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文献詳細

雑誌文献

総合診療30巻7号

2020年07月発行

文献概要

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック 【Ⅰ章】 ME/CFSを極める!—“病像”をつかむ

コラム❷脳脊髄液減少症—ME/CFSとの鑑別

著者: 篠永正道1

所属機関: 1国際医療福祉大学熱海病院 脳神経外科

ページ範囲:P.814 - P.817

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Case
慢性疲労を主訴にした脳脊髄液減少症
患者:32歳、女性
主訴:頸部痛、易疲労・全身倦怠、気力低下、記憶力・思考力低下、頭痛
既往歴:3年前に子宮頸部異形成除去術
現病歴:2年前、男性に頭を強く殴られた。しばらくして回転性めまいが出現した。その後、起立時に悪化する頭痛、頸部痛、吐き気、視力低下、疲れやすい、全身倦怠感、記憶力低下、相手の言っていることが理解できない、思ったことがすぐ言葉に出てこないなどの症状が持続し、2年間多くの病院・クリニックを受診したが原因がわからず、「ME/CFS」と診断されたこともあった。点滴により症状が一時的に改善することがあった。
 他院で「脳脊髄液減少症」が疑われ、当院を紹介受診。造影脳MRIで側脳室狭小化・視神経周囲髄液減少・軽度静脈拡張・軽度硬膜造影所見がみられ、脳脊髄液減少所見と判断した。造影脊髄MRIでは、胸椎部で硬膜外髄液貯留所見がみられた。RI(放射線同位元素)脳槽シンチグラフィーを施行し、髄液圧11cm水柱、腰椎部で髄液漏出像あり。CTミエログラフィーでは頸椎・腰椎に髄液漏出所見がみられ、2カ所にブラッドパッチを行なった。症状は改善傾向だったが、倦怠感・背部痛が持続し、1年後に2回目のブラッドパッチを行い、その後、日常生活に不自由しない程度に症状が改善した。

参考文献

1)Mokri B: Spontaneous CSF leaks ; low CSF volume syndromes. Neurol Clin 32(2) : 397-422, 2014. PMID 24703536 〈脳脊髄液減少症に関する一般的な総説〉
2)Schievink WI: Spontaneous spinal cerebrospinal fluid leaks and intracranial hypotension. JAMA 295(19) : 2286-2296, 2006 〈脳脊髄液漏出症の診断法・治療法を詳しく解説してある〉
3)篠永正道:脳脊髄液減少症の診断と治療の実際.新薬と臨牀 67(9) : 1090-1095, 2018. 〈現時点での日本での脳脊髄液減少症の診断・治療を簡潔に書いてある〉
4)篠永正道:小児の脳脊髄液減少症.脊椎脊髄ジャーナル 29(10) : 965-970, 2016.
5)Nedergaard M:Neuroscience. Garbage truck of the brain. Science 340(6140) : 1529-1530, 2013. PMID 23812703 〈glymphatic systemを世に示した論文〉
6)Da Mesquita S, et al :Functional aspects of meningeal lymphatics in ageing and Alzheimer's disease. Nature 560(77171) : 185-191, 2018. PMID 30046111 〈glymphatic systemについての総説と、Alzheimer病の病態解明の道筋が書かれている〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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