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文献詳細

雑誌文献

総合診療33巻3号

2023年03月発行

文献概要

特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで 【Ⅰ章】「薬物療法」の新スタンダード

❹DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬

著者: 酒井麻有1 加藤丈博1 矢部大介1234

所属機関: 1岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 2関西電力医学研究所 糖尿病研究センター 3岐阜大学高等研究院 One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター 4東海国立大学機構 医療健康データ統合研究教育拠点

ページ範囲:P.276 - P.278

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 経口摂取した栄養素に応答して消化管から分泌され、インスリン分泌を促進する消化管ホルモンは「インクレチン」と総称され、今日までにGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like peptide-1)が同定されている。GIPとGLP-1は、膵β細胞に発現する受容体に結合することで血糖依存的にインスリン分泌を促進し、血糖降下作用を発揮する。GLP-1は、グルカゴン分泌を抑制し、胃運動を抑制することでも食後の血糖上昇を抑制する。さらに中枢に作用して食欲を抑制し、体重減量効果を発揮する。
 GIPとGLP-1は、消化管から分泌されると、直ちに蛋白分解酵素DPP-4(dipeptidyl peptidase-4)により不活化される。今日までに、DPP-4の働きを阻害し、内因性インクレチンの活性を生理学的レベルで高める「DPP-4阻害薬」、DPP-4により分解されにくいGLP-1アナログを薬理学的レベルで補充する「GLP-1受容体作動薬」が開発され、2型糖尿病治療薬として広く使用されている。特にGLP-1受容体作動薬は、体重減量効果に加え、心血管イベントや腎イベントのリスク軽減も示され、動脈硬化性疾患リスク(p.268)の高い「肥満2型糖尿病」に対する使用が増えている。さらに近年、1つのペプチドでありながらGIP受容体とGLP-1受容体を同時に活性化し、顕著な血糖改善効果と体重減量効果を発揮しうる「GIP/GLP-1共受容体作動薬」が製造承認を受け、肥満2型糖尿病に対する新たな治療薬として注目を集めている。

参考文献

1)Kubota S, Kato T, Yabe D, et al:Association of dipeptidyl peptidase-4 inhibitor use and risk of pancreatic cancer in individuals with diabetes in Japan. J Diabetes Investig 14(1):67-74, 2023. PMID 36281720 〈日本国内のビッグデータを用いて、DPP-4阻害薬とその他の経口糖尿病治療薬による膵がん発症リスクを検討したもの〉
2)坊内良太郎,他:2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム.糖尿病 65(8):419-434,2022. 〈わが国における糖尿病診療に関する考え方を新しいエビデンスに基づきとりまとめたもの〉
3)Juris JM: GLP-1 receptor agonists for individualized treatment of type 2 diabetes mellitus. Nat Rev Endocrinol 8(12) : 728-742, 2012. PMID 22945360 〈GLP-1受容体作動薬の短時間作用型と長時間作用型の薬力学的作用点の違いについて書かれている〉
4)Pratley RE, et al: Semaglutide versus dulaglutide once weekly in patients with type 2 diabetes (SUSTAIN 7); a randomised, open-label, phase 3b trial. Lancet Diabetes Endocrinol 6(4) : 275-286, 2018. PMID 29397376 〈デュラグルチドとセマグルチドのHbA1cと体重減少効果を、低用量・高用量同士でそれぞれ比較した試験で、セマグルチドの優越性が明らかとなった〉
5)Yabe D, et al: Safety and efficacy of oral semaglutide versus dulaglutide in Japanese patients with type 2 diabetes (PIONEER 10); an open-label, randomised, active-controlled, phase 3a trial. Lancet Diabetes Endocrinol 8(5) : 392-406, 2020. PMID 32333876 〈日本人を対象とした経口セマグルチドの臨床治験。経口セマグルチド14mgが、0.75mgのデュラグルチドに比して有意なHbA1cの低下と体重減少をもたらすことが示された〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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