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雑誌目次

雑誌文献

総合診療33巻5号

2023年05月発行

雑誌目次

特集 —疾患別“イルネススクリプト”で学ぶ—「腹痛診療」を磨き上げる22症例

フリーアクセス

著者: 藤沼康樹

ページ範囲:P.516 - P.517

プライマリ・ケア診療において、腹痛は最も「診断エラー」を生じやすい症状と言われています
また近年、主に病院救急での腹痛診療においては、造影CT検査の実施が重視されてきており、病院への紹介の閾値が以前より下がっている印象があります。
したがって、腹痛診療の能力の維持が、診療の場によっては困難になってきています。
「イルネススクリプト(illness script)」は、患者像や診療の場といったコンテキストをベースに、発症の仕方→症状・身体所見→検査→診断→治療までを時間経過に沿ったある種の“ストーリー”と捉えて長期記憶として構築され、臨床推論に活用されるものです。
経験ある医師のイルネススクリプトを知ることは、自分自身の腹痛診療の振り返りや見直しにつながることが期待されます。
そこで本特集では、プライマリ・ケア外来診療における腹痛診療で“ピットフォール”になりやすい疾患のイルネススクリプトを紹介し、それを読み込むことによって、紹介や転医のあとに「あっ、しまった!」と思わずに済むような知識を得たり、ブラッシュアップすることを目指します。

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題

ページ範囲:P.582 - P.584

本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【総論】

❶「腹痛」とは何か?—中身が見えない箱の中で行われている演劇

著者: 腹痛を「考える」会

ページ範囲:P.518 - P.525

100年経っても
 腹痛、特に急性腹症(急激に発症した腹痛のうち、早期の診断および緊急手術を含む迅速な対応が必要な腹部疾患)の診断能力を鍛えるための書籍を1冊だけあげるなら、『急性腹症の早期診断 第2版』1)を推薦する。本書の原著は、『The Early Diagnosis of the Acute Abdomen』2)で、初版は1921年である。
 1972年の第14版までZachary Copeが単独執筆し、序文には「Murphyをはじめとした数多の先達に指導されたが、自分自身の経験から確認・証明できなかったことは一切記述していない」2)旨が述べられている。すなわち、先達の智慧にCope自身の経験から得た知見を加えた書籍である。1974年にCopeが逝去したあと、第15版から編集を引き継いだWilliam Silenも、Copeの執筆方針に従って自身の経験と観察に基づき改訂を行った。最新版は2010年の第22版であるが、初版から100年が経過した今も、急性腹症の症候に関する内容は十分に通用する。

❷「稀だが見逃したくない腹痛疾患」一覧表

著者: 原田拓

ページ範囲:P.527 - P.531

 まず、表1に「腹痛をきたす稀な疾患」をリストアップした。
 稀な腹痛疾患を診断するにあたって必要なのは、しっかりした病歴聴取と身体診察による「罹患臓器(障害部位)」の絞り込みである。一方、望ましくないのは、単純CTや内視鏡などの画像検査を事前に鑑別診断をあげることなく施行し、陰性だからと言って器質的疾患の存在を否定することである。表1を見ればわかるように、単純CTでわかる疾患はむしろ少ない。特に再発性の非致死性疾患は、診断遅延によって重篤な転帰をたどることはないかもしれないが、不要な受診や検査の繰り返しにつながることがあるので、QOLのためにもしっかり診断しておきたい1)

【症例集Ⅰ】小児×腹痛

❶急性虫垂炎

著者: 伊原崇晃

ページ範囲:P.532 - P.533

Case
患者:8歳、男児。生来健康。
既往歴・併存症・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:受診前日、食後1時間後に水様性下痢1回、続いて右下腹部痛を訴えた。その後、食物残渣を1回嘔吐し、発症3時間後に痛みが増大、再度嘔吐したため受診した。それ以降、嘔気は消失。発症形式は、詳細に問診してもはっきりしない。好きな食べ物を聞くと、「イチゴ」と答えた。「今、イチゴなら食べられそう?」と聞くと、「うん」と答えた。
身体所見:身長128 cm、体重26 kg。意識清明、体温 37.4℃、血圧112/74 mmHg、脈拍数92回/分・整、呼吸数24回/分、SpO2 98%(室内気)。

❷機能性消化管疾患

著者: 渥美ゆかり

ページ範囲:P.534 - P.535

Case
患者:13歳、女児。生来健康。
主訴:腹痛
既往歴・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
家族歴:母;片頭痛
現病歴:受診1週間前から、腹部の違和感を訴えていた。通学は可能であったが、徐々に食事量が減ってきた。受診当日は臍周囲の痛みが強く、1時間トイレにこもっている様子であり、外来を受診した。
身体所見:身長160 cm、体重45 kg。意識清明、体温36.5℃、血圧110/85 mmHg、脈拍数82回/分・整、呼吸数17回/分、SpO2 98%(室内気)。

❸便秘症

著者: 渥美ゆかり

ページ範囲:P.536 - P.537

Case
患者:4歳、男児。生来健康。
既往歴・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:受診当日の朝から、普段に比べて食事量が減少していた。昼食後から腹痛の訴えがあり、トイレに連れて行ったが排便はなく、痛みの訴えが強くなったため受診した。発熱はなかった。
身体所見:身長102 cm、体重15 kg。意識清明だが不機嫌。体温36.9℃、脈拍数110回/分、呼吸数25回/分、SpO2 98%(室内気)。血圧は抵抗が強く、測定できなかった。

【症例集Ⅱ】若い女性×腹痛

❶Fitz-Hugh-Curtis症候群

著者: 柴田綾子 ,   志水太郎

ページ範囲:P.538 - P.539

Case
患者:23歳、女性。特記すべき既往歴なし。
主訴:右上腹部痛
併存症・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:3日前、朝起きた時に右季肋部に違和感を覚えた。寝違えたと思って様子をみていたが改善せず、少しずつ悪化してきたため心配になり、近医内科を受診した。車で受診したが、その際の振動でも右季肋部あたりに響く痛みがあり、歩行時は特に階段で限局した痛みがあるようであった。深呼吸すると、痛みが強くなる。悪心・嘔吐や咳、発熱、腹痛、食欲低下、下痢、便秘、血便は認めない。
身体所見:160 cm、体重52 kg。意識清明、呼吸数20回/分、脈拍数80回/分・整、血圧98/70 mmHg、体温36.8℃、SpO2 98%(室内気)。

❷卵巣出血

著者: 山里一志

ページ範囲:P.540 - P.541

Case
患者:19歳、女性。生来健康。
主訴:下腹部痛
既往歴・併存症・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:受診当日18時頃、夕食後に突然、下腹部に強い痛みを感じた。痛みは急激に増悪して脂汗が滲むほどであったが、安静にしているとやや軽減し、最大時の半分ほどの強さとなった。痛みに波はなく、右側で強く、部位の移動や悪心・嘔吐、心窩部痛、発熱、便性状の変化はなかった。腹筋に力を込めると痛みが増すため、当初は「腹筋がつったのか?」と思ったとのこと。痛みが持続するため、同日23時に救急外来を受診した。
身体所見:身長150.7 cm、体重57.3 kg。意識清明、体温36.3℃、血圧122/85 mmHg、脈拍数78回/分・整、呼吸数16回/分、SpO2 98%(室内気)。

❸上腸間膜動脈症候群

著者: 大武陽一 ,   志水太郎

ページ範囲:P.542 - P.543

Case
患者:18歳、女性。生来健康。
主訴:摂食不良、悪心
既往歴・併存症・家族歴・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
社会生活歴:大学1年生。自宅から電車通学している。両親は共働き、妹が1人。
現病歴:数カ月前に友人から「太りすぎじゃない?」と言われたことをきっかけに、糖質制限ダイエットを開始。この半年で12 kgの体重減少あり。最近は友人から「やせすぎ」と指摘されることも多く、自身でも自覚があり、食事量を増やそうと思うが、食直後から悪心があり、食べすぎると嘔吐してしまう。
身体所見:身長156 cm、体重32 kg、BMI 13.1 kg/m2。意識清明、体温36.3℃、血圧96/60 mmHg、脈拍数82回/分、呼吸数12回/分、SpO2 98%(室内気)。

❹妊娠中の虫垂炎

著者: 福井陽介 ,   志水太郎

ページ範囲:P.544 - P.545

Case
患者:28歳、女性。妊娠30週。生来健康。
主訴:右側腹部痛
既往歴・併存症・アレルギー歴:特記事項なし
薬剤歴:酸化マグネシウム
現病歴:現在、両親の家に帰省中である。受診当日の朝、胃のあたりに違和感があり、吐き気も感じていた。夕方頃に右の脇腹が痛くなった。痛みは徐々に強くなり、嘔吐したため、救急外来を受診した。妊娠してから便秘がちで、最終排便は2日前であった。妊娠中で食事内容には注意していたそうであるが、付き添いの母親は食あたりではないかと心配している。
身体所見:身長160 cm、体重60 kg。意識清明、体温37.4℃、血圧102/72 mmHg、脈拍数80回/分・整、呼吸数20回/分、SpO2 98%(室内気)。

【症例集Ⅲ】若い男性×腹痛

❶精巣捻転

著者: 平田理紗 ,   相原秀俊 ,   多胡雅毅

ページ範囲:P.546 - P.547

Case
患者:18歳、男性。生来健康。
主訴:急性発症の左下腹部痛
既往歴・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:受診当日に自宅で寝ていたところ、朝6時頃に左下腹部の激痛で目が覚めた。就寝前は特に普段と変わったことはなく過ごしていた。自然に治るだろうと様子をみていたが、疼痛が徐々に増強し数回嘔吐したため、11時頃に当院を受診した。
バイタルサイン:意識清明、体温36.5℃、血圧130/60 mmHg、脈拍数70回/分、SpO2 100%(室内気)。

❷尿膜管遺残症

著者: 荒巻芽生 ,   徳島圭宜 ,   多胡雅毅

ページ範囲:P.548 - P.549

Case
患者:18歳、男性。生来健康。
主訴:腹痛
既往歴:気管支喘息
現病歴:数年前から時折、臍周囲の疼痛を自覚していたが、自然に改善するため受診しなかった。2週間前より、臍周囲に筋肉痛のような疼痛が再発。突然発症ではなく徐々に増悪し、歩行時に腹部に響くようになった。持続痛であった。悪心・嘔吐はなく、排便も普通便であった。2日前に他院を受診し、「感染性腸炎」を疑われ鎮痛薬と整腸薬を処方されたが改善せず、前日から発熱を認めたため当院を受診した。
身体所見:身長173.0 cm、体重65.0 kg。体温37.5℃、脈拍数92回/分、血圧124/72 mmHg、SpO2 98%(室内気)。

❸前皮神経絞扼症候群

著者: 山下駿 ,   井手則子 ,   多胡雅毅

ページ範囲:P.551 - P.553

Case
患者:26歳、男性
主訴:右下腹部痛
既往歴・家族歴:特記事項なし
現病歴:1週間前より、特に誘因なく右下腹部痛を認めるようになった。腹痛は間欠的で、体動時に激しく鋭い痛みを自覚した。安静にしていると腹痛が軽減することから経過観察していたが、1週間経過しても腹痛が消失せず、悪心と食思不振を伴うようになったため受診した。なお、右下腹部痛の出現時から、軟便を認めるようになった。
身体所見:身長172 cm、体重60 kg。意識清明、体温37.2℃、血圧118/75 mmHg、脈拍数82回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 99%(室内気)。

❹1型糖尿病

著者: 中島央律紗 ,   藤原元嗣 ,   多胡雅毅

ページ範囲:P.554 - P.555

Case
患者:36歳、男性 主訴:倦怠感、腹痛
既往歴・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:1週間ほど前から、倦怠感・腹痛を自覚した。4日前に近医を受診し、「急性胃腸炎」と診断され整腸薬を処方された。その後も症状は改善せず、徐々にぐったりしてきたため、心配した妻が本人を連れて救急外来を受診した。
身体所見:身長168 cm、体重65 kg。傾眠傾向あり。体温36.4℃、血圧120/78 mmHg、脈拍数90回/分、呼吸数20回/分、SpO2 98%(室内気)。

【症例集Ⅳ】高齢者×腹痛

❶大腿ヘルニア

著者: 高江洲怜 ,   仲里信彦

ページ範囲:P.556 - P.557

Case
患者:90歳、女性。ADL良好。
主訴:右鼠径部の腫脹・疼痛
既往歴:高血圧、脂質異常症、糖尿病、右鼠径部ヘルニア(徒手整復歴あり)
現病歴:受診前日夕方頃より右鼠径部の腫脹・疼痛を自覚し、翌日クリニックを受診。「鼠径部ヘルニア」の診断にて徒手整復を試みられたが、還納されないため当院救急外来へ紹介受診となった。
 自発痛は少なく、腹痛はなし。悪心・嘔吐なし。経過中に発熱を認めず。食事摂取は受診当日まで可能で、排便・排尿状況にも特に異常はないとのこと。
身体所見:身長154 cm、体重42.3 kg。意識清明、体温36.8℃、血圧154/67 mmHg、脈拍数100回/分・整、呼吸数20回/分、SpO2 98%(室内気)。

❷腹部大動脈瘤

著者: 外間亮 ,   仲里信彦

ページ範囲:P.558 - P.559

Case
患者:75歳、男性
主訴:腹痛
既往歴・併存症:脳梗塞、眼筋型重症筋無力症、尿管結石、鼠径部ヘルニア
現病歴:夜間にトイレに行こうとした時に腰背部痛があり、その後、午前1時頃に腹痛でうなっているのに妻が気づき、救急要請した。腹痛は間欠的な鋭痛で、疼痛時には同じ体位を保てないほどであり、右腰部痛もあった。
身体所見:血圧75/60 mmHg、脈拍数84回/分、呼吸数43回/分、SpO2 94%(室内気)、体温35.7℃。GCS(Glasgow Coma Scale)E4V4M6で不穏あり。冷汗あり。

❸S状結腸軸捻転症

著者: 近藤和伸 ,   仲里信彦

ページ範囲:P.560 - P.561

Case
患者:88歳、男性 主訴:腹痛、腹部膨満
既往歴:急性出血性胃潰瘍、胃切除術後(Billroth Ⅱ法)、虚血性心疾患、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)術後、冠動脈バイパス術後、腹腔動脈完全閉塞、右腎動脈狭窄症、2型糖尿病、高血圧症、慢性便秘症、左大腿骨転子部骨折術後、Alzheimer型認知症
薬剤歴:ボノプラザン20 mg/日、アスピリン100 mg/日、ビソプロロール1.25 mg/日、酸化マグネシウム0.99 g/日、大建中湯7.5 g/日、クエン酸第一鉄50 mg/日
アレルギー歴:なし
現病歴:受診3日前から腹部膨満が出現し、前日から食思不振があった。当日、同居家族に連れられ杖歩行で救急外来を受診し、看護師による初期トリアージ後、待合室で座っている時に突然腹痛が出現し、苦悶様表情となった。
身体所見:身長154.5 cm、体重50.4 kg(BMI 21.1 kg/m2)。意識清明、血圧150/70 mmHg、脈拍数78回/分・整、呼吸数24回/分、SpO2 100%(室内気)、体温36.6℃。

❹腸間膜動脈閉塞症

著者: 新里盛朗 ,   仲里信彦

ページ範囲:P.562 - P.563

Case
患者:89歳、女性
主訴:腹痛、嘔吐、血便
既往歴:慢性心房細動、高血圧、関節リウマチ、認知症
薬剤歴:ワルファリン1 mg/日、アムロジピン2.5 mg/日、プレドニゾロン5 mg/日
現病歴:受診前日の午前中、入所している施設で食物残渣様の嘔吐があり、腹痛を訴えた。その後、腹痛が徐々に増悪し、18時・23時に粘血便を2回認めた。受診当日の朝も腹痛が改善しないため、救急外来を受診した。
身体所見:体温37.3℃、血圧150/95 mmHg(左右差なし)、脈拍数128回/分・不整、呼吸数30回/分、SpO2 96%(室内気)

❺結節性多発性動脈炎

著者: 橋本頼和 ,   仲里信彦

ページ範囲:P.565 - P.567

Case
患者:73歳、女性
主訴:腹痛
既往歴:変形性関節症、骨粗鬆症
薬剤歴:アセトアミノフェン、デノスマブ
現病歴:6カ月前から9 kgの体重減少あり。入院2日前から突然、腹痛と食物残渣の嘔吐が出現し、食事がとれなくなった。普段内服しているアセトアミノフェンとNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を服用するも、症状は治まらず腹痛が続くため救急外来を受診した。発熱・下血・血便・下痢などの症状はなく、家族に同様の症状の者はいなかった。
身体所見:脈拍数108回/分、血圧128/80 mmHg、体温37.2℃。局在性がはっきりしない腹部全般の強い痛みであった。反跳痛があったが、腸蠕動音は正常で、肝脾腫・腫瘤は触知しなかった。心音は整で雑音はなく、呼吸音は正常、四肢や皮膚にも色調変化や網状皮斑はなかった。
(文献1より一部改変)

【症例集Ⅴ】さまざまなポピュレーション×腹痛

❶—糖尿病患者—ケトアシドーシス

著者: 藤井洋一 ,   原田拓

ページ範囲:P.568 - P.569

Case
患者:50歳、女性。2型糖尿病。
主訴:腹痛、嘔吐
既往歴・併存症:2型糖尿病、慢性腎臓病、高血圧症
薬剤歴:SGLT2阻害薬、メトホルミン、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
アレルギー歴:なし
現病歴:2型糖尿病に対して、2カ月前にSGLT2阻害薬が導入された。受診当日の朝より、心窩部痛と激しい嘔吐が出現し、改善しないため家族が救急要請した。
身体所見:身長173 cm、体重56 kg。GCS(Glasgow Coma Scale) E4V4M6、体温37.4℃、血圧124/67 mmHg、脈拍数122回/分、呼吸数30回/分、SpO2 97%(室内気)。

❷—HIV感染者—アメーバ肝膿瘍

著者: 山本祐資 ,   齋田瑞恵 ,   内藤俊夫

ページ範囲:P.570 - P.571

Case
患者:37歳、男性
主訴:心窩部痛
現病歴:HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症で、抗レトロウイルス療法(antiretroviral therapy:ART)を導入し、当院に定期通院中。受診8日前から心窩部痛、左鎖骨から肩峰の鈍痛を自覚し、7日前に37℃台の微熱を認め、市販薬を内服するが改善を認めなかった。4日前には38℃台まで上昇し、心窩部痛・左肩痛が改善しないため、精査目的で受診した。
生活歴:喫煙・飲酒なし
既往歴:30歳;HIV感染症、アメーバ性腸炎
家族歴:特記事項なし
身体所見:意識清明、体温36.5℃、血圧134/
88 mmHg、脈拍数77回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 99%(自発呼吸、室内気)。眼瞼結膜の蒼白・眼球結膜の黄染なし。表在リンパ節は触知せず、皮疹も認めない。腹部は平坦・軟で、圧痛なし。腸音も異常なし。肝・脾は触知しない。

❸—精神疾患患者—腹腔動脈解離

著者: 仲吉朝基 ,   綿貫聡

ページ範囲:P.572 - P.573

Case
患者:49歳、男性
主訴:左側腹部痛
既往歴・併存症:統合失調症(30歳から近医通院中)、高血圧症
現病歴:受診当日19時頃、仕事帰りの電車内で左側腹部痛を自覚した。初めは違和感程度だったが、10分後に自宅の最寄り駅に着く頃には冷や汗が出るほどになったため(numerical rating scale:NRS 7/10)、駅に駐輪してあった自転車に乗って1kmほど離れた当院救急外来を受診した。嘔気・嘔吐なし。
身体診察:身長168cm、体重80kg。意識清明、体温36.5℃、血圧147/80 mmHg、脈拍数88回/分・整、呼吸数16回/分、SpO2 99%(室内気)。

❹—ホームレス患者—胃潰瘍

著者: 田丸聡子 ,   小坂鎮太郎

ページ範囲:P.575 - P.577

Case
患者:68歳、男性。路上生活者。
主訴:腹痛
既往歴・併存症・薬剤歴・アレルギー歴:特記事項なし
現病歴:1カ月前から心窩部痛があったが、我慢していた。受診当日、道で苦悶様の表情で腹部を押さえて倒れており、通行人により救急要請され救急外来へ搬送となった。
身体所見:身長168 cm、体重57.3 kg。意識清明、呼吸数22回/分、脈拍数126回/分・整、血圧108/75 mmHg、体温36.7℃、SpO2 98%(室内気)。

❺—在宅認知症患者—腸閉塞

著者: 平良宏樹 ,   小坂鎮太郎

ページ範囲:P.578 - P.579

Case
患者:78歳、女性。独居。認知機能障害のため要介護2で、訪問介護と訪問看護、月1回の訪問診療を受けている。ADLは室内自立で、会話はかみ合わないことも多いが可能。
主訴:発熱、意識障害
既往歴:Alzheimer型認知症、糖尿病
現病歴:受診当日の朝9時頃、介護士が訪問すると、やや息が荒く、明らかに調子が悪そうであった。準備した食事も摂取せず、ベッドでぐったりしていた。介護士から相談を受け訪問看護師が見に行くと、体温37.5℃で、SpO2 89%(室内気)と低下していた。看護師が訪問診療先に電話相談し、肺炎の疑いで救急要請となった。
身体所見:身長152 cm、体重42 kg。GCS(Glasgow Coma Scale)E3V4M5、体温38.0℃、血圧132/88 mmHg、脈拍数102回/分・整、呼吸数22回/分、SpO2 90%(室内気)。

❻—在宅認知症患者—下部消化管穿孔

著者: 原田拓

ページ範囲:P.580 - P.581

case
患者:89歳、女性。施設入所中。要介護3、ADLは車椅子程度。
主訴:排便後の腹痛
既往歴・併存症:Alzheimer型認知症、大腿骨頸部骨折術後、慢性腰痛症、慢性便秘症(p. 536)、慢性腎臓病、高血圧症、過活動膀胱
薬剤歴:抗精神病薬、弱オピオイド、瀉下薬、降圧薬、抗コリン薬
現病歴:もともとADL低下および薬剤による慢性的な便秘があり、エロビキシバットやルビプロストンと時折の瀉下薬で対応していた。往診前から数日間排便がなく、腹部膨満も出てきた。連日、睡眠前にセンノシドを内服したが、硬い便が少量出るのみだった。日中にグリセリン浣腸(120 mL)を行ったところ、怒責して中等量の排便は得られたが、その前後に急に下腹部痛を自覚し、普段の浣腸後の疼痛とは様相が違うため往診依頼となった。
身体所見:身長158 cm、体重61 kg。GCS(Glasgow Coma Scale)E4V4M6、体温36.4℃、血圧146/92 mmHg、脈拍数104回/分、呼吸数20回/分、SpO2 97%(室内気)。

Editorial

イルネススクリプトと臨床能力 フリーアクセス

著者: 藤沼康樹

ページ範囲:P.507 - P.507

臨床医は日々患者さんの診療をしているのだが、そうした診療の経験を「積む」ことで、臨床能力は伸びていくと昔から言われている。「経験することで臨床能力が伸びる」という言説は、自明のものとされてきた。とすると、多種多様な疾患をとにかくたくさん診る経験があれば、素晴らしい臨床能力は育つということなのだろうか? 昔から、救急対応を多数経験できるといったことを「売り」にしている研修病院は多い。これまで、「たくさんの症例に曝露させること=よい臨床教育」とされてきたのではないか。しかし、本当にそうなのだろうか?
 「経験することで臨床能力が伸びる」という言説における“経験”とは何か? そもそも“臨床能力”とは何を意味するのか? といったことを考えなければならない。経験が認知的操作を経て変形・加工され、取り出して使える長期記憶として、その臨床医の脳に保存されるメカニズムを知ることが必要だが、このプロセスのキーの1つが「イルネススクリプト(illness script)」である。有り体に言えば、1つの疾患を診ることができるためには、その疾患の診療に必要な知識が「台本(script)」のように構造化されていなければならないということである。この台本の構成要素は、リスク・病態生理・臨床像の特徴であるとされる。これらの内容は、個々の臨床医によって微妙に異なっているだろう。

What's your diagnosis?[245]

いよいよ詰まってきた

著者: 酒見英太

ページ範囲:P.510 - P.514

病歴
患者:72歳、女性
主訴:胸のつかえ感
現病歴:かかりつけ医よりソリフェナシン(過活動膀胱用抗コリン薬)、ビルダグリプチン(直近のHbA1cは6.2%)、バルサルタン+ヒドロクロロチアジド、ロスバスタチンを処方されていた72歳の専業主婦。4カ月前に退職してからずっと家にいる夫が高圧的でストレスが強かったため、3週間前より長女宅に避難している。飲酒・喫煙歴はなく、アレルギーはない。
 約3カ月前から緩徐発症の胸骨下詰まり感(嚥下しづらい感じ)があり、2カ月前にかかりつけ病院で上部消化管内視鏡検査(EGD)を受けたが異常なしと言われ、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、胃粘膜保護薬・消化酵素製剤が追加された。自身は食道癌が心配で、4日前に近くの大病院でPET-CT検査(結果は後日聞く予定)を自費で受けた後より、唾が飲み込みづらいとのことで、3日前に救急車で当院救急外来を受診。血圧が高め以外にバイタルサインは正常で、心電図・胸部X線写真共に正常であったため、無治療で総合内科外来での評価を勧められた。食欲はあるが、嚥下時の不快感が強いため満足に食べられず、58 kgあった体重が4カ月で51 kgまで減少した(身長は145 cm)。便通は変わらず。
症状の詳細:嚥下はむせや咳を誘発せず、胸のつかえは嚥下後何秒か遅れて起こる。「焼けるような」とか「しみるような」ではなく、「締め付けるような」感じで、酸が上がってくる感じはない。食餌と関係のない時間帯にも「石が入っているような」不快感があり、体位とは関係ない。液体でも固形物でも起こり、胸のつかえの起こりやすさに食べ物や飲み物の種類は関係ない。嘔吐はきたさないが、つかえると唾液も飲み込めなくなるので吐き出したくなる。
陰性ROS:悪寒・発熱、頭痛、眼・耳・鼻症状、咽頭痛・嚥下痛、咳・痰、呼吸困難、胸膜性胸痛、背部痛、心窩部痛、季肋部痛、下腹部痛、腹満、便通変化、排尿変化、帯下、関節痛・筋肉痛、皮膚病変、Raynaud症状、筋力低下、感覚障害

【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・37

かの日のサッカー少年へ

著者: 三澤美和

ページ範囲:P.515 - P.515

本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。

ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・2

「死亡診断書」を書く時に最も重要なことは?

著者: 森田沙斗武

ページ範囲:P.586 - P.589

Case
患者:85歳、男性。妻と死別し、息子夫婦と同居。
既往歴:誤嚥性肺炎、軽度の認知症、ラクナ梗塞
病歴:食事介助は必要のないADLであったが、物忘れが多い、辻褄が合わない言動などがあり精査を受けたところ、陳旧性のラクナ梗塞と脳萎縮を指摘された。
 発熱を契機に外来受診し、誤嚥性肺炎と診断。呼吸状態も悪く、緊急入院となった。1週間の絶食および抗菌薬治療にて徐々に改善。解熱し呼吸状態も安定したことから、入院8日目から嚥下食を少量から開始していた。
 入院10日目朝の検温時に、ベッド上で心肺停止しているのを発見。心肺蘇生処置にて蘇生せず、死亡確認となった。ベッドサイドに、院内のコンビニエンスストアで自ら購入したと思われるおにぎりや唐揚げの袋を認め、また救急処置時に多量の米飯や唐揚げを口腔内に認めた。そのため主治医は、死因を「窒息」として死亡診断書を発行した(表1)。
 翌日、役所から「窒息死は外因死であるが、異状死の届出はなされているか?」と問い合わせがあった。院内の医療安全部に確認したところ、念のため警察に届出を提出したほうがよいと言われて実施した。警察から主治医および遺族が事情聴取を受け、警察により事件性なしと判断されたものの、無用な騒動であった。

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・76

家族に起こった呼吸困難の原因は?

著者: 笹原弘道 ,   上若生 ,   相澤直輝 ,   徳田安春

ページ範囲:P.590 - P.594

CASE 患者:57歳、男性。 主訴:呼吸苦、発熱。
現病歴:X年2月より労作時の呼吸困難および咳嗽を自覚し、経過をみていたが改善せず、日常生活動作でも呼吸困難感が出現した。X年4月に近医を受診し低酸素血症(SpO2 78%、室内気)を認めたため、当院救急外来に救急車で搬送となった。
既往歴:治療中の病気なし(医療機関を数年間受診していない)。
家族歴:母親がX-1年11月より呼吸困難、妹がX年3月より呼吸困難。
内服歴:特記事項なし。
アレルギー歴:特記事項なし。
生活歴:過去に喫煙歴あり(20代前半、数本/日)。飲酒は機会飲酒。無職(家事手伝い)。

「総合診療」達人伝|7つのコアコンピテンシーとその向こう側・5

多様な診療の場に対応する能力

著者: 古屋聡 ,   奥知久

ページ範囲:P.606 - P.613

 動かざること山の如し、静かなること林の如し。もう読者も完全に忘れているであろうか。本連載を待ってくださった全国100万人の達人フリークの皆様に、今回5人目の達人(一口メモ1)の姿をお届けしたい。場所は風林火山でお馴染みの甲斐の国、山梨県。「診療の場の多様性」をテーマに、今回は山梨市立牧丘病院(以下、牧丘病院)の古屋聡先生を訪ねた。長年にわたって牧丘町(現山梨市)を中心に地域医療を支えてこられてきたかたわら、被災地支援や食支援、エコーの活用などで全国を飛び回っている古屋達人。「一体どうやって多様な場で力を発揮し、そこにはどんな達人性が潜んでいるのか? われわれはそこから何を学び取れるのか?」についてレポートしたいと思う。それでは達人の臨床現場を訪れてみよう!

臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン・5

自分より優秀な人って、どう教えたらいいですか?

著者: 佐田竜一 ,   木村武司 ,   長野広之

ページ範囲:P.614 - P.617

今月のお悩み
私(医師7年目)が所属する科は、チーム制で運営しています。私はその1つのチームのリーダーをしているのですが、どう考えても自分より優秀な後期研修医がチームに所属する時があります。知識も自分より多く、教えることがありません! 指導していても、「どうせ知っているんだろうなあ…」と思ってしまいます。「自分がリーダーでいいのか?」と落ち込むこともあります…。自分より優秀な人を、どう教えたらよいのでしょうか?
[ペンネーム:天上天下唯我独尊]

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?・38

歩きスマホは頭痛のタネ

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.618 - P.621

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはありませんが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!

臨床医のためのライフハック│限りある時間を有効に使う仕事術・2

—キャリア形成—点と点をつなぎ、強みを倍増する“かけ算”の戦略

著者: 中島啓

ページ範囲:P.623 - P.625

時間がない! 臨床医の仕事は診療だけにあらず、事務、教育、自己学習、研究、学会発表、情報発信、所属組織の運営などなど、尽きることはありません。もちろんプライベートの生活もあり、「時間不足」は臨床医の永遠の課題です。では、一度きりの“医師人生”の限られた時間を、どう有効に使うのか? 筆者が培ってきた「ライフハック(仕事術)」のすべてを、余すところなく開陳します。

投稿 GM Clinical Pictures

原因不明の胃粘膜障害とイレウス

著者: 佐藤沙紀 ,   笹本貴広 ,   柴田昌幸

ページ範囲:P.595 - P.596

CASE
患者:80代、男性。主訴:腹部膨満感、下痢、嘔気、食欲不振。
現病歴:生来健康であったが、4週間ほど前から下痢が出現し、2週間前から腹部膨満感や嘔気、食欲不振も自覚したため前医を受診。胃腸炎と診断され、薬物療法で経過観察となったが、改善しないため当科紹介受診となった。血液検査では特記所見はなく、腹部CTでは小腸・大腸の軽度拡張と液体貯留を認めたが、明らかな閉塞起点は認めなかった(図1)。上部消化管内視鏡検査では大腸に異常所見を認めなかったが、胃内に浮腫状発赤粘膜が拡がっており、びらんや潰瘍が散在していた(図2)。
既往歴:脂質異常症。内服薬:ピタバスタチン。
身体所見:身長166 cm、体重55 kg(1カ月で4 kg減少)。体温36.5 ℃、血圧129/79 mmHg(起立性低血圧などの変動なし)、脈拍数114回/分、SpO2 95%(room air)。巨舌なし。皮膚紫斑なし。腹部はやや膨隆しているが軟で、自発痛や圧痛はなし。
検査所見:WBC 3,700/μL、Hb 12.3 g/dL、Plt 23.8×104/μL、Alb 3.9 g/dL、AST 21 IU/L、ALT 10 IU/L、BUN 10.1 mg/dL、Cr 1.03 mg/dL、CRP 0.19 mg/dL
画像所見:腹部CT所見(図1)、上部消化管内視鏡検査所見(図2)。

#総合診療

#医学書院の新刊 フリーアクセス

ページ範囲:P.600 - P.601

#参加者募集 フリーアクセス

ページ範囲:P.601 - P.601

#参加者募集 フリーアクセス

ページ範囲:P.602 - P.602

#書評:腹痛の「なぜ?」がわかる本—痛みのメカニズムがみえれば診療が変わる! フリーアクセス

著者: 平島修

ページ範囲:P.603 - P.603

 3年前のある勉強会で著者と初めてお会いし、懇親会で「腹痛」の話で盛り上がった。腹痛診療で最も有名な教科書『Cope's Early Diagnosis of the Acute Abdomen』の最新版は22版で(初版1921年)、現在は弟子に引き継がれて出版されているが、初期の版でCope自身が書いたある疾患の所見に対する考察が興味深く、身体診察を深めようとすると自然に古書探しが必要となり、それが楽しいと著者はお話しされていた。医学が大きく進歩したのは1900年前後で、死後の解剖によってしか原因がわからなかった時代から、技術革新により画像診断が可能となり、診断技術は大幅に向上した。今のような検査機器がなかった時代は、病歴・身体所見のみから病態を考え、悩み、決断せざるをえなかった。医師の仕事とは、「考える」ことだったのである。

#書評:—すぐ・よく・わかる—急性腹症のトリセツ フリーアクセス

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.605 - P.605

 Copeをはじめ、あまたある腹痛の書籍における本書の位置づけは何か? 「すぐ・よく・わかる」「急性腹症」のタイトルにあるように、腹痛診療の名著『Cope's Early Diagnosis of Acute Abdomen』を今時に“超訳”された本(「はじめに」より)と言えば、本書の伝えたいメッセージは明確ではないだろうか。Copeは病歴聴取・身体診察の腹痛の標準テキストとして長らく有名であり、評者も学生時代に愛読したが、その輝きは10数年たった今も衰えず、腹痛に関する書籍で何を読むべきか、と聞かれたら推薦3冊のうちに必ず入る本である。研修医教育などのリファレンスは、結局Cope先生の本に戻ることが多い。一方で、Copeが比較的難解であるという欠点(?)は、本書でも指摘されるとおりである。しかし本書は、その欠点を補いつつ、さらに日本の現場感覚を反映した、まさに日本の読者のための“和製Cope”と言えるつくりとなっている。
 本書は実用性が高く、またそのなかに臨床の魂が注入されていると評者は感じる。その理由は、第1〜3章の順に「Why」「What」「How」で記載された明快な章割りで誰が見てもわかりやすく、現場で求められる頁を迅速に開くことができる実用的なつくりであり、さらに腹部触診やCT読影の際に体腔内を直観的に頭の中で映像化・想起しやすい具体的なシェーマが多いこと(こういう本がなかなかない!)である。そして、「How」にあたる第3章では、小項目のタイトルを読むだけでも腹痛のピットフォールが網羅できるような直言的メッセージにあふれ、速読で全体像を俯瞰することができる、実用性を意識したつくりになっている。特に、この第3章は必読である。

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.508 - P.509

読者アンケート

ページ範囲:P.626 - P.626

『総合診療』編集方針 フリーアクセス

ページ範囲:P.627 - P.627

 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。
2018年1月  『総合診療』編集委員会

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.631 - P.632

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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30巻4号(2020年4月発行)

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30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

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特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

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特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

27巻8号(2017年8月発行)

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!

27巻7号(2017年7月発行)

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編

27巻6号(2017年6月発行)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

27巻5号(2017年5月発行)

特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!

27巻4号(2017年4月発行)

特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。

27巻3号(2017年3月発行)

特集 これがホントに必要な薬40—総合診療医の外来自家薬籠

27巻2号(2017年2月発行)

特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

27巻1号(2017年1月発行)

特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

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