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文献詳細

雑誌文献

総合診療32巻10号

2022年10月発行

文献概要

What's your diagnosis?[238]

膝カックン!—“押されたんじゃなくて引っ張られたの”

著者: 酒見英太1 岩下靖史2

所属機関: 1洛和会音羽病院 総合内科 2洛和会音羽病院 整形外科

ページ範囲:P.1180 - P.1184

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病歴
患者:16歳、女性
主訴:易転倒性
現病歴:生来健康な高校1年生。偏頭痛でたまにロキソニン®を頓服するが常用薬はなく、アレルギーもない。吹奏楽部でクラリネットを吹いている。京都出身の両親と弟との4人暮らし。ペットは飼っていない。月経は順調で、最終正常月経は4日前。経血に凝血塊なし。偏食はしていない。
 当科受診の7カ月前に駅の階段で2度転んだことはあるが、特に外傷も負わないですみ、以後同様なエピソードはなかった。4カ月前の学校検診で脊柱側弯を指摘されたため、脊椎外科受診を勧められた。8週間前にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを接種されたが、特に問題はなかった。5週間前に当院脊椎外科を受診。側弯は軽度であり介入不要とされたが、上肢<下肢のDTR(深部腱反射)亢進が認められたため、全脊椎MRIが撮影され、脊椎管が全般に拡大しているように思われたが、脊髄自体に異常は認められなかった。
 約1カ月前より転倒しやすくなり、17日前からは歩行中に頻回に膝折れがして前方に転び、膝をすりむくことが多くなったため、再度脊椎外科外来を再診したところ救急外来に回され、血液、脳および頸胸髄MRIの検査を受け、そこから精査を求めて3日後に内科を紹介受診した。母親はHPVワクチンの副作用を心配している。
ROS(review of systems):易転倒性はあるが、どこも痛くなく、体調が悪いとも感じていない。悪寒・発熱・寝汗、頭重、口腔咽頭症状、上下気道症状、呼吸困難、消化器・泌尿生殖器症状、皮膚・関節症状、複視、めまい・聴覚症状、構音・嚥下障害、嗅覚・味覚障害、四肢の異常感覚・感覚鈍麻、立ちくらみ、膀胱・直腸障害はない。

参考文献

1)Kim SS : Idiopathic spinal cord herniation. J Korean Soc Spine Surg 24(2) : 121-128, 2017.
2)Scheller NM, et al : Quadrivalent HPV vaccination and risk of multiple sclerosis and other demyelinating diseases of the central nervous system. JAMA 313(1) : 54-61, 2015. PMID 25562266
3)Shimabukuro TT, et al : Safety of the 9-valent human papillomavirus vaccine. Pediatrics 144(6) : e20191791, 2019. PMID 31740500
4)Parmar H, et al : Imaging of idiopathic spinal cord herniation. Radiographics 28(2) : 511-518, 2008. PMID 18349454
5)Regensburger M, et al : Long-term course of anterior spinal cord herniation presenting with an upper motor neuron syndrome ; case report illustrating diagnostic and therapeutic implications. BMC Neurol 20(1) : 321, 2020. PMID 32861240

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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