文献詳細
特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー
【各論Ⅰ】東日本大震災から10年—「福島」における地域医療の今
「福島市」の在宅医療の現状と課題—仮設住宅での看取りに学んだ「住まい」の意味
著者: 橋本孝太郎1
所属機関: 1医療法人社団爽秋会 ふくしま在宅緩和ケアクリニック
ページ範囲:P.837 - P.840
文献概要
患者:80代、男性。直腸がん末期、転移性肝腫瘍。福島第一原発がある福島県双葉郡(p.832)からの避難者で、福島市内の「仮設住宅」に在住。同居家族は妻のみだが、同一敷地内の仮設住宅群の別棟に娘夫婦・孫がいた。もともと住んでいた地域の住民もこの仮設住宅群に多くいたが、県外に避難した者も多かった。もとのかかりつけ医も被災しており、主治医変更も余儀なくされた。
現病歴:東日本大震災後に化学療法が長期間中止され、その間に全身状態も悪化したため、「在宅緩和ケア」を目的に当院紹介となった。介入当初はPS(performance status)3程度で、なんとか室内歩行は可能であった。
訪問看護・訪問介護・訪問薬剤管理サービスを利用し、娘家族・地域住民も積極的に介入してくれたおかげで、仮設住宅においても通常と同等の医療・ケアを提供でき、その場で最期を迎えることができた。しかし、本人・家族らのパーソナルスペースを確保しプライバシーを保つこと、双葉郡の自宅への想い、コミュニティを失った寂しさを埋めることは難しく、仮設住宅での療養環境は決して良いものではなかった。
参考文献
掲載誌情報