症への抗菌薬使用は否定されている〉
13)Keith T, et al : Risk-benefit analysis of restricting antimicrobial prescribing in children ; what do we really know? Curr Opin Infect Dis 23(3) : 242-248, 2010. PMID 20375892 〈小児における気道感染症合併症進展防止のための抗菌薬の有効性を評価。効果は「little benefit」〉
14)Fletcher-Lartey S, et al : Why do general practitioners prescribe antibiotics for upper respiratory tract infections to meet patient expectations ; a mixed methods study. BMJ Open 6(10) : e012244, 2016. PMID 27798010 〈豪州のGP(general practitioner)を対象としたアンケート調査。AMRへの意識改革が必要という結論〉
15)Di Blasi Z, et al : Influence of context effects on health outcomes ; a systematic review. Lancet 357(9258) : 757-762, 2001. PMID 11253970 〈「keep consultations formal」より「warm, friendly, and reassuring manner」が効果あり〉
16)Rakel DP, et al:Practitioner empathy and the duration of the common cold. Fam Med 41(7) : 494-501, 2009. PMID 19582635 〈「Consultation and Relational Empathy (CARE)スコア」が良いほど、鼻汁中免疫サイトカインであるインターロイキン-8が高く、風邪が1日早く治る。12歳の小児を対象としたもの〉
17)Teng CL, et al:The accuracy of mother's touch to detect fever in children ; a systematic review. J Trop Pediatr 54(1) : 70-73, 2008. PMID 18039678 〈母親は、やはりまあまあ正しい。高温を当てるより「高温でない」と当てることができそう。父親は…?〉
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