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文献詳細

雑誌文献

総合診療30巻3号

2020年03月発行

文献概要

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール 【各論】

—❹commonにみえるuncommon—治療に優先する「鑑別診断」

著者: 加藤正吾1

所属機関: 1中野こども病院

ページ範囲:P.295 - P.298

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Case
「発熱のみ」を主訴に受診した急性腎盂腎炎の一例
患者:0歳4カ月、男児
主訴:3時間前からの発熱
現病歴:顔色は良好、肺音・心音・腹部所見に特記事項なし。既往歴はなく、初めての発熱とのこと。3歳の兄が数日前から咳をしているが、熱はない。予防接種も、月齢どおりに接種できていた。
 受診時の血液検査ではWBC 12,000/μL(Nt 85%)・CRP 0.7mg/dL。尿検査は行われず、全身状態が良好であったため、解熱薬を処方して帰宅させた。
 翌日の再診でWBC 21,000/μL(Nt 70%)・CRP 5.8mg/dL、尿検査で白血球の貪食を伴うGram陰性桿菌を認め、「急性腎盂腎炎」の診断となり、小児科に入院となった。その後、左の「膀胱尿管逆流」が発覚し、現在は小児腎臓専門医によって経過観察されている。

参考文献

1)Ramage IJ, et al : Primary vesicoureteric reflux diagnosed in the 1st month of life. Pediatr Nephrol 13(8) : 716-717, 1999. PMID 10576793 〈膀胱尿管逆流の重症度によって、自然治癒するかどうかに違いがあるという研究〉
2)Nakai H, et al : Clinical characteristics of primary vesicoureteral reflux in infants ; multicenter retrospective study in Japan. J Urol 169(1) : 309-312, 2003. PMID 12478178 〈膀胱尿管逆流と腎瘢痕、性差についての多施設後方視的研究〉
3)木全貴久,他:小児尿路感染症に関する最近の考え方.日児腎誌 27(2) : 105-116, 2014. 〈小児尿路感染症の総説。腎瘢痕が形成されるまでの時間には諸説あり。詳細は原著を参照されたい〉
4)Silen W. 2010/小関一英(監訳):急性腹症の早期診断 第2版—病歴と身体所見による診断技能をみがく.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2012. 〈Copeによる成人の急性腹症のバイブル。小児でも応用できることが多数掲載されている〉
5)Feldt RH, et al : The gastrointestinal manifestations of anaphylactoid purpura in children. Proc Staff Meet Mayo Clin 37 : 465-473, 1962. PMID 13892165 〈IgA血管炎の腹痛は、紫斑に先行しても8日以内に出現することが多いが、場合によっては1カ月以上経過してから出現することもあると記載されている〉
6)Chang WL, et al : Gastrointestinal manifestations in Henoch-Schönlein purpura ; a review of 261 patients. Acta Paediatr, 93(11) : 1427-1431, 2004. PMID 15513566 〈IgA血管炎の腹部症状に関する後方視的研究。頻度の記載はないが、著明な血便があった時には、合併症として小腸-小腸の腸重積を考えるべきとの示唆あり〉
7)Van den Bruel A, et al : Clinicians' gut feeling about serious infections in children ; observational study. BMJ 345 : e6144, 2012. PMID 23015034 〈直観(gut feeling)の有用性について調べた研究。ベテランのほうがより鑑別の幅が狭く、特異度の高い直観を働かせていることが示された〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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