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文献詳細

雑誌文献

総合診療31巻8号

2021年08月発行

文献概要

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。 【各論2】総合診療医から精神科医への“ぶっちゃけ”相談集

Q1 なんとなく精神疾患かな? でも、どこがどういうふうに違和感があるのか、うまく表現できないです。正常と異常の区別がよくわからないです。「なんとなく違和感がある」をどう表現し、どうアプローチしたらよいでしょうか?

著者: 今村弥生1

所属機関: 1杏林大学医学部 精神神経科学

ページ範囲:P.974 - P.977

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 正常と異常の境界、つまり、診察室で患者から伝わってくる「違和感」が、精神疾患か否かの判断は、われわれ精神科医にとっても悩ましい臨床課題である。われわれの手元にはDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、現在は第5版。詳細は他稿を参照)などの、精神科領域に広く伝播した診断基準があり、精神疾患の診断と、主に研究上の議論のうえでの共通言語としては大変有用であるものの、臨床場面で「ある人」にDSM-5を使用するとなると、まずここに書かれている症候学から、それはどういう症状か具体的なイメージを持って、かつ目の前の人が訴える、あるいは醸し出す所見はその症候と合致するのかどうかを、頭のなかで照合しなくてはならない。これは精神障碍当事者と、ある程度の回数を治療者として対面していないと、患者のほうを診断基準に当てはめてしまい、患者の困難さと診断がずれていたり、症状しか見ていない、つまりは重要な問題が隠れたままの診断につながりかねない。千差万別の当事者の症状、その元にある苦悩のなかには、DSMでは測りきれないものもあり、かつ、精神疾患と非精神疾患の間にはまり込んだ微妙な境界を判断するのは困難であるが、その境界を含めて見ることは、相手を全人的に診ることになるとも考える。
 本稿では自験例を交え、精神疾患かもしれない“なんとなくの違和感”の表現と、そのアプローチについての回答を求めてみたい。

参考文献

1)PIPCホームページ http://pipc-jp.com(2021年6月2日閲覧)
2)Robert K, et al. 2007/井出広幸(監訳),他,PIPC研究会(訳):ACP内科医のための「こころの診かた」—ここから始める!あなたの心療.丸善出版,2009.
3)井出広幸:PIPC(Psychiatry In Primary Care)(特集:日常診療に役立つ精神症状への対応).臨牀と研究89(9):1236-1239, 2012.
4)豊嶋良一:「了解可能/不能感」と「生物学的正常/異常」の対応関係についての試論.精神神経学雑誌119(11) : 827-836, 2017.
5)笠原嘉:精神科における予診・初診・初期治療.星和書店,1997.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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