icon fsr

文献詳細

雑誌文献

総合診療34巻9号

2024年09月発行

文献概要

#総合診療

#書評:「卓越したジェネラリスト診療」入門—複雑困難な時代を生き抜く臨床医のメソッド

著者: 酒井郁子1

所属機関: 1千葉大大学院・高度実践看護学/専門職連携教育研究センター

ページ範囲:P.1033 - P.1033

文献購入ページに移動
 本書は,家庭医としての藤沼康樹氏(医療福祉生協連家庭医療学開発センター長)が,これまでの自身のジェネラリストとしての実践知を,多様な領域の大理論や概念モデルと照らし合わせ解説し,今後の発展の方向性を論述したものである。
 第Ⅰ章「プライマリ・ケア外来の一般要件」は,家庭医としての実践を始めたばかりの方へのパール集となっており,独り立ちする際に「ここは気をつけよう」と先輩としてアドバイスするような内容となっている。第Ⅱ章「卓越したジェネラリスト診療の実践」では,既存の大理論や概念モデルについて基礎知識の整理を行い,かつ“医師らしく”考えるその方法は「診断推論」だけではなく,患者を理解していくにはいろいろな見方があるということを,豊富な事例を基に解説している。特にこの章の4〜8節は,看護学領域でのパトリシア・ベナーの著書『From Novice to Expert』をほうふつとさせる内容でエキスパートになっていく(卓越していく)ときのものの見方・考え方が具体的に論述されている。第Ⅲ章「卓越性を支える『チーム』と『教育』」では,多職種連携教育の3つのメリット「チームスキルの獲得」「共同学習の方法の獲得」「省察と経験学習の方法の獲得」のうち共同学習・省察・経験学習について考察している。専門職連携教育は,チームビルディングなどのチームスキルの獲得のみに焦点が当てられがちだが,実は,チームを俯瞰し,どんなチームであってもその職種の役割を果たし,かつ他の職種の役割発揮を支援する「共同学習」「省察」「経験学習」のスキルが必要である。家庭医として,というか,臨床家として,全ての職種が長く活動するために必須のコンピテンシーであると思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?