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文献詳細

雑誌文献

総合診療34巻3号

2024年03月発行

投稿 GM Clinical Pictures

わからなければ我々が呼吸困難になる

著者: 若林崇雄1 古川直幸1 石橋幹之介1 秋山由樹1 須藤大智1 渡邉智之1 スフィ・ノルハニ1

所属機関: 1JCHO札幌北辰病院 総合診療科

ページ範囲:P.331 - P.332

文献概要

CASE
患者:リウマチ性多発筋痛症の既往のある90代女性。3カ月持続する水疱精査目的に紹介受診。
現病歴:来院3カ月前より右鼠径部・右上腕に水疱が出現、かかりつけの内科から近医皮膚科に紹介された。類天疱瘡を疑われて抗デスモグレイン抗体、抗BP180抗体を調べたが、いずれも陰性。血液検査は微弱なCRP上昇を示したため、リウマチ性多発筋痛症の再燃が疑われプレドニゾロン(PSL)15mgが開始されたが、皮膚所見の改善は認められず、むしろ増悪傾向であったため、精査目的に当科に紹介された。既往歴:リウマチ性多発筋痛症、左大腿骨頸部骨折。
内服薬:カルベジロール、アムロジピン、トリクロルメチアジド、ラベプラゾール、PSL(5mg)、モンテルカスト。ADL:もともと独居で生活周辺動作はほぼ自立していた。飲酒歴・喫煙歴:共になし。
受診時のバイタルサイン:意識清明、血圧142/99mmHg、脈拍数78回/分・整、体温35.9℃(腋窩温)、呼吸数18回/分、酸素飽和度98%(室内気)。General appearance:not so good。
身体所見:両下肢に浮腫を認める。両足背に直径約6cmの破綻した表皮下水疱、右上肢に3cm程度の水疱と自然吸収を認める(図1)。
入院時血液検査:eGFR 36.5mL/分/1.73m2、CRP 2.73mg/dL、NT-proBNP 319.8pg/mL、D-dimer 3.22ug/mL、抗BP180抗体・抗Dsg1抗体・抗Dsg3抗体いずれも陰性。
経過:入院後、下肢静脈エコーや造影computed tomography(CT)検査、心臓超音波検査に特記すべき異常を認めなかった。入院当日は目立たなかったが、第3病日より呼気延長し、呼吸回数が23回/分程度に増多した。また肺野所見なく、咽喉頭領域にstridorを聴取、酸素飽和度の低下はなかったが、呼吸困難感を訴えた。このためわれわれは喉頭領域の気管支狭窄を考慮して、耳鼻咽喉科にコンサルトした。その際の喉頭ファイバースコープ所見を示す(図2)。

参考文献

1)氏家英之:水疱性類天疱瘡と粘膜類天疱瘡.MB Derma 292 : 29-37, 2020.
2)Whiteside OJH, et al : Mucous membrane pemphigoid ; nasal and laryngeal manifestations. J Laryngol Otol 117(11) : 885-888, 2003. PMID 14670151
3)齋藤康一郎:音声障害・構音障害と全身疾患.日耳鼻125(12) : 1729-1733, 2022.
4)山上淳:天疱瘡・類天疱瘡を起こす自己抗体.モダンメディア65(5) : 108-112, 2019.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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