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文献詳細

雑誌文献

総合診療30巻5号

2020年05月発行

文献概要

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文 【教養編】

科学哲学|額に汗して考え抜く—二元論的思考を根底から覆す「ことだま論」

著者: 野家啓一12

所属機関: 1東北大学 2立命館大学

ページ範囲:P.556 - P.559

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❶「ことだま論」との出会い
 私は東北大学の理学部物理学科を卒業後、進路を「科学哲学」に変更し、東京大学大学院の大森荘蔵先生の門を叩いた。物理学から科学哲学へと転向(?)したのは、もともと物理学への興味が「空間に果てはあるのか?」や「時間に始まりはあるのか?」などの哲学的疑問から出発していたからである。研究目標としたのは、エルンスト・マッハ(オーストリアの物理学者、1838〜1916)の「感覚論(要素一元論)」とフッサール(オーストリアの哲学者、1859〜1938)の現象学を手がかりに、「科学的認識」の哲学的基礎づけを行うことであった。
 大学院の講義や演習を通じて大森先生から徹底して叩き込まれたのは、哲学とは「額に汗して自分の頭で考え抜く」営みに尽きること、そして得られた知見は「台所言葉で書く」こと、すなわち家庭内の茶の間で通用するような平易な言葉で表現すること、この2つである。

参考文献

1)山本信,黒田亘,前原昭二,吉田夏彦,黒崎宏,大森荘蔵:『ことだま論』をめぐって.科学基礎論研究11(4) : 149-162, 1973.
2)大森荘蔵:物と心.筑摩書房,2015.〈p.563〉
3)飯田隆,他(編),大森荘蔵(著):大森荘蔵セレクション.平凡社,2011.
4)野家啓一:物語の哲学.岩波書店,2005.
5)野家啓一:歴史を哲学する—七日間の集中講義.岩波書店,2016.
6)大森荘蔵:流れとよどみ—哲学断章.産業図書,1981.
7)中村桂子:科学者が人間であること.岩波書店,2013.
8)野家啓一:科学哲学への招待.筑摩書房,2015.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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