文献詳細
文献概要
ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・19
腐敗したご遺体と孤独死
著者: 森田沙斗武1
所属機関: 1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
ページ範囲:P.1200 - P.1202
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患者:63歳、男性
既往歴:アルコール性肝障害
病歴:生活保護を受けながら独居生活をしている。半年ほど前に衰弱状態で倒れて救急搬送され、脱水と肝障害を指摘され入院を勧められたが、拒否し帰宅した病歴がある。近隣住民の話では、以前は泥酔した状態で歩いている姿を見かけたが、最近は姿を見かけなかったという。
某日、いつもは生活保護の支払日に家賃が振り込まれるが、それがないため、管理会社が訪問するも応答なし。そこで、督促状を自宅の郵便受けに入れた。その後、1週間経っても連絡がないため再度訪問したところ、郵便物がそのままの状態であったため、安否確認のために警察官立ち会いのもと合鍵で侵入したところ、布団上で高度腐敗したご遺体を発見した。念のため救急要請するも、腐敗のために搬送されなかった。鍵が施錠された状態であり金銭の動きに不審な点もなく、警察は事件性なしと判断し、警察医が検案することとなったが、本来の警察医は夏休み中で、当クリニックが担当することとなった。
ご遺体は全身緑褐色で全体に膨れ上がり、蛆虫が多数付着しており、異臭も強く正視に堪えない状態であった。正義感をもって診察を行ったが、硬直もなく死斑もわからず、死因に検討もつかなかった。現場の警察官に「心臓でしょうか?」と尋ねられ、「こんな状態で死因なんてわかるわけがない」と内心思ったが、何か死因をつけなくてはならないと思い直し、「そうですね、心臓かもしれませんね」と答えた。最終的に「虚血性心疾患」を死因とした死体検案書を発行したが、自分自身の対応がこれでよかったとは思えなかった。
患者:63歳、男性
既往歴:アルコール性肝障害
病歴:生活保護を受けながら独居生活をしている。半年ほど前に衰弱状態で倒れて救急搬送され、脱水と肝障害を指摘され入院を勧められたが、拒否し帰宅した病歴がある。近隣住民の話では、以前は泥酔した状態で歩いている姿を見かけたが、最近は姿を見かけなかったという。
某日、いつもは生活保護の支払日に家賃が振り込まれるが、それがないため、管理会社が訪問するも応答なし。そこで、督促状を自宅の郵便受けに入れた。その後、1週間経っても連絡がないため再度訪問したところ、郵便物がそのままの状態であったため、安否確認のために警察官立ち会いのもと合鍵で侵入したところ、布団上で高度腐敗したご遺体を発見した。念のため救急要請するも、腐敗のために搬送されなかった。鍵が施錠された状態であり金銭の動きに不審な点もなく、警察は事件性なしと判断し、警察医が検案することとなったが、本来の警察医は夏休み中で、当クリニックが担当することとなった。
ご遺体は全身緑褐色で全体に膨れ上がり、蛆虫が多数付着しており、異臭も強く正視に堪えない状態であった。正義感をもって診察を行ったが、硬直もなく死斑もわからず、死因に検討もつかなかった。現場の警察官に「心臓でしょうか?」と尋ねられ、「こんな状態で死因なんてわかるわけがない」と内心思ったが、何か死因をつけなくてはならないと思い直し、「そうですね、心臓かもしれませんね」と答えた。最終的に「虚血性心疾患」を死因とした死体検案書を発行したが、自分自身の対応がこれでよかったとは思えなかった。
参考文献
1)総務省統計局:高齢者の人口. http://www.stat.go.jp/data/topics/topi721.htm
2)東京都保健医療局東京都監察医務院:東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansatsu/kodokushitoukei/index.html
3)総務省統計局:令和2年国勢調査 調査の結果 https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka.html
掲載誌情報