ここに、研修医がひとしきりカルテ記載をした症例がある。しかし診断はついていない。上級医に相談すると、カルテを見て「〇〇病かな…」とつぶやいた。「電子カルテ」のどこを見て、そう判断したのだろう?
上級医は、いぶかしげな研修医を患者のもとへ連れ出すと、病歴と身体所見を丁寧にとり、「〇〇病ですね」と患者さんに説明を始めた。上級医は「ベッドサイド」で何を見つけたのだろう?
その後、上級医と研修医は電子カルテの前に戻ってきた。上級医はつぶやく、「うーん、なんてカルテに書こうかな…」。やや困り顔の上級医だが、どうタイピングするのだろう?
ベッドサイドの患者情報をすべて言語化し、電子カルテに記載することはできない。その間には見えざる「壁」があり、一部の情報が言語として移動すること邪魔している。本特集では、この「壁」をシームレスに行き来している達人医師に筆を振るってもらう。彼らが「電子カルテ」と「ベッドサイド」の間で情報や言葉をどう往来させているのか、その秘技を伝授する。読者は、それを真似して「電子カルテを見たい、書きたい」、さらには「ベッドサイドに行きたい!」、そんな衝動を抑えられなくなるに違いない。
雑誌目次
総合診療34巻11号
2024年11月発行
雑誌目次
特集 電子カルテとベッドサイドの壁を打ち破る!—患者情報の「言語化」への挑戦
扉 フリーアクセス
著者: 増井伸高
ページ範囲:P.1224 - P.1225
今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題
ページ範囲:P.1300 - P.1300
本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。
【よくある症候の外来カルテ】
❶「息切れ」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 石丸直人
ページ範囲:P.1226 - P.1229
Case 74歳の女性のコンサルトをお願いします。「息切れがひどくてしんどい」と外来を受診されて、とりあえずCTも撮ったのですが、よくわからないので困っています(図1)。
❷「失神」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 坂本壮
ページ範囲:P.1231 - P.1235
Case 78歳女性のコンサルトをお願いします。施設で失神し、当院へ救急搬送になりました。どこまで精査するべきか困っています(図1)。
❸「けいれん」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 三浦敏靖
ページ範囲:P.1236 - P.1239
Case 55歳男性のコンサルトをお願いします。
道端で停車中の自動車運転席でけいれんしているところを発見され、搬送されています。今までてんかんとは言われてなかったようです(図1)。
❹「頭痛」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 菊井祥二 , 竹島多賀夫
ページ範囲:P.1240 - P.1243
Case 45歳女性のコンサルトをお願いします。「いつもの頭痛と違って、鎮痛薬の効果が乏しい」と救急外来を受診しています。頭部CT検査で異常はないようですが、方針が決まらなくて困っています(図1)。
❺「しびれ」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 宮本翔平 , 塩尻俊明
ページ範囲:P.1244 - P.1247
Case 55歳男性の脳梗塞を疑う症例についてコンサルトをお願いします。起床時発症の右手のしびれ、麻痺を主訴に来院された患者さんです。tPA療法の適応かもしれないと思っています(図1)。
❻「急性腹症」の電子カルテと診察室の壁
著者: 窪田忠夫
ページ範囲:P.1248 - P.1252
Case 胆石症でコンサルトしたいのですが、よろしいでしょうか。
73歳女性が本日朝(現在時刻AM10:30)からの心窩部痛で来院しました。Murphy徴候陽性で、エコーで胆囊腫大を認めました。発熱はなく、発症から時間が経っていないので胆石症でいいと思いますが、痛みが強いので入院させようかどうか迷っています(図1)。
【苦手な症候のカルテ】
❶「高齢者の体動困難」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 増井伸高
ページ範囲:P.1254 - P.1257
Case 85歳女性のコンサルトをお願いします。「いつもと様子が違って、あまり動けない」と家族が病院まで連れてきたのですが、方針が決まらなくて困っています(図1)。
❷「不明熱」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 國松淳和
ページ範囲:P.1258 - P.1262
Case 76歳女性の不明熱のコンサルトをお願いします。感染症と考えられて入院していた患者さんです。軽い肺炎像は確かにあって、そこがフォーカスかと思われて抗菌薬を投与していたんですが、熱も炎症も下がらないんです(図1)。
❸「MUS(medically unexplained symptoms)」の電子カルテと診察室の壁
著者: 西山順滋
ページ範囲:P.1264 - P.1267
Case 18歳女性で、両上肢の痛みを主訴に近医整形外科からの紹介で来院されました。医療面接、身体診察をしましたが診断・治療方針が決まりませんので相談させてください(図1)。
❹「ポリファーマシー」の電子カルテと診察室の壁
著者: 吉田英人
ページ範囲:P.1268 - P.1272
Case 82歳男性のコンサルトをお願いします。遠方の病院への通院が困難になってきたので、当院でまとめて診療してほしいと来院されています。複数の医療機関から薬が処方されていて、かなり薬が多いようです。どのようにマネジメントすればよいか困っています(図1)。
【慢性疾患の外来カルテ】
❶「高血圧通院患者」の電子カルテと診察室の壁
著者: 志水太郎
ページ範囲:P.1273 - P.1276
Case 高血圧症で通院中の80歳女性のコンサルトをお願いします。「血圧はよくなった」そうですが、家族が言うには「最近だるくて動くのもおっくうそう」ということで、定期受診よりも早く病院まで連れてきたそうです。どうしたものか方針が決まらなくて困っています(図1)。
❷「糖尿病通院患者」の電子カルテと診察室の壁
著者: 佐藤淳子
ページ範囲:P.1277 - P.1281
Case 先生、いつも通院している59歳1型糖尿病の男性が定期外来で来ています。まだ採血結果も出ていないんですが、数日前から体調が悪いらしくて、私が呼ばれました。熱もなく、意識もしっかりしているようです。これまでの電子カルテを見て、この患者さんについてまとめてみました。採血の結果が出るまで、どうしたらよいでしょう(図1)。
❸「不眠症」の電子カルテと診察室の壁
著者: 鈴木正泰
ページ範囲:P.1282 - P.1285
Case 69歳の男性のコンサルトをお願いします。「出してもらった睡眠薬を飲んでもなかなか眠れない」と予約外で受診したのですが、どうしたらよいかわからず困っています(図1)。
【チーム診療中のカルテ】
❶「総合内科チームの入院患者」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 粂田哲平 , 森川暢
ページ範囲:P.1286 - P.1290
Case 認知症のある80歳の高齢女性のコンサルトをお願いします。おそらく誤嚥性肺炎と考えますが、今後の方針について相談させてください(図1)。
❷「訪問診療チームの終末期患者」の電子カルテとベッドサイドの壁
著者: 石上雄一郎
ページ範囲:P.1291 - P.1295
Case 80歳、男性。大腸がんStage 4で在宅医療を受けている患者の相談です。「腹痛と嘔吐があり、救急車を呼ぼうか迷っている」と訪問看護師から相談がありました。バイタルは比較的落ち着いているのですが、在宅で最期まで過ごす予定で先日退院された患者だと聞いているので困ってます(図1)。
【特別編】
❶手術記録
著者: 窪田忠夫
ページ範囲:P.1296 - P.1296
腹部手術と腹痛に関して一番関連があるのは、何と言っても腸閉塞(小腸閉塞)。この点に着目するのがよいだろう。癒着性腸閉塞は何十年前の手術であっても影響するので、手術からの時間経過とは関連がないが、手術既往自体がなければ発症しない。
手術に触れる機会の少ない医師のチェック項目としては、以下を押さえておくとよい。
❷退院サマリー
著者: 國松淳和
ページ範囲:P.1297 - P.1297
筆者が定期的に外来で診ている患者が何らかの理由で入院した時、その入院に関する退院サマリーについて、外来医である筆者がまた外来で診ていくうえで、「こういうサマリーは理想だな」と思う事柄について述べることにする。
❸紹介状
著者: 佐藤健太
ページ範囲:P.1298 - P.1299
ここでは「急性期病院しか知らない研修医目線で書いた独りよがりな紹介状」にダメ出しをする形で、「診療所や施設、療養病院の医師が読んで役に立つ、手紙の書き方のポイント」をお伝えする(図1、2)。
Editorial
電子カルテの視点からベッドサイドを覗き見る フリーアクセス
著者: 増井伸高
ページ範囲:P.1223 - P.1223
YouTubeで尊敬する医師が「私の診察Live!」という動画をアップしていたら、脊髄反射でクリックしてしまいます。しかし、そんなチャンネルはないのが現実世界です。ないものネダリでも、優秀な臨床医の「リアルな診察室のやりとり」や「カルテに何を書いているか」といった生々しい現場を、覗き見たいという衝動に駆られます。
そんな診察室のリアルワールドをなんとか誌面に落とし込めないか? むしろ雑誌だからこそ動画以上に伝わる世界観もあるのではないか? そんな思いで生まれたのが今回の特集企画です。
ゲストライブ〜Improvisation〜・29
臨床研修における至適内科ローテーションを読み解く
著者: 鋪野紀好 , 徳田安春 , 西﨑祐史
ページ範囲:P.1211 - P.1218
NPO法人日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)では、「基本的臨床能力評価試験(General Medicine In-Training Examination:GM-ITE®)」を開発し、GM-ITEを通じてさまざまなエビデンスを発出している。本座談会ではJAMEP理事の徳田先生のご司会のもと、現行の内科ローテーションによる研修医の臨床能力をGM-ITE®を用いて研究されている西﨑先生、鋪野先生と共に、そのエビデンスを基に見えてきた「総合診療研修」の重要性、必要性について語り合っていただいた。
これからの臨床研修は、至適内科ローションはどうあるべきか? 読者とともにその未来像を考えたい。
What's your diagnosis?[263]
アジアの壁の向こう側
著者: 大塚陽平 , 風間亮 , 浜田禅
ページ範囲:P.1301 - P.1306
病歴
患者:54歳、女性
主訴:発熱
現病歴:10年前にBasedow病と診断され、チアマゾールの内服が始まった。9年前から乳がんで現在は再発なく、経過良好であった。
14日前、スキー旅行から帰宅後に、倦怠感、食欲低下を自覚し、翌日には悪寒戦慄が出現した。9日前、腹痛と水様性下痢が出現し、38.5℃の発熱があった。7日前より咽頭痛と嚥下時痛が出現し、近医を受診、セフカペン、アセトアミノフェンを処方された。3日前、右示指・中指の近位指節間(PIP:proximal interphalangeal joint)、右第1趾、左第2〜5趾が腫脹した。発熱が継続し、原因検索目的で当院紹介受診となった。
ROS陽性:発熱、悪寒戦慄、咽頭痛、嚥下時痛、腹痛、下痢、関節痛、発熱の日内変動、ドライアイ
既往歴:9年前 発作性心房細動でカテーテルアブレーションで治癒、9年前 乳がんで乳房切除術、8年前 乳房形成術
薬剤歴:チアマゾール5 mg
アレルギー:なし
嗜好歴:喫煙歴なし、機会飲酒
オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・94
その意識障害はいつから?
著者: 宮島一実 , 新里盛朗 , 徳田安春 , 仲里信彦 , 鈴木智晴 , 佐藤直行
ページ範囲:P.1307 - P.1312
CASE
患者:20歳、女性。
主訴:意識障害。
現病歴:生来健康。歩行中に自動車に後方から追突され、壁に挟まれる形で受傷した。救出までに30分程度を要し、当院へ救急搬送された。搬送時は意識清明、呼吸・循環動態は安定していた。救急室での精査の結果、右大腿骨骨幹部骨折(図1Ⓐ)、右脛骨骨幹部骨折と左脛腓骨開放骨折(図1Ⓑ)の診断で整形外科に入院となった。
入院当日(第1病日)に左脛腓骨開放骨折に対して、デブリードマンと創外固定術を施行された。第2病日に右大腿骨骨幹部および右脛骨骨幹部骨折に対して、骨接合術が施行された。術後の第3病日より意識障害(傾眠や不穏)と酸素化の低下が出現した。第4病日、意識障害が持続しているため原因検索目的に総合内科にコンサルトとなった(表1)。
既往歴:なし。
嗜好歴:飲酒なし、喫煙なし。
内服薬:なし。
生活歴:ADL自立、独居、専門学校生、アレルギーなし。
身体所見(コンサルト時):身長165cm、体重65kg、BMI 23.8kg/m2で標準体型。患者は呼びかけに対して反応がなく、意識レベルはGCS(Glasgow Coma Scale)9(E2V2M5)であった。頭部に腫脹や打撲痕なし。眼球結膜に黄染なし。眼瞼結膜に蒼白や点状出血なし。頸部に項部硬直なし。心音 整、雑音なし。呼吸音 清。腹部 平坦軟、腸蠕動 正常。四肢に関しては、右下肢は骨接合術後でギプス固定中。左下腿は創外固定術後で固定具刺入部に熱感なし。皮膚に点状出血や網状皮斑はなく、blue toeやblue fingerもなし。瞳孔は左右ともに4mm、対光反射は両側で迅速に認めた。上肢に粗大な運動麻痺はなく、下肢運動は術後の創外固定とギプス固定で確認できず。腱反射 亢進・減弱なし。Babinski反射 陰性。
バイタルサイン:血圧112/80mmHg、心拍数116回/分・整、呼吸数22回/分、体温37.7℃、SpO2 99%(経鼻カニューレ、酸素3.0L/分)。
検査所見(コンサルト時):
血算:WBC 12,570/μL(Neut 81.6%、Lym 10.3%、Mono 7.2%、Baso 0.2%、Eos 0.7%)、Hb 8.5g/dL、Ht 25.4%、Plt 13.8×104/μL。
生化学:TP 4.4g/dL、Alb 2.2g/dL、BUN 9mg/dL、Cr 0.33mg/dL、Na 143mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 111mEq/L、Ca 7.2mg/dL、AST 394U/L、ALT 79U/L、ALP 37U/L、LDH 774U/L、γ-GTP 15U/L、T-Bil 0.8mg/dL、CK 12,003U/L、CRP 7.74mg/dL、Glu 92mg/dL、NH3 63μg/dL(基準値12〜66μg/dL)、TSH 0.21mIU/mL(基準値0.61〜4.23 mIU/mL)、FT4 0.33ng/dL(基準値0.70〜1.70ng/dL)。
凝固:APTT 26.9秒、PT-INR 1.25、D-dimer 5.9μg/mL(基準値<0.1μg/mL)。
動脈血液ガス:pH 7.45、PO2 79.4mmHg、PCO2 29.4mmHg、HCO3- 24.6mmol/L、Lac 0.8mmol/L。
尿検査:比重1.032、pH 6.0、糖(-)、蛋白(1+)、潜血(1+)、ケトン体(4+)、WBC(-)、亜硝酸(-)。
頭部CT検査:頭蓋内出血や低吸収域なし。
臨床医のためのライフハック│限りある時間を有効に使う仕事術・20
—組織マネジメント①—人が集まる組織の形成に必要なリーダーの行動指針は?
著者: 中島啓
ページ範囲:P.1313 - P.1317
時間がない! 臨床医の仕事は診療だけにあらず。事務、教育、自己学習、研究、学会発表、情報発信、所属組織の運営などなど、尽きることはありません。もちろんプライベートの生活もあり、「時間不足」は臨床医の永遠の課題です。では、一度きりの“医師人生”の限られた時間を、どう有効に使うのか? 筆者が培ってきた「ライフハック(仕事術)」のすべてを、余すところなく開陳します。
臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン・19
「医学教育エビデンスはどこにあるざんす!?」
著者: 佐田竜一 , 木村武司 , 長野広之
ページ範囲:P.1320 - P.1325
今月のお悩み
「教育について困った時に、皆さんはどうやって解決してますか? 医学教育のエビデンスってどうやって見つけてるのでしょう? 臨床みたいにガイドラインがあればいいのにって思います。」
[ペンネーム:りなんなん(医師10年目)]
【エッセイ】アスクレピオスの杖—想い出の診療録・55
患者背景にこだわる、その原点とは?
著者: 林寛之
ページ範囲:P.1326 - P.1326
本連載は、毎月替わる著者が、これまでの診療で心に残る患者さんとの出会いや、人生を変えた出来事を、エッセイにまとめてお届けします。
対談|医のアートを求めて・11
医療×文学—「本心」は自らではなく、社会がつくるもの?
著者: 平野啓一郎 , 平島修
ページ範囲:P.1327 - P.1335
臨床現場において、患者の社会背景が複雑、あるいは有効な意思決定者が不在など、特殊な個別性に悩む可能性が最も高いのが、総合診療医だと思われる。いわゆる対応困難事例に対して、一見、医学とはかけ離れた内容であっても、患者本人や家族の人生といったその背景にある文脈を理解するという意味で、「文学」が総合診療医に与える影響は大きい。
本対談では、幅広いジャンルで深い人間ドラマや哲学的なテーマの作品を次々と世に送り出す第一線の小説家・平野啓一郎氏をお招きし、この11月に公開される映画の原作『本心』1)の内容を中心に話を伺った。(平島修)
ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・20
事件や事故のご遺体を見落とさない
著者: 森田沙斗武
ページ範囲:P.1336 - P.1338
Case
患者:78歳、女性。3年前に夫と死別した後、52歳の息子と同居している。
既往歴:高血圧、慢性心不全、認知症
病歴:高血圧と慢性心不全のため当院に2カ月ごとの定期通院を続けていた。通院には息子が自家用車を運転して連れてきてくれていたが、息子はいつも診察室に入らず、親身にケアしている印象ではなかった。患者は少しずつ認知症が進んでいるようであり、怠薬が目立ち、身だしなみも乱れてきていた。そのため、息子に介護保険の申請をはじめ、訪問介護・看護の利用を提案したが「まだ自分で面倒を看られます」と拒否された。
通院予定日に「数日前から寝たきりになったので連れて行けない。往診にしてほしい」と息子から連絡があり、同日往診した。患者はなんとか返事はできる意識状態であったが、バイタルを測定すると体温37.8℃、血圧95/60mmHg、脈拍110回/分、SpO2 95%(室内気)であった。肺炎の疑いがあるとして、入院での精査加療を勧めるも、息子は経済的な理由で拒否。そのため抗菌薬の点滴を行い、しばらく訪問看護師が点滴をなどの処置をする予定とした。
翌日看護師が点滴に行ったところ、患者の意識レベルはさらに低下しており、血圧83/50mmHg、脈拍数130回/分とショックバイタルであったため、救急要請を息子に勧めたが「認知症もひどく、もし助かったとしても今後面倒を看られない。このまま自宅で看取りたい」と言われた。そのため息子の意向を尊重し、自宅で看取る方針となった。翌朝、息子から「息をしていない」と連絡を受け往診し、死亡確認を行った。死亡診断書に「Ⅰア細菌性肺炎、Ⅱ慢性心不全」と記載し発行した。
それから1年後、警察から連絡があり、息子を特殊詐欺事件で逮捕し、余罪を調査していたところ母親の死亡時に多額の保険金が支払われていたことが判明したという。「母親の死について不審な点はなかったか」と聞かれ、「息子のケアに違和感を覚えたことはあったが、特別不審とは思わなかった」と答えたが、真実はどうであったか心残りであった。
#総合診療
#今月の特集関連本❶ フリーアクセス
ページ範囲:P.1235 - P.1235
#今月の特集関連本❷ フリーアクセス
ページ範囲:P.1263 - P.1263
#今月の特集関連本❸ フリーアクセス
ページ範囲:P.1276 - P.1276
#今月の連載関連本❶ フリーアクセス
ページ範囲:P.1317 - P.1317
#今月の連載関連本❷ フリーアクセス
ページ範囲:P.1325 - P.1325
#医学書院の新刊 フリーアクセス
ページ範囲:P.1339 - P.1340
#参加者募集 フリーアクセス
ページ範囲:P.1263 - P.1263
#書評:「卓越したジェネラリスト診療」入門—複雑困難な時代を生き抜く臨床医のメソッド フリーアクセス
著者: 太田充胤
ページ範囲:P.1318 - P.1319
私のように病院から診療所に拠点を移したばかりの医師にとって、本書はかゆいところに手が届く本であり、それ以上に、なんというか元気が出る本でもあった。
臓器別の専門家として訓練を受けてきた医師は、プライマリ・ケアに転向する時に必ず、ある種の「無力感」や「カルチャーショック」に直面する。プライマリ・ケアの仕事は、宿命的に“治療した感”(本書p.101)に乏しいからだ。
--------------------
目次 フリーアクセス
ページ範囲:P.1220 - P.1221
読者アンケート
ページ範囲:P.1341 - P.1341
『総合診療』バックナンバーのご案内 フリーアクセス
ページ範囲:P.1342 - P.1343
お得な年間購読のご案内 フリーアクセス
ページ範囲:P.1343 - P.1344
次号予告 フリーアクセス
ページ範囲:P.1345 - P.1346
基本情報

バックナンバー
34巻12号(2024年12月発行)
特集 妊婦・褥婦が外来に来たらUpdate—症状対応からワクチン・プラネタリーヘルスまで
34巻11号(2024年11月発行)
特集 電子カルテとベッドサイドの壁を打ち破る!—患者情報の「言語化」への挑戦
34巻10号(2024年10月発行)
特集 化かしが得意なカメレオンな疾患を捕まえろ!—よくある騙され方のゲシュタルト
34巻9号(2024年9月発行)
特集 今伝えたいクリニカル・パール—つくり方、使い方、活かし方
34巻8号(2024年8月発行)
特集 ストーン・ウォーズ 果てしなき“石”と医師との闘い
34巻7号(2024年7月発行)
特集 どうする!? 健診異常—これってホントに異常なの? どう説明する?
34巻6号(2024年6月発行)
特集 医師のウェルビーイング
34巻5号(2024年5月発行)
特集 —優柔不断にサヨウナラ!—あなたの「臨床判断」を高めるケーススタディ11選
34巻4号(2024年4月発行)
特集 困ったときの漢方—この症状に役立ちます!
34巻3号(2024年3月発行)
特集 —え、ウソ!実は◯◯だった!?—“コモンディジーズ”の診断ピットフォール
34巻2号(2024年2月発行)
特集 日常診療で出合う筋骨格疾患—脳神経内科と整形外科からのアプローチ
34巻1号(2024年1月発行)
特集 —“体験型”臨床クイズで習得する!—フィジカル診断エクセレンス
33巻12号(2023年12月発行)
特集 海の外へ渡る航行者を診る—アウトバウンドにまつわるetc.
33巻11号(2023年11月発行)
特集 —続・総合診療外来に“実装”したい—最新エビデンスMy Best 3
33巻10号(2023年10月発行)
特集 ○×クイズ110問!日常診療アップグレード—Choosing WiselyとHigh Value Careを学ぼう
33巻9号(2023年9月発行)
特集 ジェネラリストのための「発達障害(神経発達症)」入門
33巻8号(2023年8月発行)
特集 都市のプライマリ・ケア—「見えにくい」を「見えやすく」
33巻7号(2023年7月発行)
特集 “消去法”で考え直す「抗菌薬選択」のセオリー—広域に考え、狭域に始める
33巻6号(2023年6月発行)
特集 知っておくべき!モノクロな薬たち(注:モノクローナル抗体の話ですよ〜)
33巻5号(2023年5月発行)
特集 —疾患別“イルネススクリプト”で学ぶ—「腹痛診療」を磨き上げる22症例
33巻4号(2023年4月発行)
特集 救急対応ドリル—外来から在宅までの60問!
33巻3号(2023年3月発行)
特集 —自信がもてるようになる!—エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全—新薬からトピックスまで
33巻2号(2023年2月発行)
特集 しびれQ&A—ビビッとシビれるクリニカルパール付き!
33巻1号(2023年1月発行)
特集 COVID-19パンデミック 振り返りと将来への備え
32巻12号(2022年12月発行)
特集 レクチャーの達人—とっておきの生ライブ付き!
32巻11号(2022年11月発行)
特集 不定愁訴にしない“MUS”診療—病態からマネジメントまで
32巻10号(2022年10月発行)
特集 日常診療に潜む「処方カスケード」—その症状、薬のせいではないですか?
32巻9号(2022年9月発行)
特集 総合診療・地域医療スキルアップドリル—こっそり学べる“特講ビデオ”つき!
32巻8号(2022年8月発行)
特集 こんなところも!“ちょいあて”エコー—POCUSお役立ちTips!
32巻7号(2022年7月発行)
特集 —どうせやせない!? やせなきゃいけない??苦手克服!—「肥満」との向き合い方講座
32巻6号(2022年6月発行)
特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス—My Best 3
32巻5号(2022年5月発行)
特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況
32巻4号(2022年4月発行)
特集 えっ、これも!? 知っておきたい! 意外なアレルギー疾患
32巻3号(2022年3月発行)
特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル—君は生き延びることができるか?
32巻2号(2022年2月発行)
特集 —withコロナ—かぜ診療の心得アップデート
32巻1号(2022年1月発行)
特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学
31巻12号(2021年12月発行)
特集 “血が出た!”ときのリアル・アプローチ—そんな判断しちゃダメよ!
31巻11号(2021年11月発行)
特集 Q&Aで深める「むくみ診断」—正攻法も!一発診断も!外来も!病棟も!
31巻10号(2021年10月発行)
特集 医師の働き方改革—システムとマインドセットを変えよう!
31巻9号(2021年9月発行)
特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?
31巻8号(2021年8月発行)
特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。
31巻7号(2021年7月発行)
特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー
31巻6号(2021年6月発行)
特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見
31巻5号(2021年5月発行)
特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで
31巻4号(2021年4月発行)
特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!
31巻3号(2021年3月発行)
特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。
31巻2号(2021年2月発行)
特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで
31巻1号(2021年1月発行)
特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来
30巻12号(2020年12月発行)
特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2
30巻11号(2020年11月発行)
特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考
30巻10号(2020年10月発行)
特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ
30巻9号(2020年9月発行)
特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】
30巻8号(2020年8月発行)
特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集
30巻7号(2020年7月発行)
特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック
30巻6号(2020年6月発行)
特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!
30巻5号(2020年5月発行)
特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文
30巻4号(2020年4月発行)
特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!
30巻3号(2020年3月発行)
特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール
30巻2号(2020年2月発行)
特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】
30巻1号(2020年1月発行)
特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか
29巻12号(2019年12月発行)
特集 困っている“あなた”に届く 認知症診療
29巻11号(2019年11月発行)
特集 臨床写真図鑑 レアな疾患編—見逃したくない疾患のコモンな所見
29巻10号(2019年10月発行)
特集 教えて!医師のためのビジネス・スキル
29巻9号(2019年9月発行)
特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き)
29巻8号(2019年8月発行)
特集 —ノーモア見逃し—日常の検査と画像に潜むピットフォール
29巻7号(2019年7月発行)
特集 リウマチ・膠原病ミミック症例帖—“膠原病っぽくみえてしまう疾患たち”にだまされない!
29巻6号(2019年6月発行)
特集 皮膚科診療エクササイズ—1枚の写真から
29巻5号(2019年5月発行)
特集 一般外来で診断できたら「えっへん!」な疾患38
29巻4号(2019年4月発行)
特集 “ナゾ”の痛み診療ストラテジー|OPQRSTで読み解く
29巻3号(2019年3月発行)
特集 —あなたのギモンに答えます!—循環器診療のハードルを下げるQ&A31
29巻2号(2019年2月発行)
特集 意外な中毒、思わぬ依存、知っておきたい副作用—一般外来で!OTCも処方薬も!
29巻1号(2019年1月発行)
特集 教えて検索!—膨大な医学情報を吟味・整理するスキル
28巻12号(2018年12月発行)
特集 こんなときこそ漢方を!
28巻11号(2018年11月発行)
特集 日本一マジメな「おしっこドリル」—今これだけは押さえておきたい腎・泌尿器のモンダイ
28巻10号(2018年10月発行)
特集 クリニカル・パールPremium!—憧れのカリスマ医師はかく語りき
28巻9号(2018年9月発行)
特集 オンコ・ジェネラリスト—「がん」に強い総合診療医をめざして
28巻8号(2018年8月発行)
特集 80歳からの診療スタンダードUp to Date—Silver Standard
28巻7号(2018年7月発行)
特集 この薬だけは押さえておきたい! 総合診療医のためのSpecialist Drug 40
28巻6号(2018年6月発行)
特集 聴診・触診×エコーで診断推論!—Point-of-Care超音波(POCUS)の底力
28巻5号(2018年5月発行)
特集 “一発診断”トレーニング問題集—懸賞論文「GM Clinical Pictures」大賞発表!
28巻4号(2018年4月発行)
特集 感染症外来診療「賢医の選択」—検査・経口薬・ワクチンをどう使えばいいんですか?
28巻3号(2018年3月発行)
特集 糖尿病のリアル—現場の「困った!」にとことん答えます。
28巻2号(2018年2月発行)
特集 頭痛患者で頭が痛いんです!
28巻1号(2018年1月発行)
特集 シン・フィジカル改革宣言!—私の“神技”伝授します。
27巻12号(2017年12月発行)
特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After
27巻11号(2017年11月発行)
特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health
27巻10号(2017年10月発行)
特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付
27巻9号(2017年9月発行)
特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい
27巻8号(2017年8月発行)
特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!
27巻7号(2017年7月発行)
特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編
27巻6号(2017年6月発行)
特集 「地域を診る医者」最強の養成法!
27巻5号(2017年5月発行)
特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!
27巻4号(2017年4月発行)
特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。
27巻3号(2017年3月発行)
特集 これがホントに必要な薬40—総合診療医の外来自家薬籠
27巻2号(2017年2月発行)
特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!
27巻1号(2017年1月発行)
特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」
26巻12号(2016年12月発行)
特集 これでパッチリ! 眼の健康問題
26巻11号(2016年11月発行)
特集 続・しびれるんです!
26巻10号(2016年10月発行)
特集 内科診療を劇的に変える“まとめ”の達人
26巻9号(2016年9月発行)
特集 症状・症候別 エコーを使った診断推論─Point-of-Care超音波
26巻8号(2016年8月発行)
特集 The 初診外来
26巻7号(2016年7月発行)
特集 感染症ケアバンドル・チェックリスト
26巻6号(2016年6月発行)
特集 “賢い処方”と“ナゾ処方”
26巻5号(2016年5月発行)
特集 しびれるんです!─知っておくべきシビレル疾患
26巻4号(2016年4月発行)
特集 ケースとクイズで総ざらい! 街場の2型糖尿病治療
26巻3号(2016年3月発行)
特集 こんな時は漢方でしょう!
26巻2号(2016年2月発行)
特集 フィジカル改革宣言! ──診断からフォローアップまで
26巻1号(2016年1月発行)
特集 妊婦・褥婦が一般外来に来たら─エマージェンシー&コモンプロブレム
25巻12号(2015年12月発行)
特集 外来で「複数の疾患」をもつ患者を診る─マルチモビディティの時代のプライマリ・ケア
25巻11号(2015年11月発行)
特集 レアだけど重要な「痛み」の原因─システム1診断学
25巻10号(2015年10月発行)
特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 2
25巻9号(2015年9月発行)
特集 診断ピットフォール10選─こんな疾患,見逃していませんか?
25巻8号(2015年8月発行)
特集 健診データで困ったら─こんな検査結果を持ってこられたら
25巻7号(2015年7月発行)
特集 ここを知りたい!頭部外傷初期対応・慢性期ケア
25巻6号(2015年6月発行)
特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時
25巻5号(2015年5月発行)
特集 咳を聴きとり,咳を止める
25巻4号(2015年4月発行)
特集 関節が痛いんです!─コモンからレアものまでの診断と治療
25巻3号(2015年3月発行)
特集 神経難病ケアのコペルニクス的転回
25巻2号(2015年2月発行)
特集 総合医のためのスポーツ医学ベーシックス
25巻1号(2015年1月発行)
特集 動悸・息切れ─ヤバい病気の見つけ方 そして見つからなかった時の対処法