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特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。 【各論2】総合診療医から精神科医への“ぶっちゃけ”相談集
Q9 なかなかよくならないメンタル症状の方を診るのはつらいです。つらいから精神科に紹介、というのもつらいです。メンタル症状の方を診る時の自分自身のコントロールの仕方を教えてください。
著者: 塚原美穂子
所属機関:
ページ範囲:P.1007 - P.1011
文献購入ページに移動 本テーマは、かかりつけ医、プライマリ・ケア医、非専門医がさまざまな理由で、「なかなかよくならないメンタル症状の人」の診療を続けざるをえない状況を想定して書いた。都市部から遠く医療資源が乏しい地などで、専門医へのアクセスに物理的距離があったり、本人が精神科受診に抵抗がある場合など、時にかかりつけ医や家庭医が診療を続けなければならない状況があると推察する。
しかし、専門医にとってもなかなかよくならない人の診療は、同じくつらいものである。米国での4,000名弱の大うつ病患者の治療と予後の関係を調査した2006年のSequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression(STAR*D)報告によると1)、数種類の薬物療法や認知療法などを1年以上の期間をかけて行っても、大うつ病患者の1/3が標準的な治療に対して難治であった。なかなかよくならない人、一筋縄でいかない人は、多くの標準的な治療者にとっても同様に難しいものである。
しかし、専門医にとってもなかなかよくならない人の診療は、同じくつらいものである。米国での4,000名弱の大うつ病患者の治療と予後の関係を調査した2006年のSequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression(STAR*D)報告によると1)、数種類の薬物療法や認知療法などを1年以上の期間をかけて行っても、大うつ病患者の1/3が標準的な治療に対して難治であった。なかなかよくならない人、一筋縄でいかない人は、多くの標準的な治療者にとっても同様に難しいものである。
参考文献
D report. Am J Psychiatry 163(11) : 1905-1917, 2006. PMID 17074942 〈米国で行われた4,000名の大うつ病患者の治療変更と寛解に関する大規模研究〉
2)黒木俊秀:難治症例の薬物療法における精神療法的配慮—とくに慢性うつ病(非定型うつ病や気分変調症)について.精神経誌116(9) : 764-770, 2014. 〈薬物療法メインから本人自身のエンパワメントにスイッチするための薬物療法の位置づけ〉
3)細川貂々(漫画家),水島広子(精神科医):やっぱり,それでいい.—人の話を聞くストレスが自分の癒しに変わる方法.創元社,2018. 〈対人関係療法における傾聴のエッセンスがつまっている。コミック形式だが意外な名著〉
4)近藤真前:一般外来におけるうつ病に対する対人関係療法.精神経誌120(5) : 408-415, 2018. 〈対人関係療法の概観が事例を挙げてわかりやすくまとめられている〉
5)伊藤絵美:セルフケアの道具箱—ストレスと上手につきあう100のワーク.晶文社,2020. 〈一般読者が日常生活でコーピングとマインドフルネスを自分に合った形で実践できるよう多数の方法が提案されている名著〉
6)斎藤環(解説),水谷緑:まんが やってみたくなるオープンダイアローグ.医学書院,2021. 〈オープンダイアローグが実際どう運ぶか、事例と医師の心の変遷を含めてコミック形式で描かれた名著〉
7)オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP):対話実践のガイドライン. https://www.opendialogue.jp/対話実践のガイドライン/ 〈オープンダイアローグの原則と考え方、対話を弾ませるための実践のポイントが書かれたガイドライン〉
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