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総合診療31巻11号

2021年11月発行

雑誌目次

特集 Q&Aで深める「むくみ診断」—正攻法も!一発診断も!外来も!病棟も!

著者: 柴﨑俊一

ページ範囲:P.1348 - P.1349

 本特集のミッションは、「浮腫診療の奥深さ・面白さを読者に届けること」です。浮腫は、「外来」でも「病棟」でも比較的頻度の高い症候=コモンである一方で、必ずしも喫緊の問題にはならないため、時に流してしまいがちです。症候学の本を開くと、浮腫の鑑別が多岐にわたることも、苦手意識を生み出す遠因になっているでしょう。
 しかし、浮腫診療には「診断学」の大事なエッセンスが凝縮されています。解剖の知識が必要な局所疾患から、生理学の知識が必要な全身疾患まで。身体所見で一発診断から、検査所見を丁寧に分析することで見つかる疾患まで。“診断学の王道”を行く症候といっても過言ではありません。
 そこで本特集では、気軽に読めるQ&A形式で「むくみ診断」の要所を押さえました。「利尿薬を入れて終わり…」ではなく、コモンディジーズをしっかり診るための一助にしていただけましたら嬉しく思います。

Q1<総論>「むくみ診療」が得意になるには?

著者: 柴﨑俊一

ページ範囲:P.1350 - P.1351

●「むくみ診療が苦手」を“言い換え”し“分解”してみよう!
●(慢性的な)むくみは、コモンかつQOLを下げる“無視された公衆衛生問題”。

Q2<正攻法>「胸水」がある浮腫は心不全で決まり?

著者: 橋本理

ページ範囲:P.1352 - P.1353

●胸水・浮腫ともに心不全に特異的な所見ではないため、他の所見とともに診断を詰めるべきである。
●収縮の保たれた心不全「HFpEF(heart failure preserved ejection fraction)」に注意!

Q3<一発診断>「右心不全」で忘れちゃいけない疾患は?

著者: 橋本理

ページ範囲:P.1354 - P.1355

●原因がはっきりしない右心不全では、鑑別に「収縮性心膜炎」があがる。
●自信をもって「頸静脈」を診察できるようになることが大切。

Q4<正攻法>「腹水」のある浮腫は肝硬変で決まり?

著者: 柴﨑俊一

ページ範囲:P.1356 - P.1357

●腹水のある患者の浮腫の原因は、肝硬変とは限らない。「右心不全」「癌性腹膜炎」などの鑑別を!
●鑑別のポイントは「腹水」検査の解釈だが、ここで「胸水」のLightの基準を転用するのはNG!

Q5<一発診断>原因不明の「下腿浮腫」や「胸水」で一発診断につながる身体所見は?

著者: 柴﨑俊一

ページ範囲:P.1358 - P.1359

●「黄色爪症候群」という疾患が稀にある。「爪」を診ることで一気に診断に近づくことができる。

Q6<正攻法>「顔面浮腫」が目立つ全身浮腫はネフローゼ症候群で決まり?

著者: 今泉貴広

ページ範囲:P.1360 - P.1361

●顔面浮腫だけで「ネフローゼ症候群」と決めつけてはいけない。「血管性浮腫」や「甲状腺機能低下症」はともに治療・対処可能な重要な鑑別疾患!
●鑑別のポイントは「時間経過」と「分布」。特徴的な血管性浮腫を見分けるべし!

Q7<一発診断>「ネフローゼ症候群」って診断名?

著者: 今泉貴広

ページ範囲:P.1362 - P.1363

●「ネフローゼ症候群」は最終診断名ではない。原因疾患を検索することが最も重要!
●ネフローゼ症候群の代表的な原疾患である「膜性腎症」においては、抗PLA2R抗体などの非侵襲的なバイオマーカーが診断の参考になる。

Q8<一発診断>忘れちゃいけない「顔面浮腫」の疾患は?

著者: 吉田心慈

ページ範囲:P.1364 - P.1365

●顔面・上肢に限局する浮腫では、「上大静脈症候群」を疑う。
●診断・治療に緊急を要する場合があるため注意する。

Q9<正攻法>「片脚だけ」の浮腫は静脈弁不全で決まり?

著者: 玉野井徹彦

ページ範囲:P.1366 - P.1368

●浮腫の発症が「急性(<72時間)」か「慢性(≧72時間)」かを意識して鑑別する。
 急性の場合、「深部静脈血栓症」は見逃すと致命的になる。
●気軽に「超音波検査」を使いこなせると強い。

Q10<一発診断>「片脚だけ」の浮腫で忘れちゃいけない疾患は?❶

著者: 玉野井徹彦

ページ範囲:P.1369 - P.1371

●「急性発症=深部静脈血栓症」を常に考慮する。
●「Wellsスコア(for DVT)」「Dダイマー」「超音波検査」を使いこなして診断する。

Q11<一発診断>「片脚だけ」の浮腫で忘れちゃいけない疾患は?❷

著者: 小澤労

ページ範囲:P.1372 - P.1373

●「リンパ浮腫」という疾患があり、「Stemmerサイン」が鑑別診断の一助になる。
●早期に介入することで進行を抑制できる。

Q12<一発診断>原因不明の「片脚だけ」の浮腫で一発診断につながる身体所見は?

著者: 水間悟氏

ページ範囲:P.1374 - P.1375

●腓腹筋内側頭と半膜様筋腱が膝裏でクロスする部分にある滑液包が腫脹したものを「Baker囊胞」と呼ぶ。
●Baker囊胞が破裂すると、急激な痛みと腫脹が膝裏〜下腿後面に出現し、「crescentサイン」がみられる。

Q13<一発診断>「片脚だけ」の浮腫で知っておいて損しない疾患は?

著者: 橋本理

ページ範囲:P.1376 - P.1377

●「May-Thurner症候群」は、腸骨静脈領域の外的な圧迫により静脈血栓を生じる疾患である。
●「左片側」の下腿浮腫を「女性」に認めた場合は要注意!

Q14<一発診断>「色素沈着」が目立つ浮腫で知っておいて損しない疾患は?

著者: 小澤労

ページ範囲:P.1378 - P.1379

●末梢神経障害を伴う浮腫をみたら、「POEMS症候群」を想起する。
●四肢の浮腫に加え、「皮膚の肥厚」「多毛」「色素沈着」を伴う「中年男性」が典型的である。

Q15<正攻法>「若年女性」の浮腫は気にしすぎ?

著者: 水谷佳敬

ページ範囲:P.1380 - P.1381

●「月経前症候群」による浮腫の可能性を考慮し、月経サイクルに関連しないか確認する。
●長時間立位などの誘因となる病歴を認めず、月経前症候群でもない場合に、浮腫以外の症状も随伴する時はwork upを検討する。

Q16<一発診断>「若年女性」の浮腫で忘れちゃいけない疾患は?

著者: 水谷佳敬

ページ範囲:P.1382 - P.1383

●排卵誘発薬の副作用として、胸腹水や浮腫を伴う「卵巣過剰刺激症候群」がある。重篤化すると肝・腎機能障害や血栓症を発症し生命予後にも影響するため、「不妊治療中」の女性患者の浮腫では必ず念頭に置く。
●クロミフェンなどのホルモン剤の使用の有無や、不妊治療中でないかの問診を行う。重症の卵巣過剰刺激症候群が疑われる場合、妊娠している可能性も考慮する。

Q17<一発診断>「若年女性」の浮腫で知っておいて損しない疾患は?

著者: 藤川裕恭

ページ範囲:P.1384 - P.1385

●「好酸球性血管性浮腫」というカテゴリーがある。好酸球性血管性浮腫は、一過性の「NEAE(non-episodic angioedema with eosinophilia)」と再発性の「EAE(episodic angioedema with eosinophilia)」の2つに分けられる。
●EAEは、自然軽快することが稀である。一方、本邦で多いNEAEは、経過観察のみで改善することが多い。
●「本邦、秋、若年女性、両下肢の浮腫、好酸球増多」という典型的なプレゼンテーションでは、NEAEの特徴的な臨床経過を念頭に置きつつ、NEAEらしくない症状・所見が出てこないか注意しながら、慎重に経過観察していくことが重要である。

Q18<正攻法>「やせ」が目立つ患者の浮腫は低栄養で決まり?

著者: 水間悟氏

ページ範囲:P.1386 - P.1387

●やせが目立つ患者の浮腫の原因は、低栄養による「低アルブミン血症」とは限らない。「ネフローゼ症候群」や、訴えの乏しい高齢者の「悪性腫瘍」「慢性炎症」などを見逃しやすい。

Q19<一発診断>「やせ」が目立つ患者の浮腫で忘れちゃいけない疾患は?

著者: 小澤労

ページ範囲:P.1388 - P.1389

●アルコール多飲歴がある患者の浮腫をみたら、「ビタミンB1欠乏症」を考える。
●「利尿薬を長期内服している患者の心不全増悪」をみたら、ビタミンB1欠乏症も鑑別にあげる。

Q20<一発診断>「やせ」が目立つ患者の浮腫で知っておいて損しない疾患は?

著者: 水間悟氏

ページ範囲:P.1390 - P.1391

●低栄養の患者に対して栄養投与を開始した際に、体液・電解質に致命的な変化をきたすことがあり、これを「リフィーディング症候群」という1)
●低アルブミン血症(p.1386)がないにもかかわらず、栄養の開始から数日以内に浮腫(refeeding edema)が出現することがある。

Q21<正攻法>「フレイル高齢者」の浮腫は利尿薬処方で終わり?

著者: 河口謙二郎 ,   関口健二

ページ範囲:P.1392 - P.1394

●安易な利尿薬処方は慎み、「薬剤性浮腫」の鑑別や「非薬物的介入」から行う。
●フレイル高齢者のケアでは、個別化された目標に応じて治療方針を決定する。

Q22<一発診断>「フレイル高齢者」で忘れちゃいけない浮腫は?

著者: 河口謙二郎 ,   関口健二

ページ範囲:P.1396 - P.1397

●浮腫をきたす薬剤は多い。特にフレイル高齢者はポリファーマシーの頻度も高く、まず「薬剤性浮腫」の可能性から考える。
●薬剤性浮腫は、内服薬をすべて把握したうえで、発症様式や症状などの病歴から被疑薬を見定め、その漸減・中止によって診断する。

Q23<一発診断>「重症発熱患者」の浮腫で忘れちゃいけない疾患は?

著者: 藤川裕恭

ページ範囲:P.1398 - P.1399

●「TAFRO症候群」という、場合によっては致死的になりうる病態がある。浮腫以外の“プラスα”の症状・所見をねらって集め、なるべく早期に診断できるようにしたい。
●診断にあたっては、除外すべき疾患が数多くある。なかでも「リンパ腫」と「抗酸菌感染症」は要注意。生検にあたっては、依頼する診療科と病理部とあらかじめディスカッションしておきたい。

Q24<一発診断>「がん患者」の浮腫は予後予測に使える?

著者: 吉田心慈

ページ範囲:P.1400 - P.1401

●「がんだから」で思考停止せず、浮腫の原因を突き止める努力をする。
●終末期がん患者では、浮腫は予後不良を予測する因子の1つである。

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題

ページ範囲:P.1402 - P.1403

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

Editorial

あなたの「むくみ診断」への苦手意識、厳選した24のQ&Aで変えちゃいます!

著者: 柴﨑俊一

ページ範囲:P.1339 - P.1339

数日前のフォロー外来での診療終わり際の出来事。「先生、最近、むくみがひどくなってきて…」。おぉ! 来た来た! 定番の主訴! みなさんはこんな時、どんな気持ちになりますか? 「むくみかぁ、苦手だな…。なんか難しいし、まずあまり臨床的に問題にならないし…。患者が気にしてるだけ。大丈夫だって言ってあげれば、それでOK」。そんな気持ちになりませんか? 何を隠そう、私も内科専攻医駆け出しの時にはそんな気持ちでした(詳細はQ1〔p.1350〕で懺悔しております、ご笑覧あれ!)。
 症候学の本を開くと、だいたい「浮腫の機序」のような生理学の話から始まり、眠くなる…。その後に続くのは複数の鑑別疾患、その数の多さにノックアウト…。しかも実際の診療では、教科書どおりにクリアカットには診断にたどり着けないし…。それで、完全にやる気を削がれる。わかります、わかります、その気持ち。

What's your diagnosis?[227]

明日からオアシス

著者: 吉田常恭 ,   酒見英太

ページ範囲:P.1342 - P.1346

病歴
患者:無職独居の74歳、男性
主訴:右眼視力低下
現病歴:来院3週間前に1日に数回、2時間程度持続する発作的な右前額部痛を自覚した。2週間前より色覚変化を伴う右眼の視力低下を自覚した。次第に視力低下は進行し、ものがほとんど見えなくなった。同時に、右前額部痛に加えて右側頭部痛と右上顎痛も出現し、眼球運動時にそれらの痛みが誘発されるようになったため、我慢できずに眼科を受診した。眼科では右視神経に乳頭浮腫を認め、血管炎疑いで膠原病内科に紹介となった。
 先行する感冒症状、悪寒・発熱・盗汗、食思不振・体重減少、結膜充血・眼脂、羞明、複視、耳痛、回転性めまい・聴覚症状、鼻汁・鼻閉、鼻出血、顎跛行、咽頭痛、咳・痰、呼吸困難、腹痛・便通変化、腰背部痛、頻尿・排尿困難、関節痛・筋肉痛、皮疹、sicca症状、嗅覚・味覚障害、構音障害・嚥下障害、筋力低下・感覚障害、Raynaud症状はなかった。
既往歴:高血圧症、両側下肢閉塞性動脈硬化症(69歳時にカテーテル治療)、アレルギーなし
薬剤歴:β遮断薬、Ca拮抗薬、アスピリン、H2受容体拮抗薬(新規開始の薬剤なし)
生活歴:未婚、MSM(men who have sex with men)ではない、喫煙も飲酒もしない

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・19

Aちゃんと木村政彦と私

著者: 小野正博

ページ範囲:P.1347 - P.1347

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・59

物言わぬ肝臓

著者: 兼元萌実 ,   佐藤直行 ,   徳田安春

ページ範囲:P.1404 - P.1409

CASE
患者:65歳、女性。
主訴:全身倦怠感、四肢の浮腫。
現病歴:当院入院2カ月前より全身倦怠感が出現した。1カ月前から顔面と四肢の浮腫が出現したため近医を受診したところ、採血でAlb 2.6g/dL、T-Bil 0.6mg/dL、AST 38IU/L、ALT 59IU/L、ALP 486IU/L(基準値38〜113IU/L)と低アルブミン血症、胆道系酵素の上昇を認めた。単純CT検査では両側軽度胸水を認め、肝腫大や萎縮なく、胆管拡張なし、リンパ節腫大も認めなかった。他院総合病院の消化器内科へ紹介となったが、検査ではフェリチン452ng/mL、甲状腺機能は正常で血清IgGも基準値内、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、抗核抗体と抗ミトコンドリア抗体は共に陰性で、原因は不明のままであった。その後、胆道系酵素が徐々に上昇したため「肝硬変の疑い」とされ、精査目的に当院肝臓内科へ紹介受診となった。初期検査で肝線維化マーカーの上昇もあり、肝生検目的に予定入院となった。
本人の自覚症状には強い全身倦怠感と全身性浮腫、歩行時の呼吸困難があり、受診までの約1カ月間で症状は増悪していた。1カ月で9kgの体重増加もあった。発熱や悪寒、盗汗、関節痛、皮疹、四肢のしびれや脱力はなかった。食事は3食食べられていた。
既往歴・内服薬:毎年検診を受けており、これまで通院・手術歴なし。市販薬やサプリメントなどの内服なし。
家族歴:血液疾患や消化器疾患を含め特記事項なし。
社会歴:飲酒歴:なし、喫煙歴:なし、アレルギー:薬剤・食物共になし。

研修医Issy&指導医Hiro&Dr.Sudoのとびだせフィジカル! 聴診音付・11

腹痛のフィジカル Part 2

著者: 石井大太 ,   中野弘康

ページ範囲:P.1410 - P.1413

ここは、とある病院。研修医Issyは指導医Hiro先生と共に、忙しい当直業務に追われていたのだった。

『19番目のカルテ』を読んで答える! あなたの“ドクターG度”検定&深読み解説・8

医者の顔(前編)—(『19番目のカルテ—徳重晃の問診』第8話より)

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1419 - P.1421

本連載は総合診療ビギナーの皆さんに、総合診療の楽しさと奥深さを解説することが目的です。漫画『19番目のカルテ』のエピソードを深読みすることにより、総合診療医がどのような根拠に基づいて診断しているのかを理解していただければ幸いです。本連載は『総合診療』×『19番目のカルテ』のコラボ企画で、本誌編集委員の徳田安春先生・山中克郎先生が隔月で作問&解説します!

患者さんには言えない!? 医者のコッソリ養生法・6

不養生の医者、「肥満」を解消する決意をする

著者: 須田万勢

ページ範囲:P.1426 - P.1430

 “プチ不健康”を放置してきたツケで風邪を引きかけて弱っていたところに、突然現れた医神アスクレピオス(自称ピオちゃん)に弟子入りさせられた貝原先生。「風邪」に続き、前回「肩こり」を解消して喜んだのも束の間、今回は養生最大の難関「肥満」に挑むことになる。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・20

チョコレートの食べ過ぎで鼻血は出るのか?

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.1431 - P.1435

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはありませんが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

“コミュ力”増強!「医療文書」書きカタログ・17

—高めの紹介ハードルも乗り越えられる!—「高次医療機関の専門医」への紹介状

著者: 天野雅之

ページ範囲:P.1436 - P.1440

今月の文書
診療情報提供書
セッティング:市中病院→高次医療機関(大学病院)への紹介
患者:60代・女性。当直帯に脳梗塞で入院。血液培養からブドウ球菌様のグラム陽性球菌が検出され、大動脈弁に12mmの疣贅があり、「感染性心内膜炎」と判明した。心不全徴候もあり、大学病院の心臓血管外科への搬送が検討された。
【登場人物】
桜井:総合診療科1年目専攻医。南部医療センターで研修中。
生駒:総合診療科4年目専攻医。病棟診療チームのリーダー。
飛鳥:桜井の指導医。総合診療専門研修プログラムの責任者。
甲斐:平城医大の心臓血管外科医。病棟医長として受け入れ判断を行う。開胸手技が得意。

“JOY”of the World!|ロールモデル百花繚乱・21

「女性」であるアドバンテージを活かして

著者: 藤井美穂

ページ範囲:P.1441 - P.1445

 あらためて人生のターニングポイント(表1)を思い返してみると、自身の強い思いに駆られた選択があったわけではなく、1本の道を歩きながら、その時々の先輩や友人、夫の言葉が、私の行動を促してきたように思う。大学の選択では中学入学から6年間ともに学んできた友人2人と、産婦人科を選択する際にはやはり診療科選びを模索していた女友達と話したことを思い出す。
 青春時代は、東大紛争から発し全国の大学、さらに高校にも押し寄せてきた学園紛争の最中で過ごした。授業ボイコットで大切な学びの時間は失われ、社会学者の本を読みながら平和や民主主義について熱く語り合った。好奇心旺盛な私は、学生運動に足を踏み入れ、そこで出会った尊敬できる先輩にも影響を受けたものだ。しかし、次第に集団の中にいることに息苦しさを感じ、この生活に終止符を打った。
 今、自身のキャリア構築を手探りしているみなさんとは40年もの隔たりがあるものの、時代が流れても変わらないものをお伝えできればと思い、私の医師人生を振り返ってみたい。

【臨床小説】後悔しない医者|あの日できなかった決断・第20話

患者から学ぶ医者

著者: 國松淳和

ページ範囲:P.1447 - P.1452

前回までのあらすじ 今月のナゾ
 患者は80歳・女性、卵巣がんの末期で腹膜播種を伴い、アルコール性肝硬変や種々の合併症で入退院を繰り返している。今回の入院契機は蜂窩織炎で、担当医の五明が採取した血液培養からグラム陽性球菌が発育した。筧はそれを「G群溶血性レンサ球菌」だと一早く見抜き、抗菌薬治療が奏効しつつあった。CRPの改善を無邪気に喜ぶ五明だったが、黒野は「Dダイマー」の値を気にしており、はたして患者は急変した。肺塞栓を起こしたのだ。思わぬ事態にとまどい、呆然とする五明だったが…。
 前回の終盤、時が巻き戻った。今回は、患者が肺塞栓を起こす、その前からのリプレイである。治療がうまくいっている時、思わぬピットフォールに陥ることがある。実際には取り返しがつかないが、「もしもあの時…」を読んで体験してみてほしい。悩める初期研修医たちに知らずと道を示す、患者の言葉にも注目したい。時に患者は、医師を導く者である。

投稿 総合診療外来

上行大動脈から弓部大動脈に限局した高度石灰化からSingleton-Merten症候群が疑われた1例

著者: 嶋﨑枝里 ,   関根哲生 ,   一條昌志 ,   矢ヶ崎英晃 ,   土屋恭一郎

ページ範囲:P.1415 - P.1418

緒言
 Singleton-Merten症候群(SMS)は常染色体優性遺伝の稀な疾患であり、古典的SMSの症状は乳歯や永久歯の萌出遅延、歯根異常および歯槽骨吸収といった歯列異常と弓部大動脈や大動脈弁の著明な石灰化を主とし、責任遺伝子としてinterferon induced with helicase C domain protein 1(IFIH1[2q24.2])が同定されている。また、近年歯列異常を伴わないSMSが報告され、DExD/H-box helicase 58(DDX58[9q21.1])が責任遺伝子であることが判明した1)。しかし、SMSの表現型や重症度は不均一であり、同一家系内において表現型と重症度が異なることがあるが、詳細な病態や他の遺伝子異常については明らかになっていない。
 われわれは、上行大動脈から弓部大動脈に限局した高度石灰化を契機に、何らかの背景疾患を疑い精査を進め、SMSが強く疑われた1例を経験したため報告する。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

ページ範囲:P.1353 - P.1353

#今月の特集関連本❷

ページ範囲:P.1355 - P.1355

#今月の特集関連本❸

ページ範囲:P.1359 - P.1359

#今月の特集関連本❹

ページ範囲:P.1368 - P.1368

#今月の特集関連本❺

ページ範囲:P.1377 - P.1377

#今月の特集関連本❻

ページ範囲:P.1389 - P.1389

#今月の特集関連本❼

ページ範囲:P.1394 - P.1395

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.1423 - P.1423

#医学書院の新刊

ページ範囲:P.1425 - P.1425

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目次

ページ範囲:P.1340 - P.1341

読者アンケート

ページ範囲:P.1453 - P.1453

『総合診療』バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1454 - P.1455

お得な年間購読のご案内

ページ範囲:P.1455 - P.1456

次号予告

ページ範囲:P.1457 - P.1458

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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31巻8号(2021年8月発行)

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。

31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

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