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文献概要
特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座 肥満は「病気」か?
❶—医療人類学の視点から—肥満は単に「生物医学的」な問題か?
著者: 美馬達哉1
所属機関: 1立命館大学大学院 先端総合学術研究科
ページ範囲:P.820 - P.824
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肥満を仲間と一緒に肯定する
小学校教員だったある女性は、太っているために結婚生活が破綻したと思い、体型に強い劣等感をもっていた。彼女は、甘いものを食べることに罪悪感があったが、「ファット・アクセプタンス運動」の総会のデザート・パーティーに勇気をもって参加して、仲間と楽しく過ごし、すべてのデザートを味わった。
彼女は、その経験を「太ったと思って帰ってから測ったら、逆に体重が何kgも減っていた。きっと楽しくリラックスしていたから。本当なのよ」と嬉しそうに語ったという。肥満には、数字で表される過体重だけではなく、情動や自己肯定に関わる心理的・社会的次元の問題が含まれているとわかる。(碇1)の事例7から再構成)
肥満を仲間と一緒に肯定する
小学校教員だったある女性は、太っているために結婚生活が破綻したと思い、体型に強い劣等感をもっていた。彼女は、甘いものを食べることに罪悪感があったが、「ファット・アクセプタンス運動」の総会のデザート・パーティーに勇気をもって参加して、仲間と楽しく過ごし、すべてのデザートを味わった。
彼女は、その経験を「太ったと思って帰ってから測ったら、逆に体重が何kgも減っていた。きっと楽しくリラックスしていたから。本当なのよ」と嬉しそうに語ったという。肥満には、数字で表される過体重だけではなく、情動や自己肯定に関わる心理的・社会的次元の問題が含まれているとわかる。(碇1)の事例7から再構成)
参考文献
1)碇陽子:「ファット」の民族誌—現代アメリカにおける肥満問題と生の多様性.明石書店,2018. 〈人類学者によるファット・アクセプタンス運動のフィールド調査に基づいた研究〉
2)山中浩司:肥満の医療化—社会的診断の20年.佐藤純一,美馬達哉,他(編著):病と健康をめぐるせめぎあい—コンテステーションの医療社会学.ミネルヴァ書房,2022. 〈医療社会学者による肥満問題の医療化と社会的構築を扱った論文〉
3)Helman CG. 2007 (5th ed)/辻内琢也,他(監訳):ヘルマン医療人類学—文化・健康・病い.金剛出版,2018. 〈医療人類学の標準的な教科書の1つ〉
4)Fryhofer SA : Is Obesity a Disease? (Resolution 115-A-12) CSAPH Report 3-A-13. American Medical Association, 2013. https://www.ama-assn.org/councils/council-science-public-health/public-health-csaph-reports(2022年6月6日現在) 〈肥満が疾病であるかを議論した、米国医師会による報告書〉
5)Allison DB, et al : Obesity as a disease ; a white paper on evidence and arguments commissioned by the council of the obesity society. Obesity(Silver Spring) 16(6) : 1161-1177, 2008. PMID 18464753 〈肥満が疾病であるかを丁寧に議論した報告書〉
6)Orbach S : Fat is a Feminist Issue. Arrow Books, London, 2016. 〈1978年(第1巻)と1982年(第2巻)にフェミニズムの観点から肥満を論じて話題となった書籍の合本に、著者による序文をつけた決定版〉
7)Gilman SL, 2011/小川公代,他(訳):肥満男子の身体表象—アウグスティヌスからベーブ・ルースまで.法政大学出版局,2020. 〈医学史家による肥満男性に関する通史〉
8)Berkman LF, et al(ed).2014/高尾総司,他(監訳):社会疫学(上・下).大修館書店,2017. 〈社会疫学に関する基本的な教科書〉
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