オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・90
腸のクスリも超リスク?
著者:
中島洋平
,
杉田周一
,
本永英治
,
徳田安春
,
仲里信彦
,
鈴木智晴
,
佐藤直行
ページ範囲:P.840 - P.844
CASE
患者:89歳、女性。救急車にて来院。
主訴:腹痛、嘔吐。
現病歴:入院2カ月前から、頻回のふらつきと転倒があり、訪問リハビリが中止となることが増えた。排便は7〜10日に1度硬便がみられる、慢性的な便秘であった。
入院3日前の訪問リハビリ中に血圧低下がみられ、入院2日前の昼食後から腹痛を訴え、嘔気・嘔吐、食欲不振も伴っていた。入院当日まで嘔吐が続き、いつもより反応が鈍いと感じた家族が、救急車を要請して来院された。今回の受診前に抗菌薬の曝露はなかった。
既往歴:慢性便秘症、慢性腎不全(CKD G3b)、逆流性食道炎、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞。
内服歴:酸化マグネシウム500 mg 2錠1日2回、ランソプラゾール15 mg 1日1回、カルベジロール2.5 mg 2錠1日2回、アスピリン100 mg 1日1回, リバーロキサバン10 mg 1日1回。
生活歴:喫煙・飲酒:なし、次女と同居、ADL杖歩行、訪問看護1回/週。
来院時バイタルサイン(矢印以下は診察中の変化):体温36.7℃、血圧90/63 mmHg(→60/40 mmHg)、脈拍数60回/分(→80回/分)、呼吸数20回/分(→30回/分)、SpO2 95%(room air)、意識レベルGlasgow Coma Scale 12(E4V3M5)。
身体所見:
全身状態:不穏様、見当識障害あり。
胸部:肺音 清、肺雑音聴取されず。
腹部:膨満・軟、腸蠕動音亢進、全体に圧痛あり、反跳痛なし。
※救急外来での診察中に大量の緑黄色の水様性下痢あり。
検査所見:
血液:WBC 4.1×103/μL、RBC 3.99×104/μL、Hb 13.1 g/dL、Ht 39.5%、Plt 21.1×104/μL。
生化学:TP 6.2 g/dL、Alb 3.2 g/dL、T-bil 1.0 mg/dL、AST 33 U/L、ALT 19 U/L、ALP 180 U/L、LDH 369 U/L、γ-GTP 14 U/L、CPK 119 U/L、Glu 147 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 99 mEq/L、BUN 24.4 mg/dL、Cr 0.99 mg/dL、eGFR 39.97 mL/分/1.73 m2、Ca 9.3 mg/dL、Mg 6.4 mg/dL、P 3.9 mg/dL、CRP 1.2 mg/dL。
血液ガス(静脈血):pH 7.386、PaCO2 47.5 Torr、cHCO3- 27.8 mEq/L、cLac 2.1 mmol/L。
尿沈渣:細菌(4+)、白血球(-)。
心電図:心拍数60回/分、左脚ブロック。
便性状・グラム染色:緑色水様便、グラム陽性球菌多数(4+)。
血液培養2セット:陰性。
腹部造影CT:図1。