総合診療32巻11号

2022年11月発行

特集 不定愁訴にしない“MUS”診療—病態からマネジメントまで 【総論】

❷MUSの概念—それは本当にMUSなのか？

著者： 西山順滋¹²

所属機関： ¹関西医科大学 心療内科学講座 ²関西医科大学附属病院 総合診療科

ページ範囲：P.1300 - P.1303

Case
「“原因不明”の症状を治してください」
患者：54歳、男性
既往歴：特記事項なし
家族歴：兄；大腸がん（55歳時に死去）
現病歴：X年4月頃より、嘔気・腹痛・便秘を認めるようになる。他院消化器内科を受診し、血液検査や上下部消化管内視鏡・腹部超音波・腹部造影CTなどの検査を実施されるも、異常はなかった。「機能性ディスペプシア（functional dyspepsia：FD）」「過敏性腸症候群（irritable bowel syndrome：IBS）」の診断で、ガイドラインに則った薬物治療を実施されたが、不定期に症状を認める状況が続いた。その後、呼吸苦や手足のしびれも認めるようになり、複数の医療機関を受診し、心電図・胸部X線・呼吸機能検査などを実施されるも改善しなかった。同年9月に紹介受診した。
☞みなさんなら、どのように対応されますか？

参考文献

1）日本心身医学会用語委員会，日本心療内科学会学術企画委員会（編）：心身医学用語事典第3版【電子版】．p255，三輪書店，2020. 〈心身医学で用いられる用語辞典の最新版。電子版なので利用しやすい〉

2）Johansen ML, et al：What is the problem with medically unexplained symptoms for GPs? A meta-synthesis of qualitative studies. Patient Educ Couns 100（4） : 647-654, 2017. PMID 27894609 〈MUSの問題点に対する総合診療医の認識とマネジメントについての研究〉

3）Fink P, et al：One single diagnosis, bodily distress syndrome, succeeded to capture 10 diagnostic categories of functional somatic syndromes and somatoform disorders. J Psychosom Res 68（5） : 415-426, 2010. PMID 20403500 〈独自の診断基準にFSSに該当する疾患や身体症状症を当てはめると高い確率で重複していることを示した論文〉

4）Hatcher S, et al：Assessment and management of medically unexplained symptoms. BMJ 336（7653） : 1124-1128, 2008. PMID 18483055 〈過去10年の論文をもとに、MUSのアセスメント・マネジメントに言及した論文〉

5）宮崎仁：医学的に説明困難な身体症状．日内会誌98（1） : 188-191, 2009. 〈プライマリ・ケア医や内科医に向け、MUSがわかりやすく解説されている〉

6）Barsky AJ, et al：Functional somatic syndromes. Ann Intern Med 130（11） : 910-921, 1999. PMID 10375340 〈FSSの古典的な論文の1つ〉

7）Henningsen P, et al：Management of functional somatic syndromes. Lancet 369（9565） : 946-955, 2007 PMID 17368156 〈FSS患者の評価・段階的ケアがわかりやすく示されている論文〉

8）Nishiyama J, et al：Characteristics of outpatients with functional somatic syndromes at a university hospital's general medicine clinic. J Gen Fam Med 23（4） : 268-274, 2022. PMID 35800641 〈筆者らによる、日本の大学病院総合診療科外来におけるFSS患者の疫学研究〉

9）吉原一文，他：身体症状症．日内会誌 107（8） : 1558-1565, 2018. 〈身体症状症の概念・診断・治療につき、わかりやすく解説されている〉

10）岡田宏基：MUS，FSS，身体表現性障害，そして心身症—概念の理解と整理についての私案および一般医へのトレーニングプログラム．心身医学54（11） : 991-1000, 2014. 〈MUS・FSSに心身症も加えて解説され、一般医への教育プログラムの紹介もあり〉