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特集 ジェネラリストのための「発達障害(神経発達症)」入門 【各論Ⅰ】発達障害を理解する—Caseに学ぶ典型例と対処法
❸知的発達症(知的能力障害)
著者: 佐々木宏太1 金生由紀子1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部
ページ範囲:P.1051 - P.1055
文献購入ページに移動小児科クリニックにて
患者:5歳、女児
主訴:保育園で他の園児と遊べない。
既往歴:熱性けいれん(4歳時に2回)
生活歴・現病歴:周産期歴に特記事項なし。1歳半健診で有意語が少なかったが、個人差と言われた。運動発達に遅れはなく、3歳時健診時には2語文が出ていた。両親が共働きで、1歳から保育園に通っている。幼児期よりアトピー性皮膚炎があり、4歳時に小児科クリニックを初診し、その後かかりつけとなった。年長になり保育士から「おとなしくていい子だが、1人でいることが多くて心配だから」と受診を勧められ、相談に来た。
受診時は、自分からはあまり話さないが、主治医が質問すると単語で答えることはでき、主治医は「人見知りがやや強い程度」と考えていた。保育園の年長になり、運動会の練習やお遊戯にも参加はできるが、覚えるのに時間がかかり、周囲を見て真似ている様子が目立つ。
対処方法:乳幼児健診での指摘はなかったが、保育園で集団生活に参加できていない可能性、また診察時の様子から言語発達が遅れている可能性があり、背景に軽度〜境界域の知的発達症がある可能性を否定できない。来年度に就学を控えており、まずは就学相談の必要性を判断するため、地域の相談窓口につなげることが重要である。
また、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)や注意欠如多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)といった他の神経発達症の併存が疑われる場合、既往歴や身体的特徴から関連疾患が疑われる場合は、より専門的な検査ができる小児科や精神科に紹介することも考慮される。
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