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文献詳細

雑誌文献

総合診療32巻6号

2022年06月発行

文献概要

特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス—My Best 3 【総論】

エビデンスを実地診療に実装するには—実装科学(Implementation Science)入門

著者: 梶有貴12

所属機関: 1国際医療福祉大学成田病院 総合診療科 2国立がん研究センターがん対策研究所行動科学研究部 実装科学研究室

ページ範囲:P.686 - P.690

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EBMの“次の一手”「実装科学」
 1990年代に「エビデンスに基づく医療(evidence-based medicine:EBM)」の概念が導入され、さまざまな臨床研究が実施され、そこで得られた多くの知見が臨床現場で応用されるようになりました。本稿を手に取っていただいている皆さんも、日常業務のなかで当然のごとく、エビデンスを駆使して診療されていることと思います。しかし、それほどにエビデンスが当たり前のように浸透してきた現在であっても、エビデンスレベルや推奨レベルが高いプラクティスがあるにもかかわらず実際の現場では十分に活用されていない、あるいはエビデンスがないプラクティスであるにもかかわらず実際の現場でよく実施されている、という状況も見受けられ、もどかしい思いをした経験があるかもしれません。これをエビデンスと診療現場の間に大きな隔たり(ギャップ)が存在するという意味で、「エビデンス・プラクティスギャップ(evidence-practice gap)」と呼びます。
 なぜこのようなギャップが生まれてしまうのでしょうか?

参考文献

1)Glanz K, et al. 2015/木原雅子,他(訳):健康行動学—その理論,研究,実践の最新動向.pp285-303, メディカル・サイエンス・インターナショナル,2018. 〈第16章は実装科学についてまとめられている〉
2)Brownson RC, et al(ed):Dissemination and implementation research in health ; translating science to practice, 2ed. Oxford University Press, New York, 2017. 〈実装科学の代表的な教科書。医療だけではなく、公衆衛生や職場、学校保健など、幅広い分野がカバーされている〉
3)Nilsen P : Making sense of implementation theories, models and frameworks. Implement Sci 10 : 53, 2015. PMID 25895742 〈煩雑となっていたTMFsを体系的にまとめた有名な総説〉
4)Everett MR : Diffusion of Innovations, 5th ed. Free Press, 2003.
5)エベレット・ロジャーズ(著),三藤利雄(訳):イノベーションの普及.翔泳社,2007.
6)Graham ID, et al : Lost in knowledge translation ; time for a map? J Contin Educ Health Prof 26(1) : 13-24, 2006. MID 16557505 〈代表的なプロセスモデルであるKnowledge to Action (KTA) Frameworkの元論文〉
7)Harrison MB, et al : Roadmap for a participatory research-practice partnership to implement evidence. Worldviews Evid Based Nurs 9(4) : 210-220, 2012. PMID 22672620 〈KTA Frameworkを開発した筆者らによる、実装のロードマップについてまとめた論文〉
8)National Cancer Institute. 2019/内富庸介(監修),梶有貴,他(監訳):ひと目でわかる実装科学—がん対策実践家のためのガイド.pp32-33, 36-37, 43.保健医療福祉における普及と実装科学研究会(RADISH),2021. 〈米国国立がん研究所の実装科学チームが出版した『Implementation Science at a Glance』の訳書。https://www.radish-japan.org/resource/isaag/index.htmlで全文無料公開〉
9)Baker R, et al : Tailored interventions to address determinants of practice. Cochrane Database Syst Rev 2015(4) : CD005470, 2015. PMID 25923419 〈要因に合わせた介入についてのコクランレビュー〉
10)Helfrich CD, et al : Responding to the call ; a new JGIM area of emphasis for implementation and quality improvement sciences. J Gen Intern Med 35(Suppl 2) : 781-782, 2020. PMID 33106999 〈JGIMの2020年11月のSupplement号が、実装科学と質改善科学の特集号となっている〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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