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文献詳細

雑誌文献

総合診療33巻11号

2023年11月発行

文献概要

ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・8

「死後硬直」と「四肢」を診る

著者: 森田沙斗武1

所属機関: 1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室

ページ範囲:P.1387 - P.1391

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Case
患者:40歳、男性。妻と子ども2人と4人暮らし。
既往歴:抑うつ気分。コロナ禍でリストラされ就職活動を行っていたが、その頃から不眠・倦怠感を自覚し当院を受診。諸検査にて異常を認めず、抑うつ状態からの身体症状を疑い、精神科または心療内科を受診するように指導していた。
現病歴:某日20時頃に家族と夕食をとったあと、22時頃に自室に入った。翌朝7時に妻が起こしに行くと、部屋のクローゼットにベルトをかけて縊頸しているのを発見。7時10分に救急通報、18分に救急隊到着。救急隊はわずかに死後硬直があると感じたが、取り乱した家族におされ、当院に搬送した。
 救急隊から申し訳なさそうに「死後硬直があると思いましたが…」と申し送りを受けたが、救急救命処置を継続した。当然反応せず、20分後に家族の受け入れとともに死亡確認となった。家族に「搬送時にすでに死後硬直を認め、救命は難しかった」と説明すると、「では何時頃に首を吊ったのですか?」と聞かれた。とりあえず「数時間前と思います」と答えたが、よくわからなかった。
 異状死のため警察に届出を行い、捜査協力をしたが、「搬送時に硬直があったそうですが、どの程度でしたか?」と聞かれた。明らかなご遺体への医療行為は保険診療にならないことを思い出し、とっさに「ハッキリしませんでしたので、救急救命処置を行いました」と答えた。死後硬直についていろいろ聞かれたが、実際には死後硬直を評価しておらず、ポイントもよくわからなかった。

参考文献

1)森田沙斗武,他:救急搬送時に死斑を認めたが蘇生に成功した一例.日本法医学雑誌70(2):167, 2016.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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