オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・89
その検査値、信じて大丈夫?
著者:
村井志帆
,
平良翔吾
,
徳田安春
,
仲里信彦
,
鈴木智晴
,
佐藤直行
ページ範囲:P.717 - P.721
CASE
患者:80歳、女性。
主訴:なし(貧血)。
現病歴:約30年前に貧血による入院歴があったが、詳細は不明。約10年前にはビタミンB12欠乏性貧血で入院し、ビタミンB12の補充で貧血は改善した。その後2年間はビタミンB12 1,000μg筋注を月1回の頻度で継続していたが、この数年間の近医でのビタミンB12補充歴は不明である。受診1年前から貧血を認め、緩徐に進行してきたため、近医より精査目的に当内科外来を紹介受診。両下腿の浮腫を認めていたが、以前から慢性的にあるもので、特に増悪はない。舌の痛みやふらつきなどを含め、自覚症状はなかった。
ROS:ふらつき(-)、めまい(-)、食思不振(-)、偏食(-)、便秘(-)、下痢(-)、血便(-)、黒色便(-)、両側下腿浮腫(+)。
既往歴:ビタミンB12欠乏性貧血、萎縮性胃炎、蜂窩織炎に伴う二次性膜性腎症(受診4年前に診断、半年前から通院自己中断)、うっ滞性皮膚炎、下肢蜂窩織炎、高血圧、両変形性膝関節症。
嗜好歴:喫煙歴や飲酒習慣はない。
内服歴:アムロジピン5 mg 1日1回 朝食後、芍薬甘草湯2.5 g 1日1回 就寝前。
生活歴:自宅で夫と次男と3人暮らし。移動は杖歩行で、難聴はあるが意思の疎通は問題なくとれる。
来院時身体所見:意識清明。身長148.4 cm、体重75.7 kg。BMI 34.4 kg/m2。
眼瞼結膜蒼白なし。舌の発赤や舌乳頭の萎縮なし。頸部リンパ節の腫脹なし。甲状腺の腫大なし。心雑音なし、肺音清。腹部は平坦 軟で、圧痛はない。両側下腿に浮腫を認める。歩行時に明らかな体幹失調は認めなかったが、Romberg徴候は未確認である。四肢の知覚異常や振動覚の消失は認めない。
バイタルサイン:体温36.3℃、脈拍数98 bpm/分・整、血圧123/65 mmHg。
血液検査所見:
全血球計算所見:WBC 5,900/μL(Seg 66%:好中球の過分葉を認める、Lym 19%、Mono 7.0%、Eos 2.0%、Baso 1.0%)、RBC 196×104/μL、Hb 9.1 g/dL、Ht 25.8%、MCV 131.6 fL、MCH 46.4 pg、MCHC 35.3 g/dL、Plt 21.2×104/μL、Ret 2.80%。
凝固検査所見:PT 97.1%、PT-INR 1.0、APTT 33.5秒。
血液生化学所見:TP 6.9 g/dL、Alb 4.0 g/dL、AST 36 U/L、ALT 29 U/L、LDH 591 U/L、γ-GTP 19 U/L、ALP 69 U/L、T-Bil 0.8 mg/dL、D-Bil 0.3 mg/dL、BUN 20 mg/dL、Cr 0.81 mg/dL、Na 143 mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl 107 mEq/L、Ca 9.0 mg/dL、IP 3.4 mg/dL、Glu 112 mg/dL、Fe 118 μg/dL(基準値40〜188)、TIBC 301μg/dL(基準値246〜410)、UIBC 183μg/dL(基準値180〜270)、TSAT 39%、Ferritin 68.7 ng/mL、TSH 3.20μU/mL(基準値0.61〜4.23)、FT3 2.56 pg/mL(基準値1.88〜3.18)、FT4 0.99 ng/dL(基準値0.70〜1.48)。
免疫血清学所見:CRP 0.85 mg/dL。
尿検査所見:pH5.5、比重1.018、尿蛋白(+/-)、糖(-)、ウロビリノーゲン(+)、ケトン体(-)、潜血反応(+/-)、亜硝酸塩(+)、白血球(3+)、混濁(1+)、赤血球1未満/HPF、白血球5〜9/HPF、細菌(3+)。