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文献概要
特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況 【総論】
「誤診」から「診断エラー」へ
著者: 和足孝之1
所属機関: 1島根大学医学部附属病院 総合診療医センター
ページ範囲:P.546 - P.551
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インフルエンザが大流行しており、救急外来は発熱患者で大混雑し、待ち時間が長く患者もスタッフもイライラしている。また、先ほど救急搬送の収容依頼が2件同時にきてしまった。あなたは、その隙間時間に外来診療もこなさなければならない。
患者:35歳、女性。生来健康。
現病歴:1日前からの発熱を主訴に、23時に救急外来を受診した。一緒に来院した2人の女児(6歳と2歳)は、どちらも1週間前にインフルエンザA型の診断を受けていた。当日の午前中に最寄りのクリニックを受診し、迅速検査では陰性であったが、病歴からおそらくインフルエンザだろうとの診断を受け、アセトアミノフェンを処方された。しかし、半日経っても解熱しないため受診したという。
体温38.5℃、呼吸数22回/分、脈拍数100回/分。インフルエンザ迅速検査を実施し、陰性を再度確認した。身体所見上はこれといった異常がないことを確認し、「クリニックの先生がおっしゃるように、検査は今回も陰性ですが、病歴からインフルエンザでよいと思います。そこまで心配せず、水分をとって、よく寝ましょう」と説明した。患者からは「そうですか。でも、なんか少し変で、点滴をしてくれませんか?」との訴えがあったが、食事がとれていればインフルエンザには点滴は不要であることを告げ、帰宅となった。
その患者は2日後に自施設へ救急搬送となり、急性前骨髄性白血病による播種性血管内凝固の病態で「脳出血」の診断を受けた。
インフルエンザが大流行しており、救急外来は発熱患者で大混雑し、待ち時間が長く患者もスタッフもイライラしている。また、先ほど救急搬送の収容依頼が2件同時にきてしまった。あなたは、その隙間時間に外来診療もこなさなければならない。
患者:35歳、女性。生来健康。
現病歴:1日前からの発熱を主訴に、23時に救急外来を受診した。一緒に来院した2人の女児(6歳と2歳)は、どちらも1週間前にインフルエンザA型の診断を受けていた。当日の午前中に最寄りのクリニックを受診し、迅速検査では陰性であったが、病歴からおそらくインフルエンザだろうとの診断を受け、アセトアミノフェンを処方された。しかし、半日経っても解熱しないため受診したという。
体温38.5℃、呼吸数22回/分、脈拍数100回/分。インフルエンザ迅速検査を実施し、陰性を再度確認した。身体所見上はこれといった異常がないことを確認し、「クリニックの先生がおっしゃるように、検査は今回も陰性ですが、病歴からインフルエンザでよいと思います。そこまで心配せず、水分をとって、よく寝ましょう」と説明した。患者からは「そうですか。でも、なんか少し変で、点滴をしてくれませんか?」との訴えがあったが、食事がとれていればインフルエンザには点滴は不要であることを告げ、帰宅となった。
その患者は2日後に自施設へ救急搬送となり、急性前骨髄性白血病による播種性血管内凝固の病態で「脳出血」の診断を受けた。
参考文献
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