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雑誌目次

雑誌文献

総合診療33巻1号

2023年01月発行

雑誌目次

特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え

著者: 山中克郎 ,   鎌田一宏

ページ範囲:P.22 - P.23

世界中の人々の生活を劇的に変えたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)。
そのパンデミックが始まって3年が経過した。
我々はCOVID-19にどう立ち向かい、そして課題は何だったのか?
「臨床」「ウイルス学・疫学」「公衆衛生」「行政・国際保健」とさまざまな立場から率直に語っていただいた。
将来、COVID-19以外のパンデミックが起こる可能性もあり、関心が高まっている。
COVID-19の診療・対策を検証するとともに、未来のパンデミック対策を展望した。

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題

ページ範囲:P.90 - P.90

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【COVID-19診療・対策振り返り編—新型コロナウイルスが教えてくれたこと】

—臨床❶感染症専門医—COVID-19流行が浮き彫りにした臨床現場の3つの問題

著者: 黒田浩一

ページ範囲:P.24 - P.29

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行は、私たち感染症専門医に多くの問題を投げかけた。筆者は、比較的規模の大きな地方都市(兵庫県神戸市、人口約150万人)の第一種感染症指定医療機関で、流行当初からCOVID-19の診療に直接関わってきた。その間、「診断」「治療」「感染対策」「病院レベルでの医療体制の構築」「行政との関係」「感染症専門医の存在意義」などの問題に何度も直面し、そのつど試行錯誤を重ね、なんとか対応してきた。本稿では、筆者が現場で経験したこれらのうち、診断・治療・感染対策の3つの問題について振り返る。

—臨床❷集中治療専門医—COVID-19による「重症呼吸不全」の治療戦略—そして、医療資源が不足した時どうするか?

著者: 鍋島正慶

ページ範囲:P.30 - P.35

 2019年末に発生したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)との約3年にわたる闘いは、“ミクロな視点”と“マクロな視点”両面からの対応を迫られるものだった。ミクロな視点では、「呼吸生理学」に改めて着目することで霧が少しずつ晴れるような経験をした。マクロな視点では、普段あまり意識することのない「医療資源が枯渇した場合」における対応が課題として浮き彫りとなった。

—臨床❸病院総合診療医—パンデミックにおける「ホスピタリスト」ならではの働き

著者: 安本有佑 ,   小坂鎮太郎

ページ範囲:P.36 - P.40

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、医療提供体制に多大な影響を与えた。日々移り変わる感染状況や診療現場での対応などの情報をアップデートしながら、迅速な意思決定を行うことが求められた。一方で、COVID-19がなくとも、本来適切に行われるべき感染対策や院内多職種連携、同一医療圏内の病院間連携などを見つめ直すきっかけともなった。
 米国病院総合診療医学会(Society of Hospital Medicine:SHM)1)は、2017年に改訂した「ホスピタリストのコアコンピテンシー」で、臨床・手技・ヘルスケアシステムのそれぞれについて、ホスピタリストが習得すべき項目を提唱している(表1の黒字)。その多くはCOVID-19への対応に必要不可欠なものであり、臓器・人・病院・地域を横断的に診られる総合診療医は、COVID-19への対応に最も適した存在であったかもしれない。加えて、有事に適応するなかで、コンピテンシーの追加(表1の色字)も生じたが2,3)、われわれ総合診療医は臨機応変に対応できている。

—臨床❹診療所医師—COVID-19が板橋区の「地域医療」にもたらしたもの

著者: 石川元直

ページ範囲:P.41 - P.45

 東京都板橋区は23区の北西部に位置し、人口は57万人ほどである。病院数は40施設で、そのうち6施設は500床以上と、23区内でも有数の医療資源が潤沢な地域である。機能強化型在宅療養支援診療所である「やまと診療所」は、板橋区を中心に現在約1,100人の患者に在宅医療を提供している。最期までその人らしく過ごせ、自分らしく生きてきた1人ひとりの人生と歴史をつなぐ在宅医療を模索している。コロナ禍では、入院すると面会制限があるため最期を自宅で迎えたいと考える患者が多くなり、自宅看取りに力を入れてきた当院への訪問診療依頼数は急増した。
 2021年4月には、120床の地域包括ケア病棟をもつ「おうちにかえろう。病院」を板橋区内に開設した。当法人のミッションは、「温かい死を通して、人が人を想う気持ちを大切にできる世界をつくる」というものである。チームで認め合い、喜び合い、信じ合い、高め合う。当院のそんな仲間たちが力を合わせ、地域の診療所・急性期病院・後方支援病院・保健所とタッグを組み、相互の役割分担を徹底して行い、限られた医療資源の地域内最適化を進めることで、廃用が進みやすい高齢者の速やかな在宅復帰の実現につなげることができた。本稿では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行の第5〜7波における「板橋区」での当法人および区医師会の取り組みを紹介する。

—ウイルス学・疫学—平時にやっていないことは緊急時にはできない

著者: 谷口清州

ページ範囲:P.46 - P.50

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックは、まだ終わったわけではない。総括するには早すぎるが、すでに我々はいろいろなことを思い知らされている。
 個人的に思うのは、パンデミックというのは大自然の一部であり、当たり前だが人間の都合に合わせてくれるわけはなく、ウイルス自体の生存という目的のために進展していくものだということである。我々の世代は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザA(H1N1)pdm09、そして今般のCOVID-19と、3回のグローバルな健康危機を経験させてもらった。なかでも今回のCOVID-19では、動物のウイルスが人間世界に侵入してのち、どのように人類に適応して広がっていくのかを目の当たりにさせられた。これこそ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が人類に教えてくれた最大のものである。

—公衆衛生—日本はCOVID-19のクライシスにどう向き合ったか

著者: 高鳥毛敏雄

ページ範囲:P.51 - P.54

 公衆衛生は、19世紀に英国で、「福祉」と「医療」から独立して誕生した制度である。医療・福祉は問題を抱える人が発生した後で対応するのに対し、公衆衛生には上流にさかのぼって問題が発生する前に対応することが求められている。本稿では、「公衆衛生」の立場から、日本のCOVID-19対策を振り返る。

—行政・国際保健—COVID-19対応から見えてきた「健康危機管理」の重要性とその変遷

著者: 松澤幸正

ページ範囲:P.55 - P.59

 2022年12月現在、世界では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)にとどまらず、WHO(世界保健機関)による「M痘(mpox)」の公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)宣言、ウガンダにおけるスーダンエボラウイルスによる「エボラ出血熱」(p.70)のアウトブレイクなど、感染症の危機管理事案が絶えず発生している。今後、感染症危機管理にあたるステークホルダーの協力を、より強固なものとしていくために、どのような課題をクリアしていく必要があるだろうか。
 筆者は、感染症臨床専門家として勤務後、大学院にてパンデミックインフルエンザに関わる基礎研究を行ったあと、感染症危機管理専門家(Infectious Disease Emergency Specialist:IDES)養成プログラムに所属し、2020年度は厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部、2021年度は米国保健福祉省の事前準備・対応担当次官補局(Office of Assistant Secretary of Preparedness and Response:ASPR)にて感染症危機管理に携わった。その経験を踏まえ、感染症対策における「健康危機管理」の重要性などについて、行政および国際保健の観点から整理したい。

【未来のパンデミック対策編】

❶新型インフルエンザ

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.60 - P.64

Case
養鶏場での鳥インフルエンザ感染
患者:80代前半、男性
家族歴:特になし
現病歴:肉用アヒルを飼育・経営しており、12月中旬にアヒルが1羽死亡。その2日後に数羽が死亡するとともに、体調不良のアヒルが出現したため、家畜保健衛生所で調べたところ、生きたアヒル約20羽からH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された。
 経営者は個人防護具をつけずに、アヒルの世話をしていたことから、無症状ではあったが、オセルタミビル75mg(1日1回)を予防内服してもらうとともに、鼻腔ぬぐい液を採取した。他の従事者約10人も同様に鼻腔ぬぐい液を採取したが、経営者のみH5N1亜型インフルエンザウイルス陽性であった。引き続き無症状であったが、オセルタミビル75mg(1日2回)を10日間服用し、PCR検査2回陰性を確認するまで自宅で隔離した。(文献1を参考に構成)

❷多剤耐性菌

著者: 具芳明

ページ範囲:P.65 - P.68

 2020年以降、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックを通じ、感染症が人類にとっての脅威であり続けていることを、私たちは再認識することとなった。ビル・ゲイツが言うように、世界はもっとよく備えておくべきだったのだ1)。感染症による健康危機は、今後も繰り返し起こることだろう。将来何が起こるかはわからないとはいえ、リスクの高い感染症を想定して十分な準備を進め、将来の対応能力向上につなげたい(p.1)。それが、パンデミックの経験から学ぶ最大の教訓であるべきだ。

❸ウイルス性出血熱

著者: 加藤康幸

ページ範囲:P.69 - P.72

Case
発熱・黄疸・出血傾向を呈するアフリカからの帰国者1)
患者:32歳、男性。中国人。
患者:2016年3月、アンゴラ共和国滞在中に発熱、2日後に北京に帰国した。黄疸・乏尿・出血傾向があり、ただちに入院・集中治療が行われたが、発症から9日目に死亡した。入院時、血液から「黄熱ウイルス」が検出された。当時、アンゴラ共和国では首都ルアンダを中心に黄熱の流行が発生していた。本症例はアジア圏で初めて報告された黄熱の症例となった。

❹真菌感染症

著者: 槇村浩一

ページ範囲:P.73 - P.76

 COVID-19のパンデミック(以下、本流行)が医療に与えた負荷は甚大であったが、その陰で蔓延した真菌感染症も大きく話題となった。従来、多くの真菌感染症は「日和見型」であることから、重篤なウイルス感染症によって免疫が撹乱された症例に本症が生ずること自体は、容易に想像できることである。にもかかわらず、本流行下の真菌感染症が国際的に問題となった事実に基づいて、来たるべき次のパンデミックに対して「真菌感染症対策」の面から考えてみたい。

❺結核

著者: 吉山崇

ページ範囲:P.77 - P.80

 本特集において、【未来のパンデミック対策編】の1つとして「結核」があげられた。本稿では、結核のような「再興感染症」が未来のパンデミックの原因となりうるかを考察する。

【コラム】

❶抗HIV薬の進歩

著者: 塚田訓久

ページ範囲:P.81 - P.83

 後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency virus:AIDS)は1981年に初めて報告され、1983年には原因ウイルス(のちのヒト免疫不全ウイルス〔human immunodeficiency virus:HIV)が報告された。HIVの複製サイクル中でHIV特異的なステップ(HIV自体がもつ酵素やHIVの宿主細胞への吸着)を標的に治療薬の開発が進められ、原因ウイルスの発見からわずか2年後には満屋ら1)によりNRTI「ジドブジン」の抗HIV作用が報告された。

❷mRNAワクチンの現在と未来

著者: 平岡陽花 ,   阿部洋

ページ範囲:P.84 - P.86

 mRNAワクチンは、世界的な大流行を引き起こしたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対する予防用ワクチンとして2020年に初めて承認され、一躍脚光を浴びた。この機に初めてmRNAワクチンの存在を知った人も多いだろう。
 mRNAワクチンとは、分子の設計図であるmRNAを「情報」として生体内に導入し、その情報に基づいて病原体の構成蛋白質を生体内でつくらせることで、免疫獲得を促す新しい医薬品だ。その研究の歴史は古く、合成mRNAの導入による蛋白質の産生誘導が初めて示されたのは1990年まで遡る1)。それから30年の時を経て、COVID-19の大流行という緊急事態に際してこの研究が急速に進み、わずか1年という脅威的なスピードで承認されることになった。このような迅速な開発が、なぜ可能だったのか? mRNAワクチンの特徴を、現在の開発状況とともに見ていこう。

❸インフルエンザとCOVID-19の治療薬開発

著者: 新井宗仁

ページ範囲:P.87 - P.89

インフルエンザの低分子医薬
◦ウイルス感染・複製を阻害する
 抗ウイルス薬の多くは、ウイルスの感染や複製を阻害することによって働く。A型インフルエンザウイルス(p.60)の感染時には、ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)が宿主細胞のシアル酸と結合したあと、エンドサイトーシスによってウイルス全体が細胞内に取り込まれる1)。この時ウイルスのM2蛋白質は、ウイルスRNAの細胞内への放出を促進する。これを阻害する「アマンタジン(シンメトレル®など)」が1960年代に開発されたが、近年はアマンタジン耐性株が主流だ2)
 RNAの放出後、ウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼがRNA複製を準備する。2018年に承認された国産の「バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®)」は、これを阻害してウイルス複製を防ぐ3)。次に、ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)がRNAを複製する。国産の「ファビピラビル(アビガン®)」はRNAの部品(アデノシンやグアノシン)と似ており、RdRpが間違えてこれを取り込むとRNA複製が阻害される4)。しかし動物実験で胎児の催奇形性がみられたため、他の治療薬では効果不十分な場合に限定して2014年に承認された。

Editorial

パンデミック対策は1日にして成らず

著者: 山中克郎 ,   鎌田一宏

ページ範囲:P.21 - P.21

世界中の人々の生活を劇的に変えたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックから3年が経過しました。これは、人類初のパンデミックでもなければ、おそらく最後のパンデミックでもありません。私たちは、歴史から学ぶと同時に、体験したことを後世に語り継ぐ責任があります。
 これまでも人類は、致死的な疫病に何度か襲われました。遺体から古代の微生物DNAを解析した結果、4つのパンデミック(新石器時代、中世の2回、1900年前後)の原因は「ペスト菌」であったことがわかりました。また、スペインによるアステカ帝国の征服後に発生した疫病は「サルモネラ属」の菌であることが明らかになっています。さらに1918〜1919年に流行したスペインかぜは「H1N1亜型インフルエンザ」でした。世界中で5億人が感染し、5千万〜1億人が亡くなったと考えられています。

ゲストライブ〜Improvisation〜・21【新春特別座談会】

次なるパンデミックはきっと来る—COVID-19が教えてくれた今すべきこと

著者: 谷口清州 ,   具芳明 ,   鎌田一宏 ,   山中克郎

ページ範囲:P.1 - P.12

 人類の歴史は、感染症との闘いの歴史である。3年前までは、そんな警句を他人事のように感じたかもしれない。しかし実際、特に中世から近代にかけては、「産業革命」や「グローバリゼーション」など、人類の進歩につけ入るかのようにパンデミックは起こってきた。そして2019年末、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」のパンデミックが始まった。世界中を人々が行き来する感染症が広がりやすい状況に、今後も変わりはない。「都市化」は、それに拍車をかけるかもしれない。では我々は、いかに次なるパンデミックに備えればよいのか? 新型コロナウイルスは、人類に何を問いかけているのだろう? COVID-19に最前線で対峙してきた医師4名が、それぞれの立場からこの3年を振り返り、未来への備えを模索した。

対談|医のアートを求めて・1【新連載】

医療×死—遺書というAdvance Care Planning

著者: 田村淳 ,   平島修

ページ範囲:P.91 - P.96

書籍『母ちゃんのフラフープ』(ブックマン社、2021)を著した田村淳さん。20歳の頃から、「延命処置は希望しない」という母親の意向を毎年聞かされ、実際母親のがんが再発した時には追加の手術治療や延命治療は行わないという意向を家族全員で受け止め、母の最期を平穏に見守った。その経験から、残される家族へ遺書を残すことの意義を訴え、遺書動画作成サービス「ITAKOTO(イタコト)」の活動を行っている。
本対談では、現在の医療のなかで田村さんが考えている日本人の死、そして生きることについての想いを聞いた。読者の皆さんが対峙する“死を目前にした人や家族”への向き合い方のヒントを少しでも見つけていただけたら幸いである。(平島 修)

臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン・1【新連載】

「笑わない指導医」ってどう思う?

著者: 佐田竜一 ,   木村武司 ,   長野広之

ページ範囲:P.98 - P.101

今月のお悩み
卒後15年目の指導医です。どうも私は、レジデントから「あの先生笑顔が少ないから怖い」と噂されているらしいのです。私自身はそういう自覚が全くなかったのですが、たしかに振り返ってみると笑顔が少ないのかもしれません。でも、つくり笑顔をするのも変だなと思っています。果たして、指導医に「笑顔」って必要なのでしょうか?
[ペンネーム:能面医]

What's your diagnosis?[241]

感染を合併した最悪な症例

著者: 柴田裕介 ,   上田剛士

ページ範囲:P.16 - P.19

病歴
患者:92歳、女性
主訴:左臀部痛
現病歴:長男夫婦と同居中でADLはほぼ自立。受診1週間前に臀部全体に軽度の疼痛を自覚。受診1日前に左臀部に限局する痛みとなり、受診当日に痛みのため立位困難となり、当院救急搬送となった。
ROS(-):発熱、膀胱直腸障害、しびれ、転倒歴
既往歴:慢性心不全、高血圧、洞不全症候群(9カ月前にペースメーカー留置)
常用薬:ロサルタンカリウム25mg、フロセミド20mg、ブロチゾラム0.25mg、レバミピド300mg、酸化マグネシウム750mg
嗜好歴:喫煙・飲酒なし
アレルギー:薬物・食物なし

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・72

忘れるな! 川遊びの落とし穴

著者: 伊志嶺朝哉 ,   佐々木秀章 ,   徳田安春

ページ範囲:P.102 - P.106

CASE
患者:45歳、男性。
主訴:発熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛、関節痛、頻呼吸。
現病歴:X-41日、COVID-19陽性、軽症で自宅療養し、X-31日隔離解除。その後、Long COVIDの症状なく経過。X-12日前に沖縄本島北部の川で遊泳。当日は熱中症様の症状を認めたが、自宅療養で軽快していた。X-4日より39〜40℃台の発熱があり、持続する発熱(40.4℃)、嘔気、尿量低下(茶褐色尿)を主訴に、当院救急外来を夜間受診した。この時COVID-19 PCR陽性(Ct値38)であり、再感染や熱中症を疑われて補液加療目的に入院となり、翌日には解熱、自覚症状軽減、排尿もあり、退院となった。COVID-19については入院翌日に再検査予定であったが、症状軽減して退院(自宅療養の取り扱い)となったため実施せず、保健所と相談し、再感染として届け出は行った。しかし、X+3日に再度発熱を認め、X+5日には頭痛と頻回嘔吐、筋肉痛、関節痛を伴ったため、X+6日に再度当院を受診した。
既往歴:男性型脱毛症。
内服歴:フィナステリド0.2mg/日。

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・34

気になるプラセボの効果

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.107 - P.110

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはありませんが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・33

“実践”でこそ価値あるもの

著者: 塩尻俊明

ページ範囲:P.111 - P.111

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

【臨床小説—第二部】後悔しない医者|今と未来をつなぐもの・第33話

成長する医者

著者: 國松淳和

ページ範囲:P.120 - P.126

前回までのあらすじ 今月のナゾ
 外来カンファレンスで左座が相談した不登校の高校生は、思わぬ展開で再び学校に通い始めた。なぜ彼の頭痛はなかなか治らなかったのか? そして、なぜ治ったのか? 向後たちは、また臨床医として悩みや驚き、その奥深さを共有した。
 向後チーム恒例のカンファレンスは、火曜と金曜に行われている。火曜は入院症例を、金曜は外来症例を重点的に振り返る。今日は火曜日、入院カンファレンスの日だ。新エピソードは、右井が気になっている入院症例の相談で幕を開ける。
 【第一部】では初期研修医として脇を固める1人であった西畑が、【第二部】では後期研修医として主役級の活躍をみせている。医師とは常に「成長」を求められる職種だが、果たして臨床医としての成長とは? 新たな診断困難症例が提示され、またしても思わぬ展開となる。その鑑別や病態を彼らと一緒に考えながら、“最終エピソード”をお楽しみください。

投稿 総合診療病棟

大腿静脈に限局した深部静脈血栓症の2症例—2点圧迫法の限界について

著者: 秋山美沙子 ,   財川英紀 ,   亀田徹

ページ範囲:P.112 - P.114

 深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)は、筋膜より深部に位置した静脈に生じた血栓症で、急性肺塞栓症の約90%は下肢のDVTに起因するとされる。検査室における下肢静脈超音波検査は、総大腿静脈から下腿静脈までの下肢全体を観察する全下肢静脈エコーが主流であり、下肢静脈の血栓をほぼすべて認識することが可能である1)
 一方、臨床医がベッドサイドで診療の一環として行う超音波検査は、POCUS(point of care ultrasonography)と呼ばれ、関連した臨床研究が数多く行われ、急性期診療において領域別のアプローチ法が見出されている。下肢静脈超音波検査におけるPOCUSでは、総大腿静脈と膝窩静脈のみを圧迫して評価する2点圧迫法が主流であり、簡便かつ短時間で近位下肢静脈の血栓を認識できるので、急性期診療において積極的に利用されている1)。しかし近年、大腿静脈に限局した血栓の存在が明らかになっているが2〜4)、われわれが知りうる限りにおいて症例報告は見当たらない。
 今回、当院で施行した下肢静脈超音波検査において、2点圧迫法では認識できないと考えられる大腿静脈に限局した血栓例を経験したので報告する。

#総合診療

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.13 - P.13

#今月の特集関連本❶

ページ範囲:P.64 - P.64

#今月の特集関連本❷

ページ範囲:P.68 - P.68

#今月の特集関連本❸

ページ範囲:P.72 - P.72

#今月の特集関連本❹

ページ範囲:P.80 - P.80

#今月の特集関連本

ページ範囲:P.115 - P.115

#今月の連載関連本

ページ範囲:P.121 - P.121

#医学書院の新刊

ページ範囲:P.117 - P.117

#書評:《ジェネラリストBOOKS》高齢者診療の極意

著者: 松村真司

ページ範囲:P.97 - P.97

「おまえは日本人なのに、クロサワを観たことがないのか?」
 留学先の大学院の教室の片隅で、アジアの小国からやってきた友人に当時私が言われた言葉である。動画配信など、ない時代。レンタルビデオ屋から代表作を借り、週末ごとに観た。『用心棒』『七人の侍』『天国と地獄』。衝撃的な面白さであった。いや、面白いだけではない。「生きるとは」「人間とは」といった、私たちの根源的な問いに向き合った作品。黒澤映画の偉大さを教えてくれたその友人に後日感謝の念を伝えると、彼は続けてこう言った。

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目次

ページ範囲:P.14 - P.15

読者アンケート

ページ範囲:P.119 - P.119

次号予告

ページ範囲:P.127 - P.127

『総合診療』バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.128 - P.129

お得な年間購読のご案内

ページ範囲:P.129 - P.129

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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バックナンバー

33巻12号(2023年12月発行)

特集 海の外へ渡る航行者を診る—アウトバウンドにまつわるetc.

33巻11号(2023年11月発行)

特集 —続・総合診療外来に“実装”したい—最新エビデンスMy Best 3

33巻10号(2023年10月発行)

特集 ○×クイズ110問!日常診療アップグレード—Choosing WiselyとHigh Value Careを学ぼう

33巻9号(2023年9月発行)

特集 ジェネラリストのための「発達障害(神経発達症)」入門

33巻8号(2023年8月発行)

特集 都市のプライマリ・ケア—「見えにくい」を「見えやすく」

33巻7号(2023年7月発行)

特集 “消去法”で考え直す「抗菌薬選択」のセオリー—広域に考え、狭域に始める

33巻6号(2023年6月発行)

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33巻5号(2023年5月発行)

特集 —疾患別“イルネススクリプト”で学ぶ—「腹痛診療」を磨き上げる22症例

33巻4号(2023年4月発行)

特集 救急対応ドリル—外来から在宅までの60問!

33巻3号(2023年3月発行)

特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで

33巻2号(2023年2月発行)

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33巻1号(2023年1月発行)

特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え

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32巻7号(2022年7月発行)

特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座

32巻6号(2022年6月発行)

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32巻5号(2022年5月発行)

特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況

32巻4号(2022年4月発行)

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31巻8号(2021年8月発行)

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31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

27巻8号(2017年8月発行)

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!

27巻7号(2017年7月発行)

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編

27巻6号(2017年6月発行)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

27巻5号(2017年5月発行)

特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!

27巻4号(2017年4月発行)

特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。

27巻3号(2017年3月発行)

特集 これがホントに必要な薬40—総合診療医の外来自家薬籠

27巻2号(2017年2月発行)

特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

27巻1号(2017年1月発行)

特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

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