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特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学 【Ⅰ章:個別の病態で切る!】エキスパートが織りなす怒涛の縦糸—個別から“理屈”をつかむ
❻抗NMDA受容体脳炎—精神症状を内科学の症候と考える
著者: 尾久守侑12
所属機関: 1下総精神医療センター 2慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 精神病態生理学研究室
ページ範囲:P.53 - P.57
文献購入ページに移動患者:29歳、女性
現病歴:これまで精神科疾患の既往はなく、一般企業の総合職として勤務していたが、風邪をひいて会社を数日休んだあとから、徐々に周囲の視線が気になるようになり、会社を早退するなどの行動がみられた。次第に「早く行かないとミニーが死んじゃう」などと母親に訴えて泣くといった意味不明の言動がみられるようになり、近隣のA総合病院の内科を受診した。
内科では脳炎が疑われ、血液検査・頭部MRI・脳波検査・髄液一般検査が行われたが、特記すべき異常はなく、近隣の精神科病院に転送となった。しかし翌朝、39℃の高体温とともに緊張病となり、呼吸停止をきたしたため、再度A総合病院に転院。脳波に著しい徐波を認め、改めて脳炎が疑われメチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1,000mL(3日間)が開始となった。速やかに症状は改善し、後日提出していた髄液から「抗NMDA(N-methyl-D-aspartic acid)受容体抗体」が検出された。
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