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特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー 【各論Ⅱ】各地の先進的実践事例集
「ポータブルエコー」でここまでわかる!
著者: 亀田徹1
所属機関: 1自治医科大学 臨床検査医学講座
ページ範囲:P.851 - P.855
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転倒して右胸部をぶつけた一例
患者:78歳、男性
既往歴:脳梗塞による右不全麻痺・運動性失語
現病歴:要介護2で、週1回の訪問看護を受けている。この半年で認知機能の低下が進んできた。
昼食摂取中に椅子から転倒したところを、家族に発見された。なんとか起き上がらせてベッドまで軽介助で連れていったが、体動時に顔をしかめていた。連絡を受けた看護師が訪問すると、ベッドで臥していた。顔色は良く、頻呼吸はなかった。血圧は安定、SpO2 93%(普段は94〜96%程度)、呼吸音は右が少し弱いように感じた。右側胸部に限局性の圧痛があり、皮下気腫ははっきりしなかった。
看護師が往診を依頼したところ、医師の所見も看護師のアセスメントと同様で、「右肋骨骨折」の可能性があり、「血胸」と「気胸」の除外が必要と考えられた。往診時に携帯しているポケットサイズのポータブルエコー(ポケットエコー)で評価したところ、仰臥位では左右胸腔に胸水貯留はなく、右前胸部の胸膜ライン上でlung slidingは消失(図1ⓐ)、左前胸部のlung slidingは認めた。また、右側胸部の圧痛部位に一致して肋骨表面の不連続性(ズレ)を確認した(図1ⓑ)。
転倒して右胸部をぶつけた一例
患者:78歳、男性
既往歴:脳梗塞による右不全麻痺・運動性失語
現病歴:要介護2で、週1回の訪問看護を受けている。この半年で認知機能の低下が進んできた。
昼食摂取中に椅子から転倒したところを、家族に発見された。なんとか起き上がらせてベッドまで軽介助で連れていったが、体動時に顔をしかめていた。連絡を受けた看護師が訪問すると、ベッドで臥していた。顔色は良く、頻呼吸はなかった。血圧は安定、SpO2 93%(普段は94〜96%程度)、呼吸音は右が少し弱いように感じた。右側胸部に限局性の圧痛があり、皮下気腫ははっきりしなかった。
看護師が往診を依頼したところ、医師の所見も看護師のアセスメントと同様で、「右肋骨骨折」の可能性があり、「血胸」と「気胸」の除外が必要と考えられた。往診時に携帯しているポケットサイズのポータブルエコー(ポケットエコー)で評価したところ、仰臥位では左右胸腔に胸水貯留はなく、右前胸部の胸膜ライン上でlung slidingは消失(図1ⓐ)、左前胸部のlung slidingは認めた。また、右側胸部の圧痛部位に一致して肋骨表面の不連続性(ズレ)を確認した(図1ⓑ)。
参考文献
1)Bonnel AR, et al : Using point-of-care ultrasound on home visits ; the home-oriented ultrasound examination (HOUSE). J Am Geriatr Soc 67(12) : 2662-2663, 2019. PMID 31587264 〈在宅医療でポータブルエコーを用いたパイロット研究〉
2)亀田徹,他:Bラインを用いたpoint-of-care超音波による心原性肺水腫の評価.超音波医学45(2) : 125-135, 2018. 〈「心原性肺水腫」の超音波診断全般に関する総説〉
3)Kajimoto K, et al : Rapid evaluation by lung-cardiac-inferior vena cava(LCI)integrated ultrasound for differentiating heart failure from pulmonary disease as the cause of acute dyspnea in the emergency setting. Cardiovasc Ultrasound 10(1) : 49, 2012. PMID 23210515 〈ポケットエコーを用いてBライン・心臓・下大静脈を評価し、「心原性肺水腫」の診断能を検討〉
4)Orso D, et al : Lung ultrasound in diagnosing pneumonia in the emergency department ; a systematic review and meta-analysis. Eur J Emerg Med 25(5) : 312-321, 2018. PMID 29189351 〈成人の肺炎患者を対象とした「肺炎」の超音波診断についてのメタ解析。統合感度は92%、統合特異度は93%であった〉
5)李英伊,他:携帯超音波を用いた肺 point of care ultrasound による高齢者肺炎診断の有用性.超音波医学,2021. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmu/advpub/0/advpub_JJMU.A.178/_article/-char/ja (2021年6月10日現在) 〈ポケットエコーによる「高齢者肺炎」の診断精度についての数少ない臨床研究。肺ポイントオブケアエコーと臨床診断の一致率は87%と良好であった〉
6)Chamsi-Pasha MA, et al : Handheld echocardiography ; current state and future perspectives. Circulation 136(22) : 2178-2188, 2017. PMID 29180495 〈さまざまな職種がポータブルエコーを用いて心臓を評価することに関する総説〉
7)Abe Y : Screening for aortic stenosis using physical examination and echocardiography. J Echocardiogr, 2021(online ahead of print) PMID 33415574 〈駆出性雑音とポケットエコーによる「大動脈弁狭窄」のスコアリングよるスクリーニングを中心に記載された総説〉
8)Kameda T, et al : Assessment of the renal collecting system using a pocket-sized ultrasound device. J Med Ultrason 45(4) : 577-581, 2018. PMID 29721640 〈ポケットエコーを用いた「水腎症」評価に関する検討。検査室の高性能超音波装置との一致率は良好で、特に水腎症の否定に有用であった〉
9)亀田徹:内科救急で使える!Point-of-Care超音波ベーシックス[Web動画付].pp.206-214, 医学書院,2019. 〈自著。Lecture 23では「ポケットエコー」について解説している。p.904〉
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