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雑誌目次

雑誌文献

総合診療32巻4号

2022年04月発行

雑誌目次

特集 えっ、これも!? 知っておきたい! 意外なアレルギー疾患

著者: 島惇 ,   上田剛士

ページ範囲:P.446 - P.447

 アレルギーは皮疹のみの軽微なものから、アナフィラキシーのように呼吸器系・消化器系・血管系・中枢神経系など全身の臓器を障害して致命的となるものまで、その症状は様々です。
 患者自身がアレルギーを疑っているケースであれば、救急外来や一般内科外来、皮膚科外来を受診する機会が多いと思いますが、なかにはアレルギー症状を“食あたり”や“喘息”と思い込んで消化器や呼吸器などの専門外来を受診する場合もあります。また、アレルギーではないのに患者自身が“アレルギー”と思い込んで受診するケースもあります。
 臨床ではその患者の症状が本当にアレルギーに起因するかどうか、またそうであった場合にアレルゲン物質は何か、診断に苦慮する場合も少なくありませんが、医師が不用意にアレルギーと診断し、誤った生活指導をすることは、患者のQOLを大きく損ねる可能性があります。
 そこで本誌では、知らないと診断できない一風変わったアレルギーの原因や、遅発性アナフィラキシー、アレルギーミミックについて特集を組みました。
 多忙な診療の中で、本特集が、特発性アナフィラキシーの中に隠れた真のアレルゲンやアレルギーミミックを見つける一助となれば、企画者として幸甚です。

【総論】

総合診療医たるものアレルギー疾患を深く知るべし!

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.448 - P.450

なぜ総合診療で“アレルギー”か?
 アレルギー疾患はさまざまな主訴で、さまざまな科を受診します。気管支喘息(呼吸器科)、アトピー性皮膚炎(皮膚科)、アレルギー性鼻炎(耳鼻科)、アレルギー性結膜炎(眼科)などはその例です。しかし、アレルギー疾患は時として臓器横断的な疾患ですので、必ずしも身近に適切な該当科が見つかるわけではありません。その場合、アレルギー専門医への紹介も選択肢になると思いますが、膨大なアレルギー疾患患者に比してアレルギー専門医の数は非常に少ないのが現状です。
 このような現実を考えると、アレルギー診療は、臓器横断的な診療が得意な“総合診療医の出番”と言えるのではないでしょうか?

【知っておきたい! 意外なアレルギー疾患】

❶食物依存性運動誘発アナフィラキシー

著者: 西村康裕

ページ範囲:P.452 - P.454

Case
患者:23歳、男性。来院の1時間半前に定食屋で焼き魚、ひじきの煮付け、茄子のお浸し、味噌汁、五穀米(米、麦、粟、稗、黍)を食べた。飲酒はしていない。その後、駅まで30分ほど早足で歩いたところ、咳嗽、呼吸苦と共に全身に蕁麻疹が出現したため来院。2カ月前にはレーズンパンを食べた後にランニングをしたところ、全身に蕁麻疹が出現したことがある。既往歴はアトピー性皮膚炎。常用薬なし。他にビール酵母で結膜炎・鼻炎・蕁麻疹の誘発歴、キウイで咽頭違和感あり。喫煙歴・飲酒歴なし。来院時、全身性に膨疹あり。バイタルサインは安定しているが、聴診にて両側背部にwheezesを聴取した。

❷口腔アレルギー症候群

著者: 丸山尊

ページ範囲:P.455 - P.458

Case
患者:24歳、女性。レストランでデザートに出された生のモモを食べた後に、口の中と耳に瘙痒感が出現した。その後、症状は自然と改善したが、以前にモモを食べた時にも同様の症状があったことから、気になって内科外来を受診した。毎年3月と10月の時期には眼の瘙痒感とくしゃみが出現し、他院で花粉症と診断されたことがある。以前に生のトマトを食べた際に顔が腫れて、耳の中が痒くなったことがあるため、それ以来食べないようにしているが、現在でもケチャップは食べても問題ない。

❸納豆アレルギー

著者: 島惇

ページ範囲:P.460 - P.461

Case
患者:42歳、男性。明け方、就寝中に瘙痒を伴う膨疹、腹痛、下痢、呼吸苦が出現したため救急外来を受診した。来院前日の朝食は摂取なく、昼はカップラーメン、夕食は納豆・卵・ご飯・野菜炒めであり、いずれもこれまでに摂取歴があるが、今回のような症状は初めてである。同じ夕食内容の妻と子どもは無症状で、患者に既知のアレルギー歴はなく、アルコール摂取、新規の薬剤や食後の運動はない。ペットの飼育はなく、化粧水、シャンプー、布団などの日常生活用品の変更はない。仕事は事務職であり、犬、猫、鳥などの動物への曝露はない。趣味は1年前から始めたサーフィンで、クラゲには複数回の刺傷歴がある。

❹獣肉アレルギー

著者: 山下恵実

ページ範囲:P.462 - P.466

Case
患者:50代、女性。特記既往なく、常用薬はない。既知の食物・薬剤アレルギーはない。夕食を食べてから30分後に、口唇や咽頭の瘙痒感と蕁麻疹が出現し、救急外来を受診した。夕食では、自宅で燻製したベーコン、卵、チーズとビールを摂取した。これまでに豚肉や卵、チーズを食べてアレルギー症状が出たことはない。
追加の問診:およそ20年前からネコを飼い始め、数年前からはネコとの接触で鼻炎症状が起こるようになった。最近は料理をする際に、生の豚肉を触ると手指に瘙痒感が生じるため、手袋をつけるようにしていた。都心部に居住しており、マダニに刺された記憶はない。野山に入ることはなく、過去にイヌは飼育していない。

❺パンケーキ症候群

著者: 加賀史尋

ページ範囲:P.467 - P.469

Case
患者:23歳、男性。小児の頃からダニアレルギーがあり、特異的IgE抗体検査で陽性と診断されている。また、スギによる花粉症と小児喘息の既往があるが、現在内服薬はない。来院1時間前に自宅でたこ焼き粉と全卵を用いてタコ焼きを作り、1人で食べていた(具はタコ、エビ、チーズ、ウインナー)。摂取直後から気分不良、皮膚瘙痒感、鼻汁、呼吸困難を自覚し、徐々に増悪傾向であるため、自身で救急要請して当院救急外来へ搬送となった。直前の運動歴、飲酒歴はない。摂取したタコ焼き粉や具材は以前も食べたことがある食材で、これまでアレルギー症状を起こしたことはなかった。来院時のバイルサインは、循環動態は安定し、酸素需要も認めなかったが、頻呼吸であり、全身に膨疹を認めた。アナフィラキシーと診断し、アドレナリン0.3mgを筋肉注射したところ、膨疹は消失し、上記自覚症状も消失した。

❻アニサキスアレルギー

著者: 左近真之

ページ範囲:P.470 - P.472

Case
患者:47歳、男性。13時頃に卸売市場の魚屋でサンマの刺身定食を食べた1時間後より、全身の膨疹と呼吸困難が出現し、救急外来へ受診。サンマはこれまでにも摂取したことはあるが、このような症状は初めてである。同じメニューを注文した同僚は特に症状はなく、集団発生なども報告されていない。食後には特に運動もしていない。患者には特に既往歴や内服薬、アレルギー歴はない。

❼食品添加物によるアレルギー

著者: 松川展康

ページ範囲:P.474 - P.475

Case
患者:21歳、男性。昼過ぎに市販のゼロカロリーの清涼飲料水(スポーツドリンク)を飲んだ。約5分後に全身に瘙痒感を伴う膨疹が出現した。呼吸困難感と腹痛も生じたため、救急外来を受診した。清涼飲料水と一緒に飲食したものはなく、朝食は未摂取であった。来院前日の朝食も未摂取、昼食は菓子パンと牛乳、夕食は白米と焼肉、焼野菜であった。一緒に夕食を食べた友人で同様の症状は出ていない。既往歴はなく、アレルギーの指摘歴もないが、過去にもゼロカロリーのゼリーの摂取で同様の症状が出たことがある。サプリメント含め内服歴はなく、飲酒・喫煙歴もない。最近ボディーソープ、シャンプー、リンス、洗剤、柔軟剤を変えたことはなく、衣服も以前から何度も身につけているものであった。

❽プロゲストーゲン過敏症

著者: 柴田裕介

ページ範囲:P.476 - P.477

CASE
患者:22歳、女性。2年前から月に1回、蕁麻疹を繰り返すという訴えで一般外来を受診した。症状は月経開始の約2〜3日前に始まり、5〜7日間続いた後に消失した。頭部と頸部の蕁麻疹、瘙痒感から始まり、全身に広がることもあった。時に口唇の腫れ、めまい、手のしびれ、胸の圧迫感を認めることもあった。一度は呼吸困難を伴い救急外来でアナフィラキシーの診断でアドレナリンを投与されたことがあった。患者にアトピー性皮膚炎、気管支喘息を含めて既知のアレルギー歴はない。ペットの飼育はなく、化粧水、シャンプー、布団などの日常生活用品の変更もない。内服薬は経口避妊薬のみである。

❾水虫による喘息

著者: 砂川智佳

ページ範囲:P.478 - P.480

CASE
患者:58歳、男性。35歳頃に気管支喘息の診断を受けて定期通院していたが、服薬コンプライアンス不良があり、頻回に発作を繰り返していた。今回は自動車整備の仕事中に呼吸困難感が出現し、サルブタモール硫酸塩を3回吸入したが、呼吸困難感が治まらないため、当院救急外来を受診した。患者に既知のアレルギー歴、喫煙歴、動物との接触歴はなかった。自動車整備の仕事をしており、粉塵の曝露歴はあった。また10年以上前から足白癬、爪白癬、体部白癬を疑う病変があったが、検査・治療はしていなかった。IgE RIST 896IU/mL、トリコフィトン特異的IgE抗体価2.12Ua/mL(class 2)であった。MAST36アレルゲン検査はすべて陰性。足の指間と爪から採取した検体を鏡検すると、糸状菌陽性であった。

❿昆虫アレルギー

著者: 黄俊大

ページ範囲:P.481 - P.483

Case
患者:40歳女性・11歳女児・10歳男児の3人家族。20XX年、特に既往のない姉弟の11歳女児と10歳男児がそれぞれ5月、10月と立て続けに気管支喘息を発症した。20XX+1年10月頃、姉弟の母親である40歳女性も気管支喘息を発症した。同家族は都市部に住んでおり、病歴からゴキブリが自宅に多数生息していることが判明。CAP-RAST(CAP radioallergosorbent test)では、3名ともゴキブリが陽性反応で、ダニ・ハウスダストは陰性であったことからも、ゴキブリが主要アレルゲンと考えられた。室内清掃とゴキブリの駆除など行った結果、喘息症状が軽快した。

⓫新生児・乳児消化管アレルギー

著者: 𠮷川聡司

ページ範囲:P.484 - P.485

Case
患者:53歳、男性。ホタテを食べた4時間後に嘔吐、下痢を数回繰り返すというエピソードを2回起こしたため来院。症状は数時間で自然軽快した。アサリを食べて同様の症状が出現したこともあるが、カキなどの他の貝類、海産物で症状が出現したことはない。特異的IgEや皮膚プリックテストは陰性で、ホタテの経口負荷試験を行ったところ、摂食後90分で嘔吐、血性下痢、血圧低下を認めた。呼吸困難や浮腫は出現しなかった。

【スペシャル・アーティクル】

❶アレルギーミミック

著者: 北村亮

ページ範囲:P.486 - P.491

 アレルギーとは、抗原との免疫学的な反応が原因となり症状が起きるものです。本稿では、アレルギー様の症状を呈するものの、その発症機序に抗原抗体反応が関与しない非アレルギー疾患をテーマとします。鑑別が容易でないことも少なくありませんが、誤ってアレルギーと判断してしまえば、患者のQOLを大きく損ねる可能性があるため、アレルギーと決めつける前に、「本当にアレルギーなのか?」と疑う姿勢が重要です。

❷アレルギーを疑った時に行う検査

著者: 阿部昌文

ページ範囲:P.492 - P.495

 本稿では、Ⅰ型アレルギーを疑った時に行う検査と、臨床で遭遇する機会の多い、薬剤アレルギー(Ⅳ型アレルギー)におけるリンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test : DLST)の意義や有用性について述べる。
 まずはⅠ型アレルギー診断の大まかな流れとともに、検査、結果の解釈について説明する。

【コラム】

❶蚊に刺されただけなのに…/❷初めてなのに…。/❸ペニシリンアレルギー患者はブルーチーズを食べても大丈夫ですか?/❹繰り返すアレルギー症状の原因は?/❺尿道カテーテルへのアレルギー/❻造影剤でおたふく風邪??/❼胸は刺されていないのに…/❽これっておむつかぶれですか??/❾pylori菌アレルギー?

著者: 島惇 ,   喜多昭介 ,   丸山尊 ,   北村亮

ページ範囲:P.450 - P.491

 読者の皆さんのなかに、蚊に刺された経験のない方はいないと思います。
 通常、蚊に刺された場合は、蚊の唾液に含まれる抗凝固成分などの複数の生体物質による直接的な作用や、唾液中の蛋白質へのアレルギー反応により、15〜30分で消失する膨疹が出現した後に、1、2日以内に瘙痒を伴う硬結を形成します。そして、多少の個人差はありますが自然に改善します。

Editorial

適切なアレルギーの診断と生活指導ができれば一人前である!

著者: 島惇 ,   上田剛士

ページ範囲:P.445 - P.445

アレルギーを疑う患者を適切に診断、生活指導をするためには、詳細な問診が欠かせません。しかし、多忙な救急外来や一般外来では、たとえば、「食事歴は直近だけでよいのか?」「食事内容はどれほど詳細に聞いたほうがよいのか?」「趣味や職業まで聞いたほうがよいのか?」など、何をどこまで聞いてよいのか悩む方もいるかもしれません。時間の限られた環境で、ポイントを絞って適切に問診をするためには、稀なアレルギーの原因はもちろん、アレルギーと紛らわしい疾患についてもできる限り知っている必要があります。
 そこで本特集では、よく知られている食物依存性運動誘発アナフィラキシーや口腔アレルギー症候群から始まり、稀なアレルギーや遅発性アナフィラキシーの原因、アレルギーミミックとなる疾患を中心に解説をしてもらいました。

ゲストライブ〜Improvisation〜・17

「総合診療×MBA」というキャリア—そのシナジーの可能性

著者: 志水太郎 ,   天野雅之 ,   山本晴香 ,   大塚勇輝

ページ範囲:P.429 - P.437

日本国内で「MBA(経営学修士)」への関心が高まって久しい。最近は、これを取得する「臨床医」も増えつつある。しかし、臨床医の仕事に「経営学」や「ビジネススキル」は、どう役立つのか? 医師としてのキャリアにおいて、MBAはどう活きるのだろう? 実際にMBAを取得した2人の総合診療医に、MBA取得を志す、またMBAに関心をもつ若手医師が聞いた。ビジネススクールでの学びは、リーダーシップやマネジメントにとどまらず、「臨床力」にも広く深く及ぶという。その詳細を、MBA取得前〜中〜後にわたって明らかにした。「総合診療×MBA」の相乗効果とは?(編集室)

What's your diagnosis?[232]

御縁がない? ちゃんと考えれば縁はある

著者: 北村亮 ,   𠮷川聡司 ,   上田剛士

ページ範囲:P.441 - P.444

病歴
患者:92歳、女性  家族歴:特記事項なし
主訴:嘔吐、発熱、SpO2低下
現病歴:介護老人保健施設に入所中でADL(日常生活動作)は全介助。来院2日前に突然嘔吐した。来院前日に38.0℃の発熱あり。SpO2 70%(室内気)まで低下したが、自然に90%台(室内気)まで改善した。来院当日に再びSpO2 70%(室内気)まで低下し酸素2L投与開始となるが、SpO2値が上がらないため、当院に救急搬送された。以前から度々SpO2が低下しては自然に軽快するということが繰り返されており、原因不明とされていた。
ROS(-):咳嗽、喀痰、体重増加、起坐呼吸
既往歴:Alzheimer型認知症、脳梗塞、高血圧
常用薬:アムロジピンベシル酸塩5mg、バルサルタン80mg、シロスタゾール100mg、酸化マグネシウム330mg
嗜好歴:喫煙・飲酒なし
アレルギー:薬物・食物なし

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・24

覚悟

著者: 亀井三博

ページ範囲:P.509 - P.509

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

高齢者診療スピードアップ塾|効率も質も高める超・時短術・4

「高齢者外傷」は画像検査の選定であと30分早くなる

著者: 増井伸高

ページ範囲:P.510 - P.511

 高齢者診療において、整形外科疾患はコモンディジーズです。特に頻度の高い「脊椎圧迫骨折」や「大腿骨近位部骨折」「橈骨遠位端骨折」は、非専門医でも初期対応が求められます。診断のためには画像検査がマストとなりますが、各疾患で「CTやMRIをどのタイミングで実施するか」がタイムマネジメントに関わってきます。また、「どの画像検査をチョイスするか」でどのようにスピードアップにつながるか、早速確認してみましょう。

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・63

腰痛+発熱+CRP高値➡何を疑う?

著者: 井上敢之 ,   川妻由和 ,   徳田安春

ページ範囲:P.513 - P.517

CASE
患者:87歳、男性。
主訴:腰痛、歩行不能、便失禁。
現病歴:受診2日前に腰痛を自覚、受診前日に歩行不能となり、本日便失禁・尿失禁が出現したため、当院に救急搬送された。腰痛は体動で惹起され、安静時痛なし。本日朝食まで通常通り摂取できている。
ROS:寒気あり、頭痛なし、鼻水なし、咳嗽なし、悪心・嘔吐なし、頻尿なし、排尿時痛なし。
既往歴:虚血性心疾患(PCI後)、大動脈弁狭窄症(生体弁置換術後)、うっ血性心不全、心房細動、変形性脊椎症。
嗜好歴:喫煙:1日10本×30年間。50歳で禁煙。飲酒:機会飲酒。
内服薬:エドキサバントシル塩酸水和水錠80mg、クロピドグレル錠75mg、カルベジロール錠10mg、フェブキソスタット錠20mg、ピタバスタチンカルシウム2mg、アゾセミド錠30mg、アルファカルシドールカプセル0.2μg。
生活歴:アパート2階に妻と2人暮らし。日常生活動作自立。 
アレルギー歴:特記事項なし。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・25

モーツァルトの曲は胎教に良い!?

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.519 - P.522

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはありませんが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

患者さんには言えない!? 医者のコッソリ養生法・11

翌日に疲れを残さない、ぐっすり「睡眠」の養生❶

著者: 須田万勢

ページ範囲:P.524 - P.528

 “プチ不健康”を放置してきたツケで弱っていた貝原先生。突然現れた医神アスクレピオス(自称ピオちゃん)に半ば強制的に弟子入りさせられ、養生で健康を取り戻す方法をしぶしぶ学ぶうち、身体も心も少しずつ変わってきた。「風邪」「肩こり」「肥満」「お酒」に続き、ちゃんと疲れがとれる「睡眠」の方法を伝授されることに…。

投稿 GM Clinical Pictures

繰り返される肺炎

著者: 戸田早苗 ,   小林玄弥 ,   川口裕子

ページ範囲:P.503 - P.504

CASE
患者:66歳、男性。
現病歴:気管支喘息、慢性副鼻腔炎で近医にて加療されていた。数年前より、左肺炎で複数回の治療歴があるが、外来で抗菌薬を投与され改善していた。慢性副鼻腔炎の手術目的で紹介となり、術前の胸部単純X線写真(図1Ⓐ)で、本人の自覚症状はないが左上肺野に浸潤影(色矢印)を認めた(図1Ⓐ)。SpO2 98%(room air)、体温36.8℃、両肺野でわずかにwheezeを聴取した。胸部単純CT(図1Ⓑ、Ⓒ)では左上葉の浸潤影と左上葉気管支内に低吸収域の充実(白矢印)が見られた。喀痰の一般細菌検査は、グラム染色でグラム陽性球菌1+、グラム陰性桿菌1+、培養検査Haemophilus influenzae 103 1+、抗酸菌検査では塗抹陰性であった。

音に聴く所見

著者: 若林崇雄 ,   石立尚路 ,   須藤大智 ,   渡邉智之 ,   スフィ・ノルハニ

ページ範囲:P.505 - P.506

CASE
患者:重喫煙歴と飲酒歴のある、79歳、男性。
現病歴:3カ月持続する呼吸困難感の急激な増悪を訴えて外来受診した。当科受診の3カ月前より呼吸困難を自覚していたが、市販薬で経過観察していた。受診3日前より呼吸困難感が増悪した。喀痰の量は変わらないが、喉のつまり感が増悪しているという。当初、当院の耳鼻咽喉科を受診したが、喉頭ファイバー等の検査で異常が見つからず、肺炎や喘息など下気道疾患精査目的で総合診療科に紹介された。
受診時のバイタルサイン:意識清明、血圧155/88mmHg、脈拍数79回/分 整、体温36.6℃(腋窩温)、呼吸数25回/分、SpO2 94%。
既往歴:心筋梗塞。
飲酒歴:種類を問わず多量に飲酒していた。
喫煙歴:50歳まで20本/日。
体重減少:最近1カ月で5kgの減少を認める。ただし嚥下や食事摂取に支障はなかった。
身体所見:肺野には呼吸性雑音を聴取しなかった。しかし、吸気時により強い一定の音調(monophonic)を頸部甲状軟骨付近に聴取した。この喘鳴は努力呼吸で増強した。会話は可能だった。上記の所見により頸部〜胸部造影CTをオーダーした(図1、2)。

耳の痛い話

著者: 若林崇雄 ,   古川直幸 ,   石立尚路 ,   須藤大智 ,   渡邉智之 ,   スフィ・ノルハニ

ページ範囲:P.507 - P.508

CASE
患者:特記すべき既往のない、82歳、女性。
主訴:2カ月前から持続する耳漏と3日間持続する発熱を訴えて紹介受診。2カ月前より血性の耳漏を右耳に認めていたが、夫の看病・逝去のため耳鼻科に受診できていなかった。受診3日前より倦怠感と共に38℃台の発熱を認め近医受診し、血液検査で炎症反応の高値を指摘され当科に紹介受診。
受診時のバイタルサイン:意識清明、血圧140/73mmHg、脈拍数100回/分 整、体温38.5℃(腋窩温)、呼吸数16回/分。
身体所見:一般内科診察で異常を認めなかったものの、著明な右耳の耳漏を認めた。咽頭痛および口腔内に齲歯や咽頭炎、扁桃炎は見られなかった。頸部に若干の圧痛を認め、嚥下時痛を訴えた。
血液検査:高度の炎症反応(WBC 35,060/μL、Neut 97%、CRP 27.67mg/dL)と共に軽度の肝障害(ALP 193IU/L、γ-GTP 92IU/L、LDH 264IU/L)を認めた。胸部単純X線で両側下肺野に浸潤影を認めたため、頸部から骨盤に至るまで造影CTで精査した(図1、2、3)。

#総合診療

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.472 - P.472

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.496 - P.497

#医学書院の新刊

ページ範囲:P.500 - P.500

#今月の連載関連本

ページ範囲:P.501 - P.501

#書評:レジデントのための専門科コンサルテーション—マイナーエマージェンシーに強くなる

著者: 倉原優

ページ範囲:P.498 - P.498

 若手医師に限った話ではないが、臨床医を続ける以上「専門科にコンサルトすること」と「患者に病状説明すること」は避けて通れない。その技術は、一朝一夕で身につくものではなく、他の医療従事者や多くの患者と真っ向からぶつかり合い、削られ、磨かれ、叩かれ、鉄は強くなる。不幸にも、コンサルトや病状説明が不得手な指導医のもとで育ってしまうと、自身も苦手意識をもってしまい、後輩にノウハウと伝えられないという負の循環が生まれかねない。うまく叩かれなければ、鉄はただの鉄のままだ。
 医師が独り立ちする頃、コンサルトや病状説明に関して、誰しも己の能力不足を痛感するだろう。本書を読む前には、目次に「放射線科」「麻酔科」「病理診断科」が入ってくるとは予想していなかった。ともすれば「doctor's doctor」と呼ばれるこれらの診療科は、依頼さえすれば、あとはどうにかやってくれると誤解されがちな診療科でもある。とりわけ電子カルテが台頭している現代、以前のように顔を突き合わせて議論百出されることが減っているように思う。臨床情報なくしては議論すらできないし、著者が書かれているように、じかに顔を見て話さないとわからない部分はあると思う。これは自分への戒めでもある。

#書評:ぼくとがんの7年

著者: 山本健人

ページ範囲:P.499 - P.499

 医師になって8年目の夏、私は初めて全身麻酔手術を体験した。病名は、右肩の腱板断裂。4本のうち2本が断裂し、上腕二頭筋腱も損傷しているという、ひどい状態だった。整形外科で手術を受け、入院は3週間、通院でのリハビリは1年にわたった。
 その時の経験は、今でも自分の肥やしになっている。治療の副作用や合併症への不安、検査のつらさ、全身麻酔に対する恐怖。患者に対してなら「大したことはありませんよ」と笑顔で話せたことの数々が、当事者にすればあまりに重かった。患者の立場になり、見えなかったものが見えたのだ。

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目次

ページ範囲:P.438 - P.439

『総合診療』編集方針

ページ範囲:P.440 - P.440

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。
2018年1月  『総合診療』編集委員会

読者アンケート

ページ範囲:P.529 - P.529

『総合診療』バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.530 - P.531

お得な年間購読のご案内

ページ範囲:P.531 - P.532

次号予告

ページ範囲:P.533 - P.534

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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バックナンバー

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33巻11号(2023年11月発行)

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33巻9号(2023年9月発行)

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33巻8号(2023年8月発行)

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32巻9号(2022年9月発行)

特集 総合診療・地域医療スキルアップドリル—こっそり学べる“特講ビデオ”つき!

32巻8号(2022年8月発行)

特集 こんなところも!“ちょいあて”エコー—POCUSお役立ちTips!

32巻7号(2022年7月発行)

特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座

32巻6号(2022年6月発行)

特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス—My Best 3

32巻5号(2022年5月発行)

特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況

32巻4号(2022年4月発行)

特集 えっ、これも!? 知っておきたい! 意外なアレルギー疾患

32巻3号(2022年3月発行)

特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル—君は生き延びることができるか?

32巻2号(2022年2月発行)

特集 —withコロナ—かぜ診療の心得アップデート

32巻1号(2022年1月発行)

特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学

31巻12号(2021年12月発行)

特集 “血が出た!”ときのリアル・アプローチ—そんな判断しちゃダメよ!

31巻11号(2021年11月発行)

特集 Q&Aで深める「むくみ診断」—正攻法も!一発診断も!外来も!病棟も!

31巻10号(2021年10月発行)

特集 医師の働き方改革—システムとマインドセットを変えよう!

31巻9号(2021年9月発行)

特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?

31巻8号(2021年8月発行)

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。

31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

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30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

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27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

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特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

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特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

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