文献詳細
文献概要
ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・1【新連載】
「死んだら終わり」じゃありません!
著者: 森田沙斗武1
所属機関: 1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
ページ範囲:P.480 - P.484
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患者:80歳、男性
既往歴:高血圧、2型糖尿病
病歴:以前から生活習慣病に対してかかりつけ医で治療されており、おおむねコントロール良好であった。ADLも自立しており、夫婦2人暮らしで介護サービスなども受けていなかった。今回、発熱を契機に外来受診され、胸部X線で肺炎を疑う陰影を認め、緊急入院となった。
発熱を認めるも呼吸状態が安定していることからモニター装着などは行わず、入院1日目から抗菌薬を開始。喀痰検査などで菌は検出されず、起因菌は同定できなかったが、速やかに解熱し全身状態が改善したことから、退院の検討を行っていた。入院5日目朝に訪室したところ、ベッド上で心肺停止となっているのを発見し、救急救命処置を行うも蘇生しなかった。病棟に不審者の出入りはなく、他者の介入も疑われなかった。高齢であることから、死因を「虚血性心疾患」として死亡診断書を作成した。
妻に説明を行い、いったんは納得され死亡退院となったが、後日改めて息子夫婦が来院し、「納得できない」「入院中の投薬や管理不十分が原因の医療事故ではないか」と激怒された。弁明するも、明確な根拠を提示できないため、押し問答となった。遺族が弁護士に相談するも、最終的に医療訴訟には発展しなかったが、後味の悪いものとなった。
患者:80歳、男性
既往歴:高血圧、2型糖尿病
病歴:以前から生活習慣病に対してかかりつけ医で治療されており、おおむねコントロール良好であった。ADLも自立しており、夫婦2人暮らしで介護サービスなども受けていなかった。今回、発熱を契機に外来受診され、胸部X線で肺炎を疑う陰影を認め、緊急入院となった。
発熱を認めるも呼吸状態が安定していることからモニター装着などは行わず、入院1日目から抗菌薬を開始。喀痰検査などで菌は検出されず、起因菌は同定できなかったが、速やかに解熱し全身状態が改善したことから、退院の検討を行っていた。入院5日目朝に訪室したところ、ベッド上で心肺停止となっているのを発見し、救急救命処置を行うも蘇生しなかった。病棟に不審者の出入りはなく、他者の介入も疑われなかった。高齢であることから、死因を「虚血性心疾患」として死亡診断書を作成した。
妻に説明を行い、いったんは納得され死亡退院となったが、後日改めて息子夫婦が来院し、「納得できない」「入院中の投薬や管理不十分が原因の医療事故ではないか」と激怒された。弁明するも、明確な根拠を提示できないため、押し問答となった。遺族が弁護士に相談するも、最終的に医療訴訟には発展しなかったが、後味の悪いものとなった。
参考文献
1)厚生労働省:死亡数・構成割合,死亡場所×年代別(第1-25表).第1編 人口・世帯,第2章 人口動態.2021年度厚生統計要覧,2021. https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_1_2.html
2)内閣府:出生数及び死亡数の将来推計(図1-1-5).第1章 高齢化の状況.2022年版高齢社会白書,2022. https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf
3)長野県健康長寿プロジェクト・研究事業 研究チーム:長野県健康長寿の要因分析−長野県健康長寿プロジェクト・研究事業 報告書.長野県,2015. https://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-fukushi/kenko/kenko/documents/mokuji.pdf
4)清水忠彦,他:茶がゆ食と胃がん死亡−10年間の追跡調査.日公衛誌27(5) : 237-244, 1980.
5)厚生労働省:主な死因別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移(図6).2021年人口動態統計月報年計(概数)の概況,2022. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/kekka.pdf
6)厚生労働省:症状・徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの(R00-R99).ICD-10(2013年版)準拠 内容例示表,疾病・傷害及び死因の統計分類,2015. https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/naiyou18.pdf
7)厚生労働省:死因究明等推進計画,2021. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shiinkyuumei_keikaku.html
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