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文献概要
特集 しびれQ&A—ビビッとシビれるクリニカルパール付き! 【しびれ診療のQに答えます!】
Q16 しびれ患者への漢方薬の上手な使い方は?
著者: 石田和之1
所属機関: 1中央大学 保健センター
ページ範囲:P.204 - P.209
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患者:63歳、男性。
主訴:足がしびれて長く歩くことができない。
現病歴:X-5年:両側の爪先にしびれが出現。X-2年:歩行中に爪先から足底、大腿後面あたりまでしびれが拡大するようになった。X-1年:100mほど歩くと足底から足関節周囲に熱感が出現し、しびれも増強して歩くことが困難となった。この場合、座ったり屈んだ姿勢で数分間休むとしびれが軽減し、再び歩き出すことができた。自転車ではしびれは増強しなかった。整形外科を受診し、腰椎MRI検査で腰部脊柱管狭窄症と診断され、保存的治療を1年間続けたが、症状は改善しなかった。漢方治療を希望して当漢方外来を受診した。
既往歴:58歳で高血圧を指摘され、現在まで降圧薬内服中。
生活歴:無職。飲酒なし、喫煙なし。
現症(現代医学的所見):身長162cm、体重83kg。血圧132/96mmHg、脈拍数72回/分。胸腹部に特記すべき所見なし。神経学的所見:座位安静時に両下腿から足底部かけて“ビリビリ”としたしびれを自覚するが、他覚的感覚障害は認めなかった。下肢筋力低下なし、両側深部腱反射正常、病的反射を認めなかった。100m程度の歩行でしびれが増強し、歩行困難となった。下肢の皮膚の色調に異常なし。後脛骨動脈・足背動脈拍動は良好。
体質(漢方医学的所見):食欲良好、便通整、夜間尿3回、冷え性ではない。
検査所見:腰椎MRI:腰椎の退行性変化によるL4/L5の配列不整、脊柱管狭窄を認めた(図1)。
患者:63歳、男性。
主訴:足がしびれて長く歩くことができない。
現病歴:X-5年:両側の爪先にしびれが出現。X-2年:歩行中に爪先から足底、大腿後面あたりまでしびれが拡大するようになった。X-1年:100mほど歩くと足底から足関節周囲に熱感が出現し、しびれも増強して歩くことが困難となった。この場合、座ったり屈んだ姿勢で数分間休むとしびれが軽減し、再び歩き出すことができた。自転車ではしびれは増強しなかった。整形外科を受診し、腰椎MRI検査で腰部脊柱管狭窄症と診断され、保存的治療を1年間続けたが、症状は改善しなかった。漢方治療を希望して当漢方外来を受診した。
既往歴:58歳で高血圧を指摘され、現在まで降圧薬内服中。
生活歴:無職。飲酒なし、喫煙なし。
現症(現代医学的所見):身長162cm、体重83kg。血圧132/96mmHg、脈拍数72回/分。胸腹部に特記すべき所見なし。神経学的所見:座位安静時に両下腿から足底部かけて“ビリビリ”としたしびれを自覚するが、他覚的感覚障害は認めなかった。下肢筋力低下なし、両側深部腱反射正常、病的反射を認めなかった。100m程度の歩行でしびれが増強し、歩行困難となった。下肢の皮膚の色調に異常なし。後脛骨動脈・足背動脈拍動は良好。
体質(漢方医学的所見):食欲良好、便通整、夜間尿3回、冷え性ではない。
検査所見:腰椎MRI:腰椎の退行性変化によるL4/L5の配列不整、脊柱管狭窄を認めた(図1)。
参考文献
1)南京中医学院医経教研組(編),石田秀実(監訳):黄帝内経素問 中巻—現代語訳.東洋学術出版社,1992. 〈難解な漢文で記されている黄帝内経素問の現代語訳と意味の解説〉
2)新井信:漢方医学の基本理論と診察—基本理論.日本漢方医学教育協議会(編):基本がわかる 漢方医学講義.pp32-51,羊土社,2020. 〈漢方医学の基礎理論と初歩的な処方マニュアルからなる初学者向け教科書〉
3)寺澤捷年:症例から学ぶ和漢診療学,第3版.医学書院,2012. 〈漢方医学の理論と各漢方薬の特徴や使い分けを解説した教科書。文献2よりやや専門的〉
4)佐藤祐造,他:糖尿病性神経障害に対する東洋医学的治療(第2報):牛車腎気丸とメコバラミンとの比較.和漢医薬学会誌 2(3) : 580-581, 1985. 〈糖尿病精神系障害に対する牛車腎気丸エキスとメコバラミンのランダム化比較試験〉
5)大萱 稔:腰部脊柱管狭窄症に対する牛車腎気丸の治療経験.和漢医薬学会誌 3(3) : 350-351, 1986. 〈腰部脊柱管狭窄症の症例に牛車腎気丸エキスを投与した、治療前後比較研究〉
6)平山惠造,他:しびれ感に対する牛車腎気丸の臨床評価.神経治療学 11(4) : 385-394, 1994. 〈しびれをきたすさまざまな疾患に対して牛車腎気丸を投与した、治療前後比較研究〉
7)Kishida Y, et al : Go-sha-jinki-Gan(GJG),a traditional Japanese herbal medicine, protects against sarcopenia in senescence-accelerated mice. Phytomedicine 22(1) : 16-22, 2015. 〈老化促進モデルマウスに牛車腎気丸を投与し、サルコペニア予防効果を証明した基礎研究〉
8)福武敏夫:しびれ(感)の概念としびれ(感)をきたす原因・病態・疾患.日本神経治療学会(監),福武敏夫,他(編):標準的神経治療 しびれ感.pp1-11,医学書院,2017. 〈日本神経治療学会が監修するしびれの標準的治療ガイド〉
9)石田和之:神経内科に役立つ漢方薬—症例と頻用処方.臨床神経学 53(11) : 938-941, 2013. 〈頭痛、めまい、しびれなど脳神経内科医が臨床で扱うことが多い各種症状に対する漢方治療の解説〉
10)昭和漢方生薬ハーブ研究会(編):漢方210処方 生薬解説—その基礎から運用まで.じほう,2001. 〈日本漢方で使われている各種生薬の漢方医学的特徴と生薬学的情報をまとめたガイド〉
11)田崎義昭,他:ベッドサイドの神経の診かた,改訂17版.南山堂,2010. 〈神経学的診察法とその解釈について書かれている。脳神経系臨床医にとってのバイブル〉
12)新見正則:当帰四逆加呉茱萸生姜湯の血管性間欠性跛行に対する効果—シロスタゾールとの比較と相乗効果の検討.日本東洋医学雑誌 62(別冊) : 172, 2011. 〈血管性間欠性跛行に対するシロスタゾールと当帰四逆加呉茱萸生姜湯の治療効果を比較した、小規模臨床研究に関する学会抄録〉
13)紺野慎一:腰椎の神経根障害.Peripheral Nerve 28(2) : 223-227, 2017. 〈腰部脊柱管狭窄症等による神経根や馬尾の圧迫による病態の解説や、治療法についての総説〉
14)石田和之,他:疎経活血湯が著効した難治性疼痛の3例.日本東洋医学雑誌 57(5) : 645-650, 2006. 〈腰部脊柱管狭窄症や脳血管障害後遺症など、難治性疼痛に疎経活血湯を投与した症例報告〉
15)植松義直,他:牛車腎気丸,芍薬甘草湯—腰部脊柱管狭窄症.MB Orthopaedics 28(5) : 91-100, 2015. 〈腰部脊柱管狭窄症をリマプロストや漢方薬を用いて保存的に治療した症例について、後方視的に効果を検討した臨床研究〉
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