総合診療34巻8号

2024年08月発行

特集 ストーン・ウォーズ 果てしなき“石”と医師との闘い 【疾患別各論〜レアな疾患群】

❹ラプンツェル症候群（毛髪胃石症）

著者： 多賀谷貴史¹

所属機関： ¹国立成育医療研究センター 救急診療部

ページ範囲：P.908 - P.908

CASE
患者：11歳、女児。
既往歴：小学校4年生から不登校、抜毛癖あり。
現病歴：受診10日前から下腹部痛と嘔吐を認めていたが、近医で過敏性腸症候群として、経過観察されていた。下腹部痛、嘔吐の悪化があり、救急外来を受診した。腹部は平坦で膨隆はなかったが、上腹部に圧痛があり、腫瘤を触知した。腹部X線写真で、胃内に空気で縁取られる腫瘤像を認めた（図1）^1）。腹部CT検査でも、胃内にガスを含む網目状の腫瘤を認め、毛髪胃石症が疑われた。入院のうえ、翌日待機的に開腹摘出術が行われ、巨大な毛髪胃石が摘出された（図2）^2）。

参考文献

1）Ronald LE, et al：Miscellaneous Abnormalities of the Stomach and Duodenum. In Gore RM, Levine MS（eds） : Textbook of Gastrointestinal Radiology（3rd ed）, VOLUME 1. pp679-706. Elsevier, Amsterdam, 2008.

2）Mezoff EA, et al : Bezoars. In Wyllie R, et al（ed） : Pediatric Gastrointestinal & Liver Disease, 6th ed. p304, Elsevier, Amsterdam, 2021.

3）山田浩之，他：抜毛・食毛癖を認めた小学生胃石2女児例．日小児会誌 116（7）：1089-1093, 2012.〈症例報告に加え、本邦で報告された小児毛髪胃石症の治療に関してまとめている〉

4）池田桂子，他：急性腹症として発症した毛髪胃石症の1女児例．日救急医会誌 26（11）：681-685, 2015.〈毛髪胃石症の診断にあたって、精神科的病歴を聴取することの重要性が述べられている〉

5）Gorter RR, et al : Management of trichobezoar ; case report and literature review. Pediatr Surg Int 26（5） : 457-463, 2010.〈症例報告に加え、毛髪胃石症の治療方法やその成功率に関して、文献的に検討している〉https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20213124

6）Kirpinar I, et al : Recurrent trichobezoar due to trichophagia ; a case report. Gen Hosp Psychiatry 35（4） : 439-441, 2013.〈毛髪胃石症の再発例を報告し、心理カウンセリングの必要性を述べている〉