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文献概要
特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで 【感染性肺炎と紛らわしい病態】
❷間質性肺炎、過敏性肺炎
著者: 永井達也1 中島啓2
所属機関: 1東京ベイ浦安市川医療センター・呼吸器内科 2医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 呼吸器内科
ページ範囲:P.208 - P.212
文献購入ページに移動市中肺炎として初期対応された急性過敏性肺炎の1例
患者:56歳、男性。
主訴:乾性咳嗽、発熱。
既往歴:特記事項なし。
現病歴:X年8月に、1週間前から出現した乾性咳嗽、発熱を主訴に内科外来を受診した。胸部診察では背側でlate inspiratory crackles(=fine crackles)を聴取した。胸部X線写真で両下肺野の透過性低下を認めたため、市中肺炎の診断で入院となり、セフトリアキソン2g/日とアジスロマイシン500mg/日の投与が開始された。入院後は速やかに解熱し、咳嗽も改善したため、セフトリアキソン2g/日・5日間、アジスロマイシン500mg/日・3日間の投与を行い退院となった。自宅退院2日目より再び咳嗽が出現し、労作時呼吸苦の増悪と胸部X線で肺野に両肺の透過性低下を認め、再入院となり、肺炎の再発として再度抗菌薬が投与された。呼吸状態は速やかに改善し退院となったが、自宅退院後に再び呼吸困難と発熱を認め、救急搬送となった。胸部CTでは両肺びまん性に淡い小葉中心性(=小葉の中心部分に病変を認める)の粒状影とすりガラス陰影(図1)を認めた。肺炎を繰り返していること、自宅は木造築50年であり、8月の発症であることから、夏型過敏性肺炎が疑われた。呼吸器内科にコンサルトを行い、気管支鏡検査を行ったところ、気管支肺胞洗浄液はリンパ球増加を認め、一般細菌や抗酸菌などの微生物は同定されなかった。抗菌薬を使用せずに経過観察したところ、自覚症状は数日で軽快し、画像所見も改善した。経気管支肺生検組織の病理学的評価では肉芽腫の形成を認め、抗トリコスポロン・アサヒ抗体を提出したところ陽性であり、急性過敏性肺炎の診断となった。自宅の大掃除をして帰宅試験を行い、症状の再発がないことを確認して退院となった。
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