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文献詳細

雑誌文献

総合診療32巻3号

2022年03月発行

文献概要

特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル—君は生き延びることができるか? 【Ⅱ章】AI実装医療における医師のクリニカル・スキル

—【総論】“近未来医師”のコンピテンシー—「ポスト問題解決志向」と2つの「思考OS」

著者: 尾藤誠司1

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 総合内科

ページ範囲:P.308 - P.313

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Case(仮想)
患者:64歳、女性
現病歴:2026年秋、○○クリニックの診察室である。半年前から、息苦しさと両上肢にしびれ感あり、近隣の大学病院から紹介受診した。
 もともと快活な性格で、持病もなく健康に問題を感じることはなかったが、2021年秋に新型コロナウイルス感染症に罹患。かなり症状がつらかったにもかかわらず、病院は満床で自宅療養せざるをえず、パルスオキシメーターを購入して以来、血圧・脈・酸素飽和度を毎日測定するようになった。友人たちとの会食をきっかけに感染したこともあり、その後「健康の維持」が人生で一番の関心事になった。
 2026年3月頃から、テレビをみている時などに、よく自分の呼吸を意識するようになり、息を吸ったり吐いたりするのが不自然な動作のように感じ、4月には明らかに「苦しい」と感じるようになった。SpO2を毎日測定していたが、異常はなかった。総合病院の呼吸器内科を受診しさまざまな検査を行ったが、「どこにも異常はない」と言われた。循環器内科に紹介となったが、そこでも「問題ない」と言われた。5月からは両手のしびれも感じるようになったため、「総合的に診てもらったほうがよい」と指示され、大学病院の総合内科に紹介となった。
 総合内科でもさらにさまざまな検査が行われたが異常はなく、「精神的な病気かもしれません」と言われた。しかし精神科でも、「精神疾患はないと思います」と言われた。
 自費診療の「AIセカンド・オピニオン」も受けたが、「現時点では健康上の脅威はありません」との診断だった。患者は困り果て、毎日のように夫に自分のつらい思いを訴えていた。夫は「何とかしたい」と、鍼灸や漢方などのクリニックなどをインターネットで調べて受診を促したが、いっこうに状況は改善しなかった。
 ひととおりの評価を受けた大学病院総合内科の担当医から、「しびれと息苦しさのお薬(ビタミンB12とツロブテロール貼付剤)は続けたほうがよいと思いますから、かかりつけ医を紹介しますね」と言われ、○○クリニックを受診した。

参考文献

1)日比恆明:人工知能(AI)と弁理士業務—人工知能(AI)の進化により弁理士の業務をどのように変化させるべきか.パテント70(1) : 98-104, 2017. https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201701/jpaapatent201701_098-104.pdf
2)Harari YN. 2018/柴田裕之(訳):21 Lessons—21世紀の人類のための21の思考.河出書房新社,2019.
3)Basu K, et al:Artificial intelligence;how is it changing medical sciences and its future? Indian J Dermatol 65(5) : 365-370, 2020. PMID 33165420
4)Snowden DJ, Boone ME(著),松本直子(訳):「クネビン・フレームワーク」による臨機応変の意思決定手法. Diamond Harvard Business Review, 33(3):108-119, 2008.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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