icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

総合診療32巻9号

2022年09月発行

雑誌目次

特集 総合診療・地域医療スキルアップドリル—こっそり学べる“特講ビデオ”つき!

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.1058 - P.1059

誰もが総合診療医としての知識とスキルを向上させたいと思っています。
しかし、ソロプラクティスで活躍することも多い総合診療医は、自分の診療を他者と比較したり、他の総合診療医の診療から学ぶ機会に乏しいのが現状です。そこで本特集では、❶“隣の臨床家”のスキルや知識のエッセンスを「ドリル形式」でわかりやすく解説し、
❷より幅広く“こっそり”学べる「ビデオ形式」で提供します。
各項目は、しまね総合診療医センター「NEURAL GP network」が島根県内の総合診療専攻医〜中堅総合診療医を対象に実施したアンケート調査より学習ニーズの高いテーマを抽出し、読者目線でさらに厳選したものです。
「ドリル×ビデオ」の相乗効果で学習効率を高め、総合診療・地域医療におけるスキルアップを図りましょう。

【総論】対談

総合診療医育成のニューノーマル—島根県の総合診療専攻医割合が日本一なワケ

著者: 和足孝之 ,   白石吉彦

ページ範囲:P.1060 - P.1069

 島根大学医学部附属病院「しまね総合診療医センター」は、2024年までに県内の総合診療専攻医割合を「22%」とすることを目標に掲げている。2022年の全国平均が「2.6%」であることを考えると、1桁違うのではないかと耳目を疑うが、まずは表11,2)を見てほしい。島根県の総合診療専攻医割合は2020年度から3年連続で全国1位、2022年度にはすでに「17.8%」を達成しており、夢物語ではなさそうだ。これを牽引するのが、同センターの総合診療医養成プロジェクト「NEURAL GP network」である。この「地域だけではない、大学だけでもない」持続可能な新たな“学びネットワーク”とは、どのようなものなのか? そのミッションを着実に実現しつつある、その戦略と秘訣とは?同センターのセンター長・副センター長に余すところなく語り合っていただいた。(編集室)

【各論】スキルアップドリル 厳選42選—“特講ビデオ”つき 【救急】

①「院外心肺停止蘇生後」の予後を決めるもの

著者: 田邊翔太

ページ範囲:P.1071 - P.1071

Case 82歳、男性。食事中に呼吸困難が出現し、意識がなくなったため救急要請。家族による心肺蘇生法が実施されていた。救急隊到着時の初期波形は無脈性電気活動(PEA)。搬送中に、アドレナリン投与と気管挿管が実施された。口腔内には多量の食物を認めたようである。病院到着直後に自己心拍が再開した。自己心拍再開後のバイタルサインは、血圧90/60mmHg、自発呼吸なし、JCS 300。意識消失から自己心拍再開までは20分である。

②非ICUでの「人工呼吸器管理」

著者: 岩下義明

ページ範囲:P.1072 - P.1072

Case 88歳、男性。元来ADLは自立。高齢の妻と2人暮らし。
 発熱を主訴に救急受診。呼吸数28回/分、SpO2 96%(室内気)、脈拍数114回/分、血圧98/65mmHg、意識レベルGCS E3V4M5、体温39.5℃。各種検査にて、急性腎盂腎炎による「敗血症」と診断した。培養検査を採取していたところ、嘔吐をきたし気道閉塞音著明、呼吸数42回/分、SpO2 74%(10L/分リザーバーマスク酸素投与下)となり、吸引を繰り返すもSpO2の改善に乏しい状態となった。気道緊急の状態であり、経口気管挿管を行った。直近の大学病院まで救急車で3時間かかる(そもそも高齢患者を受け入れてくれるとは思えない…orz)。明朝まではICUのない当院で頑張るしかない。

③エコーで「ショック」を網羅する!

著者: 遠藤健史

ページ範囲:P.1073 - P.1073

Case 54歳、男性。急に上腹部痛を感じ、数分かけて悪化した。その30分後、腹痛はやや改善したが、動くと苦しいため、救急外来を受診した。基礎疾患として、未治療の高血圧症・糖尿病がある。
身体所見:血圧70/37mmHg、脈拍数120回/分・整、呼吸数28回/分、SpO2 91%。肺音で両側にcracklesを聴取した。
超音波検査:肝胆膵に異常所見や胸水・腹水を認めず。左室収縮率低下・下大静脈径拡張を認めた。

【消化器】

④「腹部超音波検査」による胆道系の評価

著者: 岡本栄祐

ページ範囲:P.1074 - P.1075

Case 89歳、男性。腰椎圧迫骨折のため、整形外科に入院中。既往歴;高血圧症、Alzheimer型認知症。
 朝から発熱・嘔吐を認め、総合診療科にコンサルトがあり往診を行った。体温39℃、悪寒戦慄あり。眼球結膜に軽度の黄染を認める。血圧80/60mmHg、脈拍数100回/分、呼吸数30回/分、SpO2 96%(室内気)。右季肋部に軽度の圧痛があるが、腹膜刺激徴候はない。
腹部超音波:ベッドサイドエコーを行った(図1)。

⑤非専門医に求められる「上部消化管内視鏡検査」

著者: 岡本栄祐

ページ範囲:P.1076 - P.1077

Case 46歳、男性。地域の総合診療医、新型コロナ診療のためストレスが爆発寸前。
 2週間前より食欲不振・胸のつかえ感・早期満腹感を認め受診した。がん年齢に近づいており評価が必要と判断され、上部消化管内視鏡検査が施行された。施行後、主治医から「正常です。ピロリ菌のいない、きれいな胃ですね。心配ありません」と説明あり。

【循環器】

⑥地域で行う「急性心不全」の急性期管理

著者: 鈴木健太郎

ページ範囲:P.1078 - P.1078

Case 80歳、男性。受診1週間前から労作時息切れと両下肢浮腫を自覚するようになり、夜間に呼吸苦で目が覚め起坐呼吸で過ごすこともあった。受診当日の早朝より呼吸困難が続き、救急搬送された。
身体/画像所見:血圧130/80mmHg、脈拍数98回/分、呼吸数26回/分、SpO2 88%(室内気)。両肺喘鳴音と、両下腿〜足部に圧痕性浮腫を認める。胸部X線にて心胸比65%と、軽度の肺水腫像を認めた。

⑦「慢性心不全」の慢性期管理

著者: 鈴木健太郎

ページ範囲:P.1079 - P.1079

Case 70歳、男性。独居。既往歴;高血圧症、2型糖尿病。うっ血性心不全(クリニカルシナリオ2)で入院し、急性期加療が行われた。現在は、酸素投与・持続点滴は終了し、内服調整が行われている。安静時に症状はないが、軽い身体活動で労作苦の心不全症状が生じている(NYHA分類 Ⅲ度)。
検査所見:心エコー;LVEF(左室駆出率)35%、左室全周にびまん性壁運動低下を認める。臨床的に有意な弁膜症は認めない。冠動脈造影;冠血管に有意狭窄は認めない。

⑧非専門医による「経胸壁心エコー評価」

著者: 鈴木健太郎

ページ範囲:P.1081 - P.1081

Case 80歳、男性。高血圧症で通院中。日常生活は自立。夜間就寝中に突然の呼吸困難を自覚し、救急搬送された。身体所見;血圧170/98mmHg、脈拍数90回/分、SpO2 90%(室内気)。喘鳴音と心雑音を聴取する。胸部X線;心胸比拡大と、肺水腫を認める。「うっ血性心不全」の診断に至り、初期治療により症状とバイタルは改善。心雑音および心不全の原因疾患の精査目的に、経胸壁心エコー検査を緊急依頼した。
胸壁心エコー(抜粋):心拍数70回/分、洞調律。LVDd 53mm、LVDs 38mm、EF(2D)54.1%、EF(MOD)60%、LV motion normal。AOD 22mm、LAD 39mm、IVC呼気10.7mm、IVC吸気5.1mm(%IVC 52.3%)、IVS 13mm、PW 13mm。AS(+)/重症度severe、AVA(Dop)0.7cm2、Vmax 4.1m/秒、peak PG 68mmHg、mean PG 40mmHg。

【代謝・内分泌】

⑨「糖尿病」の初回診断症例には気をつけよう

著者: 並河哲志

ページ範囲:P.1082 - P.1082

Case 43歳、男性。1週間前からの口渇・多飲・多尿を自覚し受診した。これまでに糖尿病を指摘されたことはない。特記すべき既往歴なし。
身体所見:身長176cm、体重65kg。血圧120/71mmHg、脈拍数92回/分・整、呼吸数16回/分。身体所見に明らかな異常は認めない。
検査所見:HbA1c 6.4%、随時血糖値290mg/dL、尿ケトン陽性

⑩治療がうまくいかない「生活習慣病」患者の行動変容を促すには

著者: 永澤篤司

ページ範囲:P.1083 - P.1083

Case 55歳、男性。45歳時に2型糖尿病を指摘され他院に通院していたが、50歳で中断。54歳時にHbA1c 10.4%を指摘され、当院を受診。以後は外来で内服治療を行っているが、HbA1c 9%台で経過。
 身長170cm、体重100kg、BMI 34.6kg/m2。血圧124/74mmHg。HbA1c 9.8%。体重・HbA1cとも前回と変わりなし。減量しようと間食を減らしたが、職場の付き合いもあり、やめることはできなかったとのこと。

⑪緊急性を要する「高血糖」への対応

著者: 永澤篤司

ページ範囲:P.1084 - P.1084

Case 20歳、女性。X-2日から発熱・腹痛・嘔吐があり、近医を受診し胃腸炎と診断された。その後も症状が改善せず、X日に救急外来を受診した。既往歴はなく、高血糖の指摘もない。飲酒歴なし。JCSⅠ-1、血圧103/62mmHg、脈拍数130回/分、体温37.4℃、SpO2 99%(室内気)。身長163cm、体重56.8kg、BMI 21.4kg/m2
血液検査:血糖549mg/dL、HbA1c 5.6%、Na 128mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 91mEq/L、UN 28mg/dL、Cr 0.7mg/dL

【腎臓】

⑫「慢性腎臓病」患者の栄養指導

著者: 小田川誠治

ページ範囲:P.1085 - P.1085

Case 65歳、男性。腎硬化症を原疾患とする慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)のため定期通院中。常用薬はアムロジピン5mgのみ。糖尿病の合併はない。定期受診外来で、本人から透析導入遅延のための栄養指導の相談を受けた。身長171cm、体重65kg、BMI 22.2。家庭血圧120台/70台mmHg。
検査所見:BUN 29.9mg/dL、Cr 2.12mg/dL(eGFR 25.7mL/分/1.73m2)、K 5.8mEq/L。尿蛋白/Cr比0.33mg/g・Cr。

⑬「糖尿病腎症」には要注意!

著者: 小田川誠治

ページ範囲:P.1086 - P.1086

Case 68歳、男性。糖尿病腎症を原疾患とする慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)のため定期通院中。1年前まではCr 2mg/dL前後で経過していたが、ここ1年は腎機能低下が進行している。2年前から微量アルブミン尿を認める。患者は以前から、腎代替療法が必要になった時には血液透析を希望している。本日の検査結果を受け、患者から「透析は近いでしょうか? 準備は必要ですか?」と質問を受けた。身長169cm、体重61kg。自覚症状はない。浮腫は認めない。
検査所見:BUN 31.4mg/dL、Cr 3.01mg/dL(eGFR 17.3mL/分/1.73m2

⑭急性心不全に合併した「急性腎不全」の管理

著者: 牧石徹也

ページ範囲:P.1087 - P.1087

Case 78歳、男性。大動脈弁狭窄症・高血圧症に対してかかりつけ医で内服治療を受け、安定して経過していた。数日前から発熱・喀痰が出現し、徐々に労作時に呼吸困難を感じるようになり、救急外来を受診した。
身体所見:血圧180/88mmHg、脈拍数90回/分・整、体温37.2℃、呼吸数24回/分、SpO2 89%(室内気)。坐位にて頸静脈怒張あり。両側肺に捻髪音、また2RSBに収縮期駆出性雑音を聴取。
検査結果:血液;BUN 77mg/dL(1カ月前18mg/dL)、Cr 3.33mg/dL(同0.95mg/dL)、Hb 10.2g/dL、WBC 14,800/μL。胸部X線;肺うっ血像と左下肺野に浸潤影を認める。
 以上より、喀痰培養検査を提出し、抗菌薬治療を開始した。

【血液】

⑮定期受診時に相談された「リンパ節腫脹」

著者: 小笹亮太郎

ページ範囲:P.1088 - P.1088

Case 83歳、女性。杖歩行。不眠症・皮瘙痒症で開業医に通院中。処方薬がなくなったために受診した際に、右の鎖骨上にグリグリとしたしこりがあると相談を受けた。体調は普段と変わりなし。既往歴;胃潰瘍胃切除術、心臓ペースメーカー留置(基幹病院循環器科通院中)。
診察所見:身長150cm、体重38kg。体温36.2℃、血圧125/70mmHg、脈拍数60回/分・整。意識は普段どおり清明で、意思疎通は問題なく行える。右鎖骨上窩に指頭大の可動性のある平滑な腫瘤を複数触知する。超音波検査;直径8〜21mmで類円形、内部に正常リンパ節門構造を伴わず、周囲に血流増加を認めるリンパ節を複数認める。

【感染症】

⑯「重症感染症」に対するERでの初期対応

著者: 樋口大

ページ範囲:P.1089 - P.1089

Case 70歳、男性。病院通院歴なし。20本/日(20歳〜)の喫煙歴、日本酒3合/日の飲酒歴あり。朝から体調が悪いと言っていた。夕方、家人が見にいくと意識朦朧状態であり、救急車を要請した。
身体所見:身長160cm程度、やせ型。血圧60/30mmHg、脈拍数120回/分、呼吸数40回/分、SpO2 90%(10Lリザーバーマスク酸素投与下)、体温40℃、GCS E2V2M4。右肺で低調性断続性ラ音を聴取。
胸部X線:右上葉に大葉性肺炎の所見あり。

⑰臨床に直結して役立つ「グラム染色」

著者: 高橋賢史

ページ範囲:P.1090 - P.1090

Case 85歳、女性。脳梗塞後遺症あり、寝たきり・胃ろう造設状態で施設入所中。
 発熱・咳・喀痰増加のため、病院救急外来を受診。血圧130/70mmHg、脈拍数110回/分、体温38.5℃、呼吸数26回/分、SpO2 93%。胸部X線にて、右下肺野に淡い浸潤影を認めた。A-DROP 3点、CURB-65 2点。「肺炎」と診断し、起因菌の検索目的で喀痰グラム染色を実施した。
グラム染色:Geckler 3群、グラム陽性双球菌(3+)、グラム陰性双球菌(3+)を認め、両者の菌とも白血球貪食像を認めた。

⑱入院患者の「発熱」のアセスメント

著者: 樋口大

ページ範囲:P.1091 - P.1091

Case 80歳、男性。発熱・喀痰を主訴に受診。胸部X線にて右下肺野に肺炎像を認め、セフトリアキソンによる加療を1週間行った。入院時の喀痰グラム染色はpolymicrobial patternで、培養では有意な菌の分離をみていない。入院後は解熱し、呼吸状態も安定、胸部X線所見も改善し、明日退院予定であったが、再熱発した。
身体所見:血圧100/50mmHg、脈拍数90回/分、呼吸数28回/分、SpO2 93%(室内気)、体温38.5℃。右肺底部で低調性断続性ラ音を聴取し、湿性咳嗽あり。

【呼吸器】

⑲胸部X線読影の基本:「葉」と「肺野」の区別を厳密に

著者: 長尾大志

ページ範囲:P.1092 - P.1093

Case 60代、女性。健診にて胸部X線写真(図1)に異常影があり紹介受診。

⑳wheezeを伴う呼吸困難は「喘息」か「COPD」か

著者: 長尾大志

ページ範囲:P.1094 - P.1094

Case 60代、男性。3年前に呼吸困難を主訴に当科受診。チオトロピウム(スピリーバ®)とサルメテロール・フルチカゾン(アドエア®)を開始され、禁煙を勧められたが、その後再診せず、以降も他院を含め受診することはなかった。喫煙歴:40本/日×44年。
 1カ月前にかぜをひき、咳・痰が出て呼吸が苦しかった。最近1週間は夜間に横になれず、坐位で過ごしていた。昨晩は横になって眠れたが、途中3時頃に起きた。本日、午前中は問題なかったが、午後に呼吸が少し困難になり声が出にくくなった。歩くのもつらくなり、横になるのも少し苦痛である。3年前の呼吸困難よりは軽いというが、同じような症状であり受診に至った。
身体所見:安静呼吸時の肺音聴診にて、呼気時にwheezesを認めた。

㉑「慢性の間質性肺炎」の原因は?

著者: 長尾大志

ページ範囲:P.1095 - P.1095

Case 70代、男性。数カ月前から咳が出てきて、だんだんひどくなっている。1年前に健診で「間質性肺炎」と言われた。歩くと呼吸困難感がある。安静呼吸時の肺音聴診にて、吸気時後半にfine cracklesを認めた。胸部X線写真(図1)。
既往歴:40歳頃から糖尿病 
喫煙歴:30本/日×39年、55歳頃に禁煙

㉒「気胸」のドレーン管理と胸部X線撮影

著者: 長尾大志

ページ範囲:P.1096 - P.1096

Case 19歳、男性。大学の授業中に急に右胸の痛みを自覚し、それに引き続き咳き込みが生じた。だんだん息苦しくなってきたため、徒歩で病院外来を受診した。既往歴に特記すべき事項なし。喫煙経験なし。
身体所見:身長184cm、体重60kg。SpO2 95%、血圧124/74mmHg、脈拍数96回/分・整、呼吸数24回/分。肺音聴診にて右呼吸音が少し聴こえにくく、打診で鼓音を認める。
 胸部X線写真にて「右自然気胸」と診断され、胸腔ドレナージチューブを挿入した。

【神経】

㉓「脳梗塞」の内科的治療の進め方

著者: 福田瑶子

ページ範囲:P.1097 - P.1097

Case 75歳、男性。糖尿病と高血圧症で内服治療中。喫煙20本/日。
 起床時より右手足の脱力を自覚し改善せず、6時間後に救急外来を受診した。身体所見;血圧184/112mmHg、脈拍数74回/分・整、SpO2 97%。軽度の構音障害と、顔面を含む右半身不全麻痺を認めた。
検査所見:脳MRI;拡散強調画像で左中大脳動脈分水嶺領域に高信号となる病変を認め、FLAIR画像でも同じ部位に高信号あり。脳MRA;頭蓋内の主幹動脈に狭窄なし。血液;血糖176mg/dL、HbA1c6.8%、LDL-Chol 156mg/dL。頸動脈超音波;左内頸動脈起始部に高度狭窄(NASCET 85%)を認めた。

㉔「Parkinson病」の長期的臨床経過と非専門医による治療

著者: 飯島献一

ページ範囲:P.1098 - P.1098

Case 68歳、男性。几帳面な性格。健診にて血圧上昇を指摘され受診した。他の症状として、農作業中の右手の使いにくさと、妻から夜に寝言が多いと指摘された。服薬歴なし。身体所見:血圧140/90mmHg。右側優位のごく軽度の筋固縮あり。
臨床経過:1年後、右手に振戦が出現、やや前傾姿勢の歩行となった。Parkinson病を考慮してドパミンアゴニストで治療を開始し、漸増により症状改善。しかし症状緩徐進行性で、発症5年後、両手の振戦が顕在化し、筋固縮中等度・動作緩慢となり、L-DOPAを追加。発症15年後には易転倒性・嚥下障害が出現した。デイサービス利用中に38℃の発熱で受診、軽度の誤嚥性肺炎にて入院。絶食・抗菌薬投与にて改善したが、その後、再度39℃の発熱・全身筋硬直・大量の発汗を認めた。

㉕「せん妄」は多種多様な対策が必要!

著者: 遠藤健史

ページ範囲:P.1099 - P.1099

Case 88歳、男性。肺炎で入院後、幻視を伴う興奮がみられ、入院継続困難であると、病棟看護師から主治医に連絡があった。基礎疾患に認知症・糖尿病がある。
診察所見:体温38.8℃、呼吸数26回/分。落ち着かずキョロキョロと周囲を見て、会話は成立せず、少し苦しそうな表情をしている。四肢に麻痺はみられず、中空をつかむように両手を動かしている。命令には従わない。

【皮膚】

㉖「壊死性筋膜炎」の診断・管理

著者: 千貫祐子 ,   山﨑修

ページ範囲:P.1100 - P.1100

Case 54歳、女性。主訴;右肩痛。朝から右肩に疼痛があり、消炎鎮痛薬を内服したが改善せず、就寝後もうなされるほど痛みが強く、22時に救急外来を受診。X線にて明らかな骨折はなく、いったん帰宅となった。2日後、右肩・右上肢の痛みがどんどん増悪しているとのことで、車椅子で同院を再受診した。血圧136/62mmHg、脈拍数103回/分・整、体温37.4℃。
身体所見:右側胸部に淡い紅斑があり、右側胸部から背部に腫脹がみられた。熱感は認めなかった。

㉗要介護高齢者の「褥瘡」の管理

著者: 吹譯紀子 ,   白石吉彦

ページ範囲:P.1101 - P.1101

Case 88歳、男性。施設入所中、要介護5。寝たきり全介助。簡単な内容なら意思疎通がとれる。半年前から食事摂取量が少しずつ減っており、体重が10kg減少。既往;脳梗塞、高血圧症、脂質異常症。常用薬;シロスタゾール、アムロジピン、ロスバスタチン。施設にて陰部洗浄介護の際、臀部に潰瘍病変があるのに職員が気づき、当院を受診した。
皮膚所見:仙骨部に一部黒色変化を伴った3cm大の発赤を認める。

【精神】

㉘「抗うつ薬」使用中に軽躁状態を呈したら

著者: 高尾碧

ページ範囲:P.1102 - P.1102

Case 52歳、男性。元来、口数は少なく穏やかな性格。高血圧症・脂質異常症があり外来通院中。
 6カ月前より腰痛が悪化し、解熱鎮痛薬を使用するが症状は改善せず、3カ月前より「慢性腰痛症」に適応のある抗うつ薬の併用を開始した。疼痛は軽減しつつあったが、1カ月前より多弁・気分高揚・乱費を認め、対応に困った妻と外来を受診した。
現症:身長175cm、体重80kg。SpO2 100%、血圧135/86mmHg、脈拍数98回/分、呼吸数26回/分。普段の診療場面と比べると明らかに多弁であり、外来担当医の話を遮り、一方的に話している。妻がたしなめると、それに対して診察室の中で怒声をあげることもある。甲状腺機能を含む血液検査では異常を認めなかった。

㉙「向精神薬を減らしたい」と言われたら

著者: 高尾碧

ページ範囲:P.1103 - P.1103

Case 60歳、女性。神経質な性格。糖尿病があり外来通院中。以前より心気的な訴えが続き、抗不安薬を3剤併用している。ふらつきのため耳鼻科を受診したところ、「抗不安薬の影響があるかもしれない」と指摘された。これまでは薬の増量を希望することが多かったが、今回は「薬を減らしたい」と訴えている。
現症:身長157cm、体重56kg。SpO2 100%、血圧125/80mmHg、脈拍数80回/分、呼吸数18回/分。やや不安そうな表情ではあるが、穏やかに対応する。薬の錠数が多いことが気になり始めてからは、内服すること自体が億劫になり、不安感が強まっているという。

【泌尿器】

㉚「頻尿」の陰に潜むのは…

著者: 安食春輝

ページ範囲:P.1104 - P.1105

Case 61歳、女性。1カ月前から続く頻尿と排尿後違和感のため、かかりつけ内科を受診。尿検査所見に異常を認めず、「過活動膀胱」としてβ3作動薬(ミラベグロン)を処方された。しかし、その後も症状は改善せず、当院外来を受診した。
検査所見:尿定性;蛋白(-)、潜血(±)、糖(4+)。尿沈査;赤血球1〜4/HPF、白血球1〜4/HPF、扁平上皮<1/HPF。残尿測定;60mL。

【妊産婦】

㉛高血圧を伴う「妊婦」のけいれん

著者: 加藤一朗

ページ範囲:P.1106 - P.1106

Case 35歳、女性。妊娠30週。上腹部痛を主訴に救急外来を受診した。身長165cm、体重90kg。血圧180/120mmHg。上腹部に圧痛を認めた。超音波検査で胎児を確認しようとしたところ、けいれん発作を起こした。
血液検査:AST 190IU/L、ALT 300IU/L、LDH 700U/L、Plt 90,000/μL

㉜「妊娠中の服薬」の胎児への影響

著者: 加藤一朗

ページ範囲:P.1107 - P.1107

Case 32歳、女性。2週間前に膀胱炎の症状で受診。抗菌薬を処方され内服後に症状軽快するも、本日市販の妊娠検査薬で陽性となり、薬の影響を心配して再受診した。
「先生、先日飲んだ薬が赤ちゃんに影響しないか心配です。どうしたらいいのでしょうか?」

【小児】

㉝「予防接種後」の症状への対応

著者: 樋口強

ページ範囲:P.1108 - P.1108

Case 生後6カ月、男児。BCGワクチン接種の翌日、針痕部に発赤が生じたため、保護者が心配し受診した。家族歴;結核の既往や慢性咳嗽はない。
身体所見:体温36.5℃。針痕部14カ所に発赤がある(図1)。硬結・熱感はない。

㉞「乳幼児健診」に関連する対応

著者: 樋口強

ページ範囲:P.1109 - P.1109

Case 生後4カ月、女児。周産期情報;骨盤位であったため、在胎38週に産科診療所で選択的帝王切開で出生した。出生体重3,000gで、経過は母子とも問題なかった。
 予防接種で来院の際、「自治体の4カ月児健診の日に発熱があり、健診を受けられなかった。延期分の健診を予約できていないが、まだ大丈夫だろうか?」と、母親から相談があった。家族歴;母親は小児期に股関節疾患があった。
身体所見:体重7,000g、身長65.0cm。定頸は完了している。あやすと笑う。両側股関節に開排制限なし。大腿や鼠径の皮膚の皺は左右対称である。

【POCUS(エコー)】

㉟「膝関節液貯留」の診断とエコーガイド下膝関節穿刺

著者: 黒谷一志

ページ範囲:P.1110 - P.1110

Case 85歳、女性。息子と2人暮らし。伝い歩きでの生活。既往歴;甲状腺機能低下症、両変形性膝関節症。
 前日から左膝関節の痛みが出現。痛みが持続し、動くこともできなくなったため、救急車を要請し搬送された。
身体所見:体温37.2℃、血圧162/80mmHg、脈拍数101回/分、SpO2 97%、呼吸数20回/分。左膝関節の熱感・腫脹・圧痛を認める。

㊱「肋骨骨折」のエコー診断

著者: 簡野泰光

ページ範囲:P.1111 - P.1111

Case 87歳、男性。自宅にて床に足が引っかかり転倒し、左季肋部を打った。痛みが続くため独歩で外来受診した。バイタルサイン;血圧157/87mmHg、脈拍数53回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 98%(室内気)。以下の身体所見から「肋骨骨折」が疑われた。
身体所見:右第10肋骨腋窩中線に、限局した圧痛点あり。

㊲「エコー下穿刺」のコツ

著者: 福田聡司

ページ範囲:P.1112 - P.1112

Case 指導医に、研修医から「エコーを用いた注射がうまくできません。何かコツがありますか?」と相談があった。具体的に聞くと、「平行法・交差法ともに針先描出ができない」「平行法で穿刺する際に狙った所へ針が刺せない」「注射をする際にとても痛がられて、次回から注射を断られる」といった悩みがある様子であった。

【地域医療・家庭医療】

㊳現場で役立つ「患者中心の医療の方法」

著者: 高橋賢史

ページ範囲:P.1113 - P.1113

Case 60歳、女性。10年前から糖尿病で治療中。シタグリプチンリン(50mg)/メトホルミン(500mg)配合剤およびボグリボースを内服中だが、1年前より血糖コントロールが悪化し改善しないとのこと。近隣開業医より糖尿病教育入院の依頼で紹介受診した。しかし患者は、「入院はできない」と述べた。検査所見:空腹時血糖400mg/dL、HbA1c 11.5%。HOMA-β 20%、HOMA-R 6。1型糖尿病の抗体は陰性。

㊴多因子が絡み合う現場における「意思決定支援」

著者: 上村祐介

ページ範囲:P.1114 - P.1114

Case 89歳、男性。妻(87歳、要介護3)、次女(58歳、日中は勤務、離婚後)と山間地で3人暮らし。同地区唯一の診療所にかかっている。昨年末に肝臓がんが発覚するも、本人には告知されていない。
 3週間前から食欲不振・ADL低下がみられ、一時的な入院対応の依頼で当院紹介となった。受診時、本人は「妻の介護、畑…やらないといけないことがある。原因を教えてほしい。早くよくして家に帰りたい」、家族は「本人の不安を招くので告知しないでほしい」と話された。基礎疾患に慢性心不全があるも、がんの経過も含め全身状態は安定しているが、ここ半年で体重は-7kg。認知機能・意思決定能力は諸評価で問題なし。

㊵日常診療に応用する「家族志向型ケア」

著者: 上村祐介

ページ範囲:P.1115 - P.1115

Case 46歳、女性。頸椎椎間板ヘルニア・全般性不安障害が基礎にあり他院通院中。2度の離婚歴あり。生活保護受給。婚姻関係のない男性と2人暮らし。飲酒なし。
 「突発的に右足がピキッと痛くなる」という症状のため、これまでも多数の整形外科と精神科を受診したが「原因がわからない」と説明され、薬を使ってもよくならないため当院を初受診した。トラマドール・アセトアミノフェン配合錠を導入したが、2週間後の再診時には症状が悪化していた。本人より「母親との関係がうまくいかない。これまでも母やパートナー、娘のことなどが関わると症状が悪化しているように思う」と話があった。追加した問診・検査からは器質的疾患は考えにくい。

㊶病院・診療所を“診断・治療”する「チームマネジメント」

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.1116 - P.1116

Case 病院の緊急の経営会議において、❶救急外来の看護師の離職率が高いこと、❷月間救急搬送の謝絶件数の増加による収益の減少、が議題にあがった。病院幹部はこぞって救急部長1人の責任を指摘していた。あなたはサポートとして救急外来に月4回以上勤務しているため実情をよく理解しており、意見を求められた。

㊷周りが動き出す「リーダーシップ」

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.1117 - P.1117

Case あなたは卒後12年目の医師、総合診療部を立ち上げる「リーダー」に院長から任命された。しかしあなたは、“自分の仕事には真面目だが周囲の話を聞くことができない上司”と“診療科内の問題に不平不満は多いが自分から動くことは少ない後輩”の間に挟まれており、今後「リーダーシップ」を発揮すべき役割に強い不安を感じている。また、これまでリーダーとして活躍した経験もなく、周囲の人を巻き込むことが苦手で、「リーダーシップをとる才能がない」と考えている。

Editorial

「ドリル×ビデオ」の相乗効果で必要なだけスキルアップを

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.1047 - P.1047

総合診療という言葉の定義は、セッティングの違いや臨床経験の差によって、それぞれ少し異なって見えるかもしれない。しかし、これはバイアスである。筆者の経験的には、一度でも一緒に働いてみれば、少し異なって見えた“隣の総合診療”も、実際にはほとんど差がないことが実感できる。一方で、わずかな違いが見つかったなら、臨床現場において、その小さな差分は貴重な学びのチャンスになる。
 島根県では、総合診療医を育成するという目標のため、総合診療医・家庭医を中心として、それぞれの違いを乗り越えるべく、出身大学や病院間の垣根を取り払って集い、ヒネラルキーなく活躍する「NEURAL GP network」(p.1060)を構築した。振り返ってみれば、いつの間にか島根は、都道府県別の全専攻医に対する「総合診療専攻医割合」において、3年連続で日本一となっていた。

What's your diagnosis?[237]

典型的であり、典型的でない

著者: 田中孝正 ,   酒見英太

ページ範囲:P.1050 - P.1053

病歴
患者:51歳、女性
主訴:食欲がない
現病歴:高血圧症、脂質異常症に対して近医よりアムロジピン、アジルサルタン、カルベジロール、エゼチミブとビタミンB・C配合錠を定期処方されている閉経後の専業主婦。喫煙・飲酒はしない。両下肢の壊疽性膿皮症に対して11年前から開始されていたステロイドを漸減され、3日前に中止されたところである。入院2週間前から食事がとれなくなり、嘔吐も複数回あった。家事などやる気が起きず自宅で休んでいる。体温を測定すると37〜38℃程度であったため、入院1週間前に近医でレボフロキサシンの処方を受けるも改善せず、紹介入院となった。
陰性症状:眼の充血・霧視、鼻汁・鼻閉・鼻出血、口内炎・咽頭痛、咳嗽・喀痰、胸痛、呼吸困難、腹痛・下痢・血便、背部痛・腰痛、残尿感・排尿時痛、異常帯下・陰部痛、関節痛・筋肉痛、新たな皮膚病変、しびれ・脱力
既往歴(上記以外):胃粘膜下腫瘍(9年前から変化なし)、両側乳腺過誤腫(3年前から変化なし)、アレルギーなし
家族歴:母:乳癌、父:脳出血・高血圧症

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・29

コロナへの恨み

著者: 中山明子

ページ範囲:P.1054 - P.1055

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

高齢者診療スピードアップ塾|効率も質も高める超・時短術・9

「ルーチン検査」をやめれば時短になるか?

著者: 増井伸高

ページ範囲:P.1120 - P.1122

 ルーチン検査には、必要なものと、他の検査に代替され不要となっているものがあります。高齢者で“省略可能”なルーチン検査が判断できれば、時短診療につながります。省略できない検査でも、“タイミング”を工夫すれば時短可能です。そこで今回は、高齢者診療の「ルーチン検査」について考えてみましょう。

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・68

関節炎が1つから2つへ増えた時

著者: 伊藤恭平 ,   與那覇忠博 ,   新里敬 ,   徳田安春

ページ範囲:P.1123 - P.1126

CASE
患者:30代、男性。
主訴:受診3日前からの左手関節痛。
現病歴:受診3日前から特に誘因なく左手関節痛を自覚していた。2日前から痛みが増強、左手首を曲げるとさらに増強し、同部位の腫脹と熱感もみられるようになった。自宅にあったアセトアミノフェンとトラマドールの配合錠(トラムセット®)を服用して様子を見たが、関節痛は治まらなかったため、当院夜間救急外来を受診した。
併存症:不眠症、膵頭部囊胞。
既往歴:急性膵炎、腰椎椎間板ヘルニア手術。
内服薬:ゾピクロン。
生活歴:喫煙:20本/日×30年、飲酒:ハイボール ジョッキ4、5杯/日を毎日。
家族歴:特記事項なし、結核なし。
職業:飲食店経営。
アレルギー:ナファモスタットでアナフィラキシーショック。
review of system:左手関節の疼痛、腫脹、発赤、熱感あり。発熱なし、悪寒戦慄なし、腹痛なし、下痢なし、排尿時痛なし。1カ月以内の受傷歴なし。仕事上、四肢を酷使することはない。

フィジカル・ラウンド・オンライン・5

“いつもの病気”を丁寧に考える

著者: 山口高史 ,   矢吹拓 ,   平島修

ページ範囲:P.1144 - P.1149

平島:今月もPROの時間がやってきました!
矢吹:お願いします! 一例一例これだけ丁寧に振り返れるのって貴重ですよね。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・30

日光浴は「どのぐらい」必要ですか?

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.1150 - P.1155

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはありませんが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

【臨床小説—第二部】後悔しない医者|今と未来をつなぐもの・第29話

日々共有する医者

著者: 國松淳和

ページ範囲:P.1156 - P.1161

前回までのあらすじ 今月のナゾ
 右井が誤った診立てをした。患者は75歳・女性、機能性の下痢に対して処方された漢方薬(半夏瀉心湯)による「薬剤性肺障害」を見逃しそうになったのだ。数日前に診療していた向後も、その徴候に気がつかなかった。しかし西畑が「なんとなく変」という違和感から見抜き、幸い事なきを得られたのだった。なぜ気づいたかを右井が問うと、西畑は「聴こえた」と答えた。西畑は聴診を行ったわけではない。いったい何が聴こえたというのか?
 誤りがないよう細心の注意を払っても、それでも間違うことはある。誰かが気づき、カバーする。そのための「チーム」であり、そして「カンファレンス」がある。互いの診療を共有し、屈託なく語り合う向後チームのありようには、さまざまな可能性が広がっている。そして今日も、向後チームは新たな患者さんに向かい合う。

投稿 GM Clinical Pictures

内服直後に生じた喉の痛み

著者: 梶原祐策

ページ範囲:P.1127 - P.1129

CASE
患者:75歳、女性。
現病歴:朝食後の薬を内服してすぐに喉の痛みを感じ始め、当科を緊急受診された。
既往歴:3カ月前から腰部脊柱管狭窄症で通院中。
内服薬:リマプロストアルファデクス(オパルモン®)5μg錠、メコバラミン(メチコバール®)500μg錠、アセトアミノフェン(カロナール®)200mg錠をいずれも1回1錠1日3回、毎食後に服用。
身体所見:身長154cm、体重44kg。体温36.4℃、血圧152/60mmHg、脈拍数100回/分。口腔内に異常なし、頸部に腫脹・発赤なし、呼吸音は清明。
画像所見:頸部単純CT(図1)。

総合診療外来

滑って転んで1・2・3!

著者: 瀨堂川拓 ,   鬼頭知宏 ,   土肥栄祐

ページ範囲:P.1130 - P.1131

症例
患者:65歳、男性。
主訴:複視。
既往歴:10代で動眼神経麻痺(精査過程については不明)。
内服薬:なし。
現病歴:来院2日前に自宅内で転倒し、後頭部を打撲した。近医を受診したところ頭部CTを撮影されたが、異常所見を認めず帰宅した。帰宅後、複視が出現してきたため再受診され、頭部CT再検査にて異常を認めず、経過観察となった。症状は変わらず、精査希望にて当院を受診した。受傷から来院まで、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐は認めなかった。
身体所見:軽度の右眼瞼下垂を認め、対光反射が右で鈍かった。複視は左方視で最も増強された。
検査所見:HbA1c 5.3%、頭部MRI・MRAでは占拠性病変、動脈瘤を認めず。

#総合診療

#今月の特集関連本❶

ページ範囲:P.1069 - P.1069

#今月の特集関連本❷

ページ範囲:P.1075 - P.1075

#今月の特集関連本❸

ページ範囲:P.1093 - P.1093

#今月の特集関連本❹

ページ範囲:P.1105 - P.1105

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.1135 - P.1135

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.1137 - P.1137

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.1139 - P.1139

#今月の連載関連本

ページ範囲:P.1122 - P.1122

#医学書院の新刊

ページ範囲:P.1140 - P.1141

#書評:—チーフレジデント直伝!—デキる指導医になる70の方法—研修医教育・マネジメント・リーダーシップ・評価法の極意

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1119 - P.1119

 本書の役割は、巻末の対談で野木真将先生がおっしゃっている「(リーダー育成のための解決法に対しての)みんなの共通認識を広げ、育てるツールとして役立ってほしい(p.331)」という言葉に集約されていると感じます。日米の伝統的なチーフレジデント制度をもつ研修病院でチーフレジデントを経られたメンバーらが、指導医として、ミドルレベルのマネジャーとして、教育者として、どのようなことに気をつけながら診療・教育・マネジメントを実践していけばよいか、を指南してくださっています。しかし、押しつけのような形ではなくソフトな語り口調で、「研修教育をしたことがない」「自信がない」という読者のみなさんにも、入りやすい構成になっているのではないかと思います。

#書評:臨床研究21の勘違い

著者: 香坂俊

ページ範囲:P.1142 - P.1142

 critical appraisalはしばしば「批判的吟味」と訳される。医療の現場では「論文やエビデンスを簡単に使用するな!」という否定的なニュアンスで用いられることが多いが、個人的には「エビデンスを構築してくれた研究者たちに敬意を払いつつも、油断はしない」というように、少し柔らかいニュアンスでとらえてもよいのではないかと考えている。
 このcritical appraisalであるが、以前は研究をたしなむ人たちのための高尚な技能のような位置づけで、学会などで壇上の先生方の意見などをうかがいながら、なるほど、こういうふうに考えるのか、などと構えていればよかった。しかし最近は、わりとキャリアの早い時期に「身につけなくてはならない技術」という位置づけになってきている(ちょうど問診・身体診察やカルテ記載の技法のように)。

#書評:—外来・病棟・地域をつなぐ—ケア移行実践ガイド

著者: 筒泉貴彦

ページ範囲:P.1143 - P.1143

 「筒泉先生、米国ではケア移行(transition of care)はやっぱりすごいんですか?」
 これは、私が練馬光が丘病院で勤務している際に、本書の編者である小坂鎮太郎先生よりいただいた質問である。

--------------------

目次

ページ範囲:P.1048 - P.1049

『総合診療』編集方針

ページ範囲:P.1057 - P.1057

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。
2018年1月  『総合診療』編集委員会

読者アンケート

ページ範囲:P.1133 - P.1133

『総合診療』バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1162 - P.1163

お得な年間購読のご案内

ページ範囲:P.1163 - P.1164

次号予告

ページ範囲:P.1165 - P.1166

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

33巻12号(2023年12月発行)

特集 海の外へ渡る航行者を診る—アウトバウンドにまつわるetc.

33巻11号(2023年11月発行)

特集 —続・総合診療外来に“実装”したい—最新エビデンスMy Best 3

33巻10号(2023年10月発行)

特集 ○×クイズ110問!日常診療アップグレード—Choosing WiselyとHigh Value Careを学ぼう

33巻9号(2023年9月発行)

特集 ジェネラリストのための「発達障害(神経発達症)」入門

33巻8号(2023年8月発行)

特集 都市のプライマリ・ケア—「見えにくい」を「見えやすく」

33巻7号(2023年7月発行)

特集 “消去法”で考え直す「抗菌薬選択」のセオリー—広域に考え、狭域に始める

33巻6号(2023年6月発行)

特集 知っておくべき!モノクロな薬たち(注:モノクローナル抗体の話ですよ〜)

33巻5号(2023年5月発行)

特集 —疾患別“イルネススクリプト”で学ぶ—「腹痛診療」を磨き上げる22症例

33巻4号(2023年4月発行)

特集 救急対応ドリル—外来から在宅までの60問!

33巻3号(2023年3月発行)

特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで

33巻2号(2023年2月発行)

特集 しびれQ&A—ビビッとシビれるクリニカルパール付き!

33巻1号(2023年1月発行)

特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え

32巻12号(2022年12月発行)

特集 レクチャーの達人—とっておきの生ライブ付き!

32巻11号(2022年11月発行)

特集 不定愁訴にしない“MUS”診療—病態からマネジメントまで

32巻10号(2022年10月発行)

特集 日常診療に潜む「処方カスケード」—その症状、薬のせいではないですか?

32巻9号(2022年9月発行)

特集 総合診療・地域医療スキルアップドリル—こっそり学べる“特講ビデオ”つき!

32巻8号(2022年8月発行)

特集 こんなところも!“ちょいあて”エコー—POCUSお役立ちTips!

32巻7号(2022年7月発行)

特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座

32巻6号(2022年6月発行)

特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス—My Best 3

32巻5号(2022年5月発行)

特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況

32巻4号(2022年4月発行)

特集 えっ、これも!? 知っておきたい! 意外なアレルギー疾患

32巻3号(2022年3月発行)

特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル—君は生き延びることができるか?

32巻2号(2022年2月発行)

特集 —withコロナ—かぜ診療の心得アップデート

32巻1号(2022年1月発行)

特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学

31巻12号(2021年12月発行)

特集 “血が出た!”ときのリアル・アプローチ—そんな判断しちゃダメよ!

31巻11号(2021年11月発行)

特集 Q&Aで深める「むくみ診断」—正攻法も!一発診断も!外来も!病棟も!

31巻10号(2021年10月発行)

特集 医師の働き方改革—システムとマインドセットを変えよう!

31巻9号(2021年9月発行)

特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?

31巻8号(2021年8月発行)

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。

31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

27巻8号(2017年8月発行)

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!

27巻7号(2017年7月発行)

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編

27巻6号(2017年6月発行)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

27巻5号(2017年5月発行)

特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!

27巻4号(2017年4月発行)

特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。

27巻3号(2017年3月発行)

特集 これがホントに必要な薬40—総合診療医の外来自家薬籠

27巻2号(2017年2月発行)

特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

27巻1号(2017年1月発行)

特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

icon up
あなたは医療従事者ですか?