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文献詳細

雑誌文献

総合診療31巻8号

2021年08月発行

文献概要

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。 【各論2】総合診療医から精神科医への“ぶっちゃけ”相談集

Q3 アルコール依存症だと思うのですが、本人にその自覚がありません。家族は困っているようです。どうしたらよいでしょうか?

著者: 小松知己1

所属機関: 1沖縄医療生活協同組合 沖縄協同病院 リエゾンセンター

ページ範囲:P.982 - P.986

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Case1
アルコール性肝障害、高血圧症と、家族トラブルが徐々に進行した例
患者:43歳、男性。
家族歴:父も大酒家(詳細不明)。
現病歴:職場の健診で毎年肝機能障害を指摘されており、今回はγ-GTPが300IU/L台に上昇して高血圧も悪化したため、産業保健室からの強い促しで精査のため当院受診。腹部超音波検査と血液検査で肝障害はアルコール性と確定、二次性高血圧も除外された。精査中に妻から外来窓口に相談があり、「実は、この数年は二日酔いで欠勤することが月に1〜3回ある。また休日に子どもたちと出かける約束を守れない。それを諫めて『酒量を減らすように』と言うと、怒って大声を出してモノを投げる」とのこと。暴力の危険度を詳しく聴取したうえで、スタッフから妻へ、本人受診時に同伴してもらうよう依頼。三者面談を行い、そのなかで「アルコール依存症だとは全く思わないが、高血圧の薬を増やしたくないし、月曜出勤時に身体がだるくて辛いのは何とかしたい。少しは酒が絡んではいると思う」という本人の発言を引き出して、アプローチを開始した。

参考文献

1)国立病院機構 久里浜医療センター:アルコール依存症の集団治療プログラム(第1版)〜GTMACK〜.国立病院機構 久里浜医療センター,下記よりダウンロード可. https://kurihama.hosp.go.jp/research/pdf/gtmack.pdf(2021年6月2日閲覧) 〈ア症のナショナル・センターが発行した認知行動療法のテキスト。初心者でも患者と共に学習会を進められる〉
2)Miller WR, et al. 2013/齋藤利和(監訳),小松知己,他(訳):あなたの飲酒をコントロールする—効果が実証された「100か0」ではないアプローチ.金剛出版,2019. 〈減酒・断酒を実行するためのガイド.酒量の減らし方やしらふで生活するための技術を、1つずつ具体的に記載〉
3)新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会(監修),樋口進,他(編):新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン.pp18-19,新興医学出版社,2018. 〈日本のア症診断・治療ガイドライン最新版.すべての臨床科の研修医およびプライマリ・ケア医を読者に想定して作成〉
4)北田雅子,他:医療スタッフのための動機づけ面接法 逆引きMI学習帳.医歯薬出版,2016. 〈「動機づけ面接法(MI)」を、日本で行われた豊富な面談事例を用いてわかりやすく解説〉
5)松本俊彦(編):「助けて」が言えない—SOSを出さない人に支援者は何ができるか.日本評論社,2019. 〈臨床で遭遇するさまざまな「援助希求能力」が乏しい人々への理解・対応のヒントを、広い分野から集積。MIに限らず参考になる〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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