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文献詳細

雑誌文献

総合診療31巻11号

2021年11月発行

文献概要

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・59

物言わぬ肝臓

著者: 兼元萌実1 佐藤直行1 徳田安春2

所属機関: 1社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院 2臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄センター

ページ範囲:P.1404 - P.1409

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CASE
患者:65歳、女性。
主訴:全身倦怠感、四肢の浮腫。
現病歴:当院入院2カ月前より全身倦怠感が出現した。1カ月前から顔面と四肢の浮腫が出現したため近医を受診したところ、採血でAlb 2.6g/dL、T-Bil 0.6mg/dL、AST 38IU/L、ALT 59IU/L、ALP 486IU/L(基準値38〜113IU/L)と低アルブミン血症、胆道系酵素の上昇を認めた。単純CT検査では両側軽度胸水を認め、肝腫大や萎縮なく、胆管拡張なし、リンパ節腫大も認めなかった。他院総合病院の消化器内科へ紹介となったが、検査ではフェリチン452ng/mL、甲状腺機能は正常で血清IgGも基準値内、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、抗核抗体と抗ミトコンドリア抗体は共に陰性で、原因は不明のままであった。その後、胆道系酵素が徐々に上昇したため「肝硬変の疑い」とされ、精査目的に当院肝臓内科へ紹介受診となった。初期検査で肝線維化マーカーの上昇もあり、肝生検目的に予定入院となった。
本人の自覚症状には強い全身倦怠感と全身性浮腫、歩行時の呼吸困難があり、受診までの約1カ月間で症状は増悪していた。1カ月で9kgの体重増加もあった。発熱や悪寒、盗汗、関節痛、皮疹、四肢のしびれや脱力はなかった。食事は3食食べられていた。
既往歴・内服薬:毎年検診を受けており、これまで通院・手術歴なし。市販薬やサプリメントなどの内服なし。
家族歴:血液疾患や消化器疾患を含め特記事項なし。
社会歴:飲酒歴:なし、喫煙歴:なし、アレルギー:薬剤・食物共になし。

参考文献

1)Masaki Y, et al, Japanese TAFRO Syndrome Research Team : 2019 Updated diagnostic criteria and disease severity classification for TAFRO syndrome. Int J Hematol 111(1) : 155-158, 2020. PMID 31782045
2)Ito T, et al : The dangers of immediately performing a sensitive and specific investigation versus the dangers of delaying it ; a cautionary case of Hodgkin's lymphoma. Eur J Case Rep Intern Med 7(12) : 002138, 2020. PMID 33457376
3)Fujimoto S, et al : Optimal treatments for TAFRO syndrome ; a retrospective surveillance study in Japan. Int J Hematol 113(1) : 73-80, 2021. PMID 32970275
4)Masaki Y, et al : Proposed diagnostic criteria, disease severity classification and treatment strategy for TAFRO syndrome, 2015 version. Int J Hematol 103(6) : 686-692, 2016. PMID 27084250
5)Berner ES, et al : Overconfidence as a cause of diagnostic error in medicine. Am J Med 121(5 Suppl) : S2-23, 2008. PMID 18440350

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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